第13話 初回講義②-2
そうこうしているうちに食堂についた。非常に広い部屋で、長い長方形の机が何列にも並んでいる。天井からは花の紋章がついた白い旗が垂れ下がっている。また最奥は数段高くなっており、ステージがある。白と金を基調としていて、厳かな雰囲気を漂わせている。高校や大学の学食とは格が違う。ちょっとしたおしゃれなレストラン風の食堂だ。まだ人数はまばらだった。カウンターの方へ向かうと和食か洋食かと聞かれ和食を選ぶと食券を渡された。昼も夜もこの食堂で食事が出るそうだ。三食寝床付き、あれ?案外悪くない。
食事を受け取るとすぐさま食堂の端の端を陣取る。飲み会などに(無理やり)参加させられる時もできるだけ目立たない端っこで黙々と食事をとってきた。
飲み会とは「ワイワイ会話するもの」ではなく私にとっては単なる「栄養補給」である。なぜあんな苦行に数千円も払うのかさっぱりわからない。飲み会一回の代金で一週間は暮らせる。食事ぐらい一人で食べたい。いや食事どころかすべての面で一人で生きたい。
さあ食べるか、と箸をとった瞬間後ろから声がかかった。
「お兄ちゃん、ちょっといいかい?」
食堂につきものの白の割烹着おばちゃんだ。
「はいなんでしょう」
「今日だけは席が決まってるんだよ。すまないけどあそこで席を確認してからすわってもらえるかなぁ」
そういって指さされた方を見ると何やら番号札をとっていってる。銀行の受付のようだ。
「わかりました。ありがとうございます」
「ええよええよ、それにしてもかわいい子が来たね」
「はぁそうですかね」
「見たとこあんた若いねぇ。高校生かい?まだまだこれからだ。まあがんばりな」
「はいっ」
おばちゃんは私の背中をバシッとたたいて、厨房に戻っていった。私も年を間違えられるのは慣れているのでどうでもいい時はうんうんうなずいておく。どうせ作ってもらって食べるだけの関係だ。
まあでも仕事の上司は別としてなぜかお年寄りには好かれる。私も同世代の人と相手にするよりずっと気が楽だ。少子高齢化が完全に進んだ地元での生活が長かったからかだろうか、不思議だ。
番号札をとる。そして席を見ると、ど真ん中であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます