第48話

小春が奈那子先輩に会いに行くと言って家を出てから一時間半ほどが経った。

テレビはつけていないため、部屋は物凄く静かだ。

 奈那子先輩からは『小春ちゃんは任せてね。私がちゃんと守るから』と連絡が来た。

 正直奈那子先輩も凄く可愛いし、変な人達に絡まれたりしないか心配ではある。

 けれど何かあったら直ぐに連絡をしてねと小春と奈那子先輩には言ってある。

 小春からはどこに行くのか聞いているし。

 静かな部屋が嫌になった俺はテレビの電源を付ける。


「もうすぐ二月か」


 俺はテレビでやっていたバレンタイン特集を見てそう呟く。

 テレビでは高級なチョコレートや簡単に作れる手作りチョコレート、今話題のチョコレートなど、色々な種類のチョコレートを紹介している。

 どれも美味しそうなチョコレートだ。

 勿論俺はバレンタインに異性からチョコを貰ったことなど一度もない。勿論同性からも貰ってないけど。

 バレンタインには縁がない。

 けれど、やはり今年は少し期待してしまう。

 彼女から、小春からチョコレートがもらえるんじゃないかって。

 今までは彼女なんか一度もできたことないし、仲の良い女子もほとんど居ないと言っていい、だから期待などしてこなかった。だからこそ、彼女のできた今年は期待が膨らむ。

 可愛い彼女からバレンタインにチョコを貰いたくない男子なんて居ない。

 俺はテレビに映る美味しそうなチョコを見ながらそう思う。

 テレビに映るチョコは間違いなくどれも美味しいだろう。けれど俺はどんな高級なチョコレートよりも、小春の手作りチョコの方が何倍も食べたいと思う。

 そんな事を思っていると家のドアの空く音がした。

 

「ただいま、悠斗くん」


 次に可愛らしい声で俺の名前を呼んで帰ってきたことを知らせてくれる。

 

「お帰り、小春」


 俺がそう言うと、小春は直ぐに俺の元へ駆け寄って来て、俺の隣に座る。

 可愛い……


「どうだった? 楽しかった?」

「うん! 久しぶりに奈那子先輩とお話しできて凄く楽しかったよ! それでね、また再来週の日曜日に合う約束したんだ~」

「再来週の日曜日? 分かった。把握しておくね」

「ありがとう、悠斗くん」


 小春はそう言って俺の体にもたれかかってきた。

 小春の良いの匂いが俺の鼻孔をくすぐる。

 

「私たち、もうすぐ二年生になるんだね」

「そうだね、あと二か月で二年になるね」

「そしてあと一年たったら私たち三年生。受験生になるんだよ? 受験生になったらさ、今みたいにいろんなことできなくなるのかな? 色々な場所でデートしたり」

「そうだね、少なくなるとは思う。けれど同じ屋根の下に居るんだから、毎日こうして会えるのは変わらないよ」


 受験生になれば、今よりも出掛ける回数が少なくなるのは必然だ。

 だから、今の時間を大切に、小春と居る時間を大切にしなければいけない。


「そうだね」


 隣で可愛らしく笑う小春を見ながらそう思った。

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