第20話 エレベーターの着いた先

 光輝:「7年間、いろいろあったね。ボランティアもたくさんやったし。ふふっ、

  チョコレート事件なんてのもあったよねー。」

  光輝はそう言って、碧央の顔を見た。

碧央:「そんなのあったっけ?」

  碧央はそう言って、そっぽを向いた。

光輝:「あー、とぼけてるぅ。たかがチョコレートの事で真面目に喧嘩してさー。」

碧央:「たかがって言うな。チョコレートの問題じゃないから。」

光輝:「やっぱり覚えてるんじゃん、ばっちり。」

瑠偉:「あの事件のお陰で、たかがチョコレートの問題で済んだんだよ。その後、メ

  ンバーの間で裏切りとか一切なかったんだから。」

涼:「怪我とか、病気とか、あれこれあったけど、無事乗り越えてきたなあ。」

篤:「これからも乗り越えて行けるっしょ。」

流星:「そうだよな。」

大樹:「まずは、今のこの状況を乗り越えないとね。」

  そう、今まさにピンチである。狭いところに閉じ込められ、延々とどこかへ運ば

  れているのである。

光輝:「なんか、暑くない?」

  秋なのに、蒸し暑くなってきた。

流星:「つまり、南に移動しているって事かな?」

  また、ガタンとものすごい衝撃があり、どこかに下ろされたようだった。そし

  て、ヘリの音も消えた。7人は立ち上がって身構えた。これから、何が起こる?


   エレベーターの扉が開いた。今や、エレベーターでも何でもなく、ただの箱だ

  ったのだが。すると、そこには軍服を着た兵士たちが何人も立っていた。

司令官:「ようこそ、諸君。Save The Earthとかいう、にっくき悪ガキどもよ。お前

  たちは人質である。大人しく言う事を聞かないと、即座に射殺する。分かったか

  な?」

  先頭に立っている軍人が、そう言って舐めるようにメンバーを見渡した。この人

  物が日本政府に声明を送った「Grate America」の司令官である。

流星:「人質?どういうことだ?」

  ちなみに、Grate Amerika略してGAのメンバーとSTEとの会話は、全て英語であ

  る。

司令官:「まずは、お前たちの部屋へ案内する。ついて来い。」

  ライフルを構えた軍人数人に促され、7人は歩き出した。入っていた箱は建物の

  汎用口のようなところに到着していた。軍事施設のような建物だ。飾り気のな

  い、コンクリートの平屋建て。窓もほとんどないような要塞だった。

軍人:「ここに入れ。」

  7人がたどり着いた先は、鉄格子の檻だった。檻の中に入らされ、軍人たちは鍵

  をかけた。

流星:「人質とは、どういう意味だ?お前たちはどんな要求をしている?」

  流星が司令官に話しかけた。

司令官:「我々は、アメリカ第一主義の義勇軍だ。日本政府に要求したのは、地球温

  暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの脱退、次に開かれる「気候変動枠

  組み条約」の締結国会議を欠席すること。そして、「核禁止条約」に未来永劫批

  准しないこと。この3つだ。この3つを守るなら、お前たちを返してやる。だ

  が、日本政府が拒めば、お前たちの命はない。」

光輝:「なんだ、それ。僕たちを誘拐してまでやる事かよ。」

  これは、日本語で呟いたのである。すると、司令官は目を細めて光輝を見た。光

  輝はビクッとしてさっと篤の後ろに隠れた。

司令官:「では、ごゆっくり。」

  そう言うと、司令官は去って行った。

碧央:「なんだよ、人質って。あいつら頭おかしいよ。」

流星:「1つ有利なのは、俺たちは彼らの言葉が分かるが、向こうは俺たちの言葉が

  分からないということだ。これを強みにしよう。何とか逃げるか懐柔するかの手

  立てを考えないと。」

瑠偉:「いやー、彼らの話がちゃんと分かっているのは、流星くんだけのよう

  な・・・。」

  瑠偉がそう言うと、他のメンバーは苦笑いをした。

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