第8話 朝からドキドキが止まらない

 休日だけど、俺はいつもより早めに起きた。


「可奈子さん、昨日はお酒を飲んでいたからな。今日は俺が朝ごはんを作ってあげよう」


 彼女が喜ぶ顔を想像して少しウキウキしながら階段を下る。


 その時、キッチンの方からジュージューと音がした。


「えっ?」


 俺は慌ててそちらに向かう。


「あ、冬馬くん。おはよう」


 エプロン姿の可奈子さんが既に立っていた。


「おはよう……可奈子さん、早いね」


「そう? いつも通りよ」


「いや、昨日はお酒を飲んだでしょ? だから、今日は俺が朝ごはんを作ろうかなと思ったんだけど」


「ありがとう、優しいのね」


「いや、そんな」


 俺は可奈子さんのそばに寄る。


「目玉焼き、半熟と固焼き、どっちが好み?」


「俺は……半熟かな」


「あ、そうなんだ。私は固焼き派なの」


「そうなの?」


「うん。固い方が好きなの。食べやすいし」


「じゃあ、固焼きで良いよ」


「ううん、今日は半熟にする。冬馬くんは、トロトロなのが好きなんでしょ?」


「まあ、ね。でも、何か可奈子さんに悪いよ」


「遠慮しないで。妻はね、愛する夫に尽くすのが幸せなの」


「か、可奈子さん……朝からドキドキするね」


「私もよ」


「本当に? 年上だから余裕でしょ?」


「じゃあ、確かめてみる?」


「え、どうやって?」


「胸、触っても良いよ」


「へっ?」


「今の私は料理中で無防備だから……どうぞ?」


 可奈子さんは何とも含みを持たせた微笑みを浮かべてくれる。


 一方、俺は硬直していた。


 ちらっと、エプロンを押し上げる可奈子さんの豊かなバストを見た。


 あ、朝からあれに触れたら……きっと俺の理性は爆発する。



『んあッ!』


『か、可奈子さん、俺もう止まらないよ!』


『うん、良いよ……いっぱい揉んで?』



 ……って、何を考えているんだああああああああああああぁ!


「はい、焼けた」


 俺が一人悶絶している間に可奈子さんはサラッと言う。


「へっ?」


「残念だったね。おっぱいチャンスは終了です」


「お、おっぱいチャンスって……俺はそんな変態になりたくないよ」


「良いんだよ、なっても。女はね、好きな男の人になら、何をされても嬉しいの」


「も、もう少しだけ……待って下さい。俺みたいなガキじゃ、まだ可奈子さんのような大人の女性を相手にするのは難しいです」


「でも、何度も言っているけど私だって経験は無いから……平気だよ?」


 可奈子さんは小首をかしげる。


「だ、だとしても……大切にしたいんで」


 俺が言うと、可奈子さんはキュッと唇を引き結んだ。


「ヤバい、今のすごく胸キュンした」


「マ、マジですか?」


「うん。ごめんね、おばさんのくせに胸キュンとか言って」


「だから、可奈子さんはまだ24歳、ピッチピチのきれいなお姉さんです」


「嬉しい。じゃあ、冬馬くんの周りにいるピッチピチで可愛らしい女子高生に負けないように……がんばるね」


「可奈子さんはそのままで可愛いよ。それに……スタイルは圧倒的に勝っているから」


「こら、エッチだぞ?」


「ご、ごめん」


「良いよ、思春期男子はそんなものだから。いつだって、お姉さんを使ってくれて良いんだぞ?」


「こ、こら、可奈子さん」


「うふふ。朝ごはん、食べましょう?」


 可奈子さんは素敵な笑顔を見せてくれる。


 この人と居るとすごく幸せだけど、糖分過多で俺はいずれ死ぬかもしれない。


 その時は、あの素敵な胸に抱いてもらいたいなって……俺はやっぱり変態かもしれないと思った。







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