第89話 番外編 9
領内を南門から北の軍用門まで真っ直ぐに貫く大通りを、ショウとアリスは並んで歩いていた。おそらく商業の中心街なのだろう。多くの商店と人で賑わっている。
「賑やかですね、ショウ」
「そうだな。よく考えたら、こうして街に出るのも初めてのことだった」
そのひと言にアリスの顔色がみるみる変わる。そんな彼女の表情に気付くと、ショウは隣を歩くアリスの頭をポンと撫でた。
「アリスは俺に気を使いすぎだ。言っただろ、今までの生活に不満はないって。これからは色々案内してくれるんだろ?」
優しく微笑むショウの笑顔に、アリスはみるみる破顔する。
「は、はい!これからは、ふたりで色んなところに行きましょう!」
その時突然、街中にサイレンがけたたましく鳴り響いた。
「見張り塔より入電!ボーダー連峰より多数の魔物が出現。さらにその魔物を追うように…り、竜が現れました!」
サイレンに続き、スピーカーから緊急放送が入る。
「コチラでも、竜を確認。魔物を追い抜き、まもなく到着します!」
「り、竜!?まさか、火竜か!」
ショウの表情が厳しい色に変わる。直ぐさまスマホを操作すると、聖騎士のスキルを発動させる。
腰に差してた片手剣が瞬時に「白銀の剣」に入れ替わり、左腕に楕円形の「白銀の盾」が装着される。それから真っ白な「回雪のマント」が背中でバサッとひるがえった。
「先行する!アリスは後から来てくれ」
「シ…ショウ、一人では危険です!」
「一人ではないさ、向こうには衛兵がいるんだろ?」
「とはいえ若手です、どこまで戦えるか…」
「なんとかする!このままではこの街も危ない」
「それは、そうですが…」
「時間が惜しい、俺は行くぞ!」
言うが早いか、ショウは駆け出し跳躍した。そのまま何もない空中をパッパッと跳ね、みるみるうちに外壁の向こうへ消えた。
「ショウ、無茶はしないで!」
アリスはショウの後を必死に追いかけていった。
~~~
ショウが外壁の上に辿り着いたとき、演習場に竜の姿が既にあった。そしてその瞬間、竜がブレスを噴いた。犠牲者が出たかもしれない。「ギリッ」と歯を鳴らし、竜の姿を睨みつける。
その時ふと、横から物音が聞こえてきたのでソチラに振り向くと、二台の砲台のようなモノのそばで複数の衛兵が作業をしていた。
(コレは!)
ショウはハッと思い出した。王宮にも似たようなモノがある。確か、魔砲台だ!
魔砲台とは凝縮した魔力の塊を撃ち出す大型魔法道具である。着弾点では純粋な魔力が炸裂するため、属性効果はないが属性防御も意味がない。いわゆる無属性であり、基本的には何にでもダメージを与えることが出来る。砲弾ではないので弾の装填は必要ないが、
ショウは魔砲台のそばに駆け寄ると、一番近くにいた作業中の衛兵の男に声をかけた。
「コレ、魔砲台だよな、すぐに撃てるのか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます