第11話 海外ボランティア

 植木:「夏休みになったら、外国へボランティア活動をしに行こうと思う。みん 

  な、それぞれパスポートを用意しておいてくれ。と、言われても困るだろうか

  ら、一緒に用意をしよう。」

  植木は、用意しておいてくれ、と言った時にメンバーの顔を見て、その後をつけ

  足した。みな一斉に、驚きの目を向けて来たので。


   夏休みになり、STEのメンバーは、ミャンマーの難民キャンプへボランティア

  活動をしに出掛けた。そこで、子供たちにダンスを教えたり、歌を一緒に歌った

  りするというもの。ある国際ボランティア団体が支援を行っている場所があり、

  植木や内海が何度か訪れた事のあるところだった。

   子供たちと触れ合い、パフォーマンスを披露した。ここには3日間いる。夜は

  テントで眠った。1日目を終え、2日目の夜。

瑠偉:「う・・・碧央くん、お腹、痛い。」

碧央:「え?瑠偉、大丈夫か?わっ、すごい汗じゃんか。ど、どうしよう。」

  瑠偉が腹痛を訴え、横になったままお腹を抱えていた。額には脂汗。隣で寝てい

  た碧央は、同じテントで寝ていた光輝を起こした。

碧央:「光輝、起きろ!瑠偉が大変だ!」

光輝:「うん?どうしたの?」

碧央:「瑠偉がお腹痛いって。すごい汗なんだよ。」

光輝:「え?瑠偉、大丈夫か?僕、内海さんに知らせてくるよ!」

  光輝は、テントを出て近くのテントで寝ている植木と内海を呼びに行った。

碧央:「瑠偉、しっかりしろ。汗拭いてやるからな。ああ、どうしたんだろう。」

  碧央が瑠偉の額の汗をタオルで拭いていると、光輝と植木、内海が入って来た。

内海:「瑠偉、お腹が痛いのか?そうか。お医者さんに連れて行くか?」

植木:「スタッフに相談しよう。」

  植木が医療スタッフを探してきて、瑠偉を診てもらった。薬をもらい、症状は落

  ち着いた。

内海:「慣れない水や食べ物のせいだろう。とにかく安静にして。碧央、光輝、頼む

  な。」

碧央:「はい。」

光輝:「はい。瑠偉、落ち着いて良かったな。」

瑠偉:「うん。」

  翌朝には、起き上がれるようになった瑠偉だが、大事を取って1日活動を休ん

  だ。最終日には復活して、最後に全員で新曲を披露してから帰途に就いた。


 涼:「やっぱさ、地球を救うために、一番すべき事は戦争を無くす事だよな。内  

  戦とかも含めてさ、人が人の命を奪う事をやめなくちゃ。」

篤:「そうだよな。水を出しっぱなしにしないとか、ゴミを海に捨てないとか、そう

  いうちっぽけな事よりも、戦争を無くす事の方がずっと大事だよな。」

大樹:「でもさ、それは俺たちが今言ったって、どうにもならない事だろ?ワールド

  スターにでもなれば、少しは発信力もあるけどさ。まずは日本人に訴えていく方

  がいいだろう。」

涼:「確かに発信力はないけどさ、それでもこうやって日本を出て、紛争地域に出向

  いて行って出来る事をした方がいいと思うんだよ。」

流星:「いやいや、戦争は俺たちの手には負えないよ。それよりも、環境問題の方が

  先決だよ。地球の環境が危ないんだから。温暖化を止めなければ、紛争地域だけ

  でなく、もっと広い範囲で避難民が溢れる事になるわけだし。」

  空港へ向かう車の中で、議論は紛糾した。

篤:「いや、国際紛争だよ!」

大樹:「まずは環境問題だよ。」

  年下の3人は、その議論に口をはさめずにいた。そこをすかさず流星が目を付け

  た。

流星:「お前たちはどう思う?多数決で決めるために、俺たちは奇数なんだから

  な。」

  そうではない。

光輝:「えっとぉ、どうかなあ。やっぱり戦争が一番の問題かなあ。」

篤:「そうだよなあ。碧央は?」

碧央:「え?俺?俺は・・・まずは日本で出来る事をやるべきかと・・・。」

流星:「そうだろう、そうだろう。で、瑠偉は?」

瑠偉:「僕は、どっちかに決めなくていいと思う。どっちも大事だし、僕たちはこれ

  からたくさん歌を作っていくわけで、環境問題も訴えるし、戦争の・・・廃絶?

  とかも訴えるし、両方やっていけばいいんじゃないかな。」

  6人は一瞬黙った。

   実は、乗っているのはトラックの荷台である。トラックの中には植木と内海が

  いて、窓が開いているので、メンバーの話は聞こえていた。植木と内海は目を見

  交わして微笑んだ。

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