微笑み18

家に帰宅したシオンは困っていた。ワイバーンの卵だけは報酬として貰ってきたのだ。


「私にどうしろと?」


成人男性の半分ぐらいの大きさの卵を部屋に運んで貰った。

う~む。どうしようか?

すると、侍女の職種にジョブチェンジした…………違います!こちらが本職です!!!の、アルカとイルカが助言した。


「コホンッ!シオンお嬢様、僭越ながらワイバーンの卵は珍しいので、もし売られるなら冒険者ギルドにお持ち致しますよ?」

「いえ、売るくらいなら食べましょうよ~!これだけ大きいなら屋敷中の人々に卵焼きが振る舞われますよ!」

「何故、卵焼き限定……そこは玉子料理にしとこうよ」


なんやかんやで、食べる事になりました。


「う~ん………これだけ大きいと厨房のスペースを喰いますね」

「じゃぁ、さっさと割りますか」


ガンガンガンッ!ガンガンガンッ!

わ、割れない………


料理長は、ハンマーで卵を叩くが割れなかった。アルカが補助魔法を使い、卵を割ろうとしたがハンマーが根元から折れちゃいました。


「むきーーー!!!なんて硬い卵なのよ!」


なかなか割れない卵に地団駄を踏むアルカ。だんだんとお腹も空いてきましたね。


「はぁ……仕方がないです。私が割ります」


厨房に被害が出ないように威力を加減した『爆裂魔法』を唱えた。


「我が名はシオン。フレイムハート随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者。我が力、見るがいい!エクスプロージョン!」


極少に集約した爆裂魔法が卵の上部に当たった。小さな爆発音と閃光が厨房に響いた!


小さな煙が立ち上ぼり、ピシッピシッっと卵にヒビが入っていった。


「やった!流石はお嬢様です!」


イライラしていたアルカが喜んだ!


「では、ここからは私の仕事ですね」


料理長がようやく料理ができるとホッと胸を撫で下ろす。そして下準備に取り掛かろうとした時、問題が発生した。


「ピィ!!!!」


卵が孵ったのだ。


「「「あれ!?」」」


厨房に居たみんなの心が一緒になった瞬間だった。そしてシオンに視線が集中した。


ジトーー!


な、なんだよー!私?私が悪いのか!?私は悪くないもん!爆裂魔法を使っただけだもん!

(などと、容疑者は心の中で申しております)


「ピィ!ピィ!ピィ!」


孵ったワイバーンの子供はパタパタッとシオンの側に飛んで行き、頭に居座った。


「えっ!?えっ!?」


事態が飲み込めず、戸惑うシオンに子ワイバーンは頭で丸くなりすやすやと眠るのでした。


『ちょっと!重いんですけど!?』


頭に重石を乗せている感じでヨロヨロするが子ワイバーンは器用に頭から落ちなかった。


「お嬢様!私は卵を割って下さいと言ったんですよ!どうして孵化させちゃうんですか!?」


お腹の空いたアルカは主人であるシオンにも強気で物申す。


「ごめんなさーい!」

「こら!アルカ!シオンお嬢様になんて言いぐさですか!」

「だってー!」


イルカが注意する所に、騒ぎを嗅ぎ付けたグレイが厨房にやってきた。

「なんの騒ぎですか!」


かくかくしかじかと説明したところ、グレイはため息を付いた。


「はぁ~、ワイバーンに限らず魔物は魔力が生命力なんですよ?シオンお嬢様の魔力で卵が孵えるのは当然ですね。それより希少なワイバーンの卵を食べようとする方がどうかしています!」

「「「ごめんなさい!」」」


「幸い、お嬢様の魔力で孵ったので母親と思っているにでしょう。このまま面倒を見るしかないですね。この子の母親を殺したのは私達なんですから責任は取りませんと」


グレイの言葉にシオン、アルカ、イルカは下を向きしゅんとなった。


こうしてシオンはペットを……ワイバーンをテイムし飼うことになるのだった。

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