第157話
「シルフ!」
「はいよ、サトコ」
サトコが鋭い声をかけると、シルフはサトコの右肩からフワリと舞い上がる。それから両手を広げて空中でクルッと一回りすると、ルーの足下から螺旋状に風が吹き上がった。
「手伝ったげるね、ルー」
螺旋状の風と呼応するように、ルーの身体から淡い光がユラユラと立ち昇る。
「これは…スゴい
ルーが一瞬惚けるが、すぐに「ハッ」としたように我に返った。
「皆さん、コッチに集まってください!」
ルーの言葉に従ってボクたちは一ヶ所に集まった。
「
直ぐさまルーが魔法を唱えると、ボクらを中心に竜巻が発生した。「嵐竜壁」に似てるけど、風の勢いが強すぎて向こうの景色がボヤけてしまっている。
「これで少しは時間が稼げるハズです」
「た、助かったよ、ルー」
ハルカが半泣きでルーに抱きついた。そんなハルカの頭を、ルーが優しく撫でる。
「よく頑張りましたね、ハルカさん。あとは任せてください」
「へー、結構スゴい魔法だね。僕、初めて見たよ」
竜巻の外からカズヤの驚いた声が聞こえた。
「でもこんな魔法、いつまでも続かないよね?」
「その通りです」
カズヤの憶測に、ルーがボクらにだけ聞こえるように囁いた。
「どうやら精霊魔法というのは、勇者以外には扱いきれるモノではないようです」
ルーの額には、既に玉の汗が滲んでいる。いわゆる魔力の消費が激しいのかもしれない。
「出来れば一気に決めたいのですが、サトコさんなら竜鬼兵の位置が掴めますか?」
しかしサトコは、残念そうに「ううん」と首を横に振った。
「体温がない相手は分からないみたい」
「そうですか、分かりました」
サトコの返事にルーはゆっくり頷いた。
「少し気は引けますが、部屋一杯に魔法を押し広げます。カズヤくんが身の危険を感じれば、竜鬼兵を呼び戻すハズです」
「そんな事をして、ルーさんの体は本当に大丈夫なのですか?」
アリスが心配そうに尋ねた。
「正直一発勝負です、やり直しは出来ません」
ルーはアリスにニッコリ笑って頷くと、ボクとショウの方に顔を向けた。
「相手はミスリルゴーレムです。恐らく対抗出来るのは、ケータお兄ちゃんとショウさんの武器だけだと思います」
「ボクのは同じミスリルだけど、大丈夫か?」
「相手はミスリルと言っても動くのが前提のゴーレムです。純粋な塊のトライメテオの方が、単純に強度が高いハズです」
「なるほど」
思わず納得した。ルーってホント賢いな。
「待ってください!それには問題があります。皆さんはゴーレムの倒し方をご存知ですか?」
そのときアリスが、ルーの話を遮って全員の顔を見回した。ゴーレムの倒し方?何か特別な倒し方でもあるんだろうか。
「どういう意味だ?」
ショウの質問に、アリスが蒼い顔で答える。
「ゴーレムは例えバラバラになっても
「なるほど、それが見えてるのか」
そのときショウが、ひとり納得したように頷いた。
「それなら大丈夫そうだ。魂の位置ならもう分かった」
「え?」
アリスが不思議そうな顔でショウを見上げた。そんなアリスの頭をショウが優しく撫でる。
「どうやら『称号』の恩恵が出ているようだ」
言ってショウは「ニッ」と笑った。
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