第47話 王様、お話聞いてください!


「はぁ~っ!お腹いっぱい!こんなに食べたらママに怒られちゃうかも。」

「ふふ、ママにはじぃじからお話ししてあげるから大丈夫。」


私は心行くまま、目の前に用意されたスイーツを食べ続けた。じぃじもばぁばも最大限に私を甘やかしてくれて、それをいいことに私は遠慮なく二人に甘え続けた。


食べ終わって満足したころ、机の上にさっき自分が摘んだレイムの花が生けてあるのを見つけた。キレイな花瓶にささってはいるけど、やっぱりその花はボロボロで、王様の部屋には全く似合わなかった。


「じぃじこれ、ボロボロだよ?」


私はそれを指さして言った。するとじぃじは「そうだね」と言って、私の頭に手を置いた。



「でもリアが摘んでくれたから、とってもキレイだよ。」

「そう、なの?」

「うん。ボロボロでも飾りたいんだ。」



レイムの花の花ことばは、"信頼"。

さっきじぃじがそう言っていたのを思い出しながら、私はそのボロボロの花を見つめた。


やっぱりその花は豪華な王様の部屋には似合わない。

でもその姿がじぃじと重なって、すごく勇ましくて輝いて見えた。



「ねぇ、じぃじ?」

「ん?」



私はその花を見て、一つ決意を決めた。

決意をこめた顔で振り返ってじぃじを見ると、じぃじは不思議そうな顔をして「どうした?」と聞いた。



「リアのお話、聞いてくれる?」




本当はもっと遠回しに伝えようと思っていた。でもなんとなく、じぃじには見透かされそうだなって思った。だからストレートに思っていることを言おうってじぃじを"信頼"していうと、じぃじは優しい顔をして「もちろんだよ」と言ってくれた。



「最近ね、パパがお家にいないの。」

「そっか。」


私の一言目を聞いて、じぃじはすべてを察した顔をした。そして私の頭を優しくなでながら「ごめんね」と言った。



「パパは国のために動いてくれてる。僕に力がないせいで、こんなに長引いてるんだ。」


じぃじはさっきみたいな申し訳ない顔をして、もう一度私に謝った。するとばぁばも「さみしいよね」って言って、背中を撫でてくれた。



「でもね、この間久しぶりに会えたの。パパがお家でお仕事してたから、リア、邪魔しに行ったの。」


じぃじもばぁばも話を遮ることなく、「うんうん」って話を聞いてくれた。私はそれをいいことに6歳ってことも忘れて、ペラペラと話を続けた。



「ぼうどうが起きてるって、メイサから教えてもらったの。パパからもね、どうしてぼうどうが起きるのか、教えてもらったの。」

「リアは本当に賢い子だね。そんな難しいことをお勉強するんだね。」



王様は私の頭を撫でてくれた。その体温が心地よくて、言葉が止まりそうになかった。



「んでね、リア考えたの。」

「何を?」

「どうしたら、パパがお家に帰ってくるか。」



"暴動を止められるか"って言おうか迷ったけど、そこはせめて子供っぽく言った。するとやっぱり王様は穏やかな顔をして、「それで?」と続きを話すよう促してくれた。



「あのね、パパが言ったの。"船で行ければもっと早い"って。」



主語を省いて言ったけど、王様は何かを考えこむようにしてそれを聞いていた。私はそんな王様も無視して、「それでね」と続けた。



「だからね、行けるようにしたらいいって、リア、考えたの。レルディアみたいにしたらいいって。」

「レルディアみたいに…?」

「そう!レルディアみたいにノールにも船が来たら、みんな美味しいトマトチヂミが食べられるでしょ?」



王様は私の話を聞いて「えらいね」と言ったあと、すぐに「ミア!」と言った。



「はいっ!」

「地図を持ってきてくれるか。」

「かしこまりました。」


ミアさんはそれからテキパキと部下に指示を出して、机を片付けさせた。そう思ったらどこからかパパの部屋でも見たことのないほど大きな地図を持ってきて、机に丁寧にそれを広げた。

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