第9話 雨

 ザァー


「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

「つばさー」

「お、花音! いーれーて」

「いーいーよー」


「ふー、助かったわー」

「もう高校生なんだから、雨の中傘もささないで走るのやめなさい」

「傘持ってなかった」

「天気予報で今日午後から雨ってなってたよ?」

「今日の占いが12位で落ち込んでたら見逃した」

「1話前にメンタル強い宣言してなかったっけ?」

「コトバワカンナイ」

「折りたたみ傘とか普通カバンに入れとかない?」

「カバンに入ってる結構邪魔じゃね? どーせ持つなら普通の傘でいっかってなるし。通り雨に会うことなんて中々ないし」

「説得力ないわ」

「さーせん」


「話変わるけど傘持つよ?」

「あら気が利く。珍しい」

「まぁ、ちょっとな」

「モテるために方法とかいう動画とかでも見た?」

「いや、見てねーけど」

「じゃあどうして?」

「俺と花音の身長って15cmくらいあるだろ? 花音が持つ位置だと傘の骨の部分が頭にあたって痛かった」

「あー、ごめん。気づかなかった」

「そういうことで俺持つから、肩とか濡れそうだったら教えてくれ」

「はーい」

「じゃ、全部片付いたとこでじゃんけん行きますか」

「今日はいいや。君の優しさに免じて今日は自分で持ってあげる」

「わーい?」



 カバンを持たなくていいなら、たまには雨もいいかもしれない。

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