第17話
どれだけの時間が過ぎたのだろうか。
意識を取り戻し目を開けるとあまりに高い天井が飛び込んできた。
そして次に来るのは鉄臭さ。鼻腔が震える嫌な匂いが漂っている。
手足は拘束されていないし腰にロープも巻かれていない。
自由に動けるがその場から動かず辺りを寝たまま確認する。
火のついたロウソクで囲まれ、灯りはそのロウソクのみで不気味な雰囲気を醸し出している。
木彫の横長の椅子が左右10個ずつ。
真ん中に通路がありその行先には祭壇が置かれている。
ここは教会だ。
祭壇にこの特徴的な椅子は間違いない。
誰がなんの為に作った教会かは分からないが常識的な人が作り使っている教会では無いのは確かだ。
「🎼.•*¨*•.¸¸🎶🎼.•*¨*•.¸¸🎶」
「なに!?」
突如ピアノから旋律が奏でられ、ロウソクの日がサッと消えていく。
優しい月明かりだけが窓から差し込み不気味さはより一層深まった。
たまらず起き上がると気味の悪さに背筋に嫌なものが走る。
「初めましてごきげんようそしてさよなら。私は主から命令を受けやってきた悪魔ソウルイーター。貴方様の魂頂戴致します」
ソウルイーターと名乗る悪魔は人型の悪魔。深海のように暗い青色をした髪と対象的な真っ白のひとつの汚れもない服を身にまとい、高くつられたツリ目がより一層の場を不気味にさせた。
「リバインドマジック!」
「おかしいですね挨拶もしないでいきなり攻撃ですか」
ソウルイーターは上級魔法を片手で薙ぎ払った。
「魔法は使えないと聞いていたのですが、主が目を付けるだけあって流石どこか違いますね」
「何しに来たの」
「魂を頂きに来ました」
「そう。誰の命令で?」
「個人情報ってやつなのでそれは言えません」
「悪魔のくせに個人情報とか人間らしい事言うんですね!」
もう一度同じ拘束魔法を放つが簡単に避けられてしまった。
……ッチ。もう魔力が尽きた。どうするんだよ。何か策は無いのか?
「攻撃は終わりですかな?では、今度はこちらから行きますよ」
目にも止まらぬ早さで間合いを詰めきられると、腹部に重い一撃を貰い吐血すると同時に壁に打ち付けられもう一度吐血した。
壁に貼り付けられるように埋もれた私の目の前で膝を抱えたソウルイーターは吐血した血を指で触り舐めた。
「おおッ!おお!おお!おお!おお!なんとなんとなんと!!なんということだ。刺激的だぁぁ。何故こんなにも美味なのだ!人の味もするが違う物の味もする。なんという複雑な組み合わせだ!先程倒した騎士団の男の血はあまりにも不味く失望していたが……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙……美味だ」
「…………ひぃっ」
余りの狂気と恐怖で足の力が抜けその場に座り込んだ。
「こんな美味なる少女を彼奴に渡す事なんて到底容認できない!この血は生涯私を楽しませてくれる。何たる美味……っ!」
ソウルイーターは小型のナイフを取り出し、私の頬にそれを当てた。
「ああ美しい顔が……!だがこれも致し方無いのだよ。わかってくれるよねアリスちゃん」
「うおおりゃ……!」
座り込んでしまったが、生きるのを諦めた訳では無い。
咄嗟にソウルイーターを押し、立ち上がり横顔に1発蹴りを入れる。
もろに食らったソウルイーターだったがフラフラとする様子もなく、後ろに3歩下がるだけでなんのダメージにもなっていなかった。
それどころか不敵な笑み浮かべた。
「美味なる余韻を邪魔しないで貰えるかなかなかな!!」
「……気持ち悪い」
心の底からの憎悪を口に出すとソウルイーターはただでさえ青白い顔をさらに白く不気味にし、わなわなと震えている。
「き、気持ち悪い?この私が?至高なる悪魔のこの私が!?あぁあ……あぁあ……あぁあ!美味なる血液がなければ即殺していた所だが……まあ良い。戯言の一つや二つ吐き出すのが人間という生物だったな」
狂い雄叫びを上げ教会椅子を壊し我を取り戻した様子のソウルイーターは部屋から出ていった。
なんだったの……アイツは。
とりあえずここから逃げ出さないと。
魔力不足で力が入らない足を気合で立たせ歩き出す。
祭壇のそばに置いてあった杖を拾い、ソウルイーターが出てった出口と同じ場所から教会を後にする。
「逃がす訳には行きませんね」
長い廊下を辿り、外の月明かりを見つけ街に帰れると思い安堵した瞬間目の前にソウルイーターが現れると顔の前に手を翳し何かを唱えた。
が、その言葉を処理し切る前に私は意識を失った。
「その子を解放してもらおうか」
とある青年が教会の入り口で待ち構えていた。
「誰だ!貴様。出会い頭に対魔魔法とは教育を受けていないのか!」
「僕の名前はインハルド。魔物に対する接し方は殺すのみだ」
「生憎だが、私はまだ死ぬ訳には行かない。5分だけ付き合ってやる」
剣を抜き人知を超えた速度で動き合う2人。
ソウルイーターは少女を抱えながも優勢に立ち回り剣を拳で叩き割った。
「何故だ。なぜトドメを刺さない」
5分後少女に剣が当たらないよう立ち回るのは難しくインハルドは床に這いつくばっていた。
「未来視だ。私が望む未来には貴様と少年の活躍が必要のようだ。楽しみにしているよ。ではまた」
ソウルイーターは少女をお姫様抱っこで持ち上げると空を飛び経つと1度振り返り、
「せっかくだ。ヒントを与えてやる。少年の名はユウマ。そしてこの少女の名はアリス。魂は既に主に渡してある伝えてくれ」
「ユウマか。なんとしてでも助け出さなくては」
インハルドは立ち上がり馬に乗って教会を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます