第28話
昼休みを知らせるチャイムが鳴り、教室に居た生徒は直ぐに購買へ向かった。
冬休み明けの授業はとても長く感じた。
「なぁ、篠原」
「あぁ、ごめん。今日は奈那子ちゃんがお弁当作ってきてくれてるから一緒に食べることになったんだ。だから今日は一緒に食えねぇ」
「ああ、それなら良いんだ。彼女さんと楽しんで来いよ」
「おう!」
篠原は元気よく返事をし、元気よく教室を飛び出していった。
隣の席を見ると、既に小春は居ない。
「俺も行くか」
俺は小春に作ってもらったお弁当を手に持ち、席を立つ。
俺が教室を出ると、教室には誰一人として残らなくなった。これじゃあ別に元文芸部の部室に行かなくても良くないか? まぁでも念には念を。
俺は階段を上り、小春の待つ部屋へと向かう。
「お待たせ」
ドアを開けると、小春は部屋の中心に設置されている机に弁当箱を広げ、椅子に座っていた。
「ううん。 早く食べよ?」
「うん」
俺は小春の前に座る。
「今日のお弁当はね、オムライスにしてみたの! あ、勿論おかずもちゃんとあるからね」
小春は「じゃじゃーん!」と言いながら弁当の蓋を開けた。
「おお! 美味しそう!」
俺も続いて弁当を開けた。
「あ、ケチャップはこれね」
そう言って小春は俺に、小袋を渡してきた。
「あ、ハート書いてあげるね!」
そう言って俺に渡そうとしていたケチャップを開け、俺のオムライスに綺麗にハートを書きだした。
「はい! 悠斗くん」
小春は可愛らしい笑顔で俺にオムライスを差し出した。
「ありがとう。本当に小春ってハート書くの上手だな」
「そ、そう?」
「うん。こんな綺麗なハート見たことないもん」
「えへへ、ありがとう。そろそろ食べようか」
俺と小春は胸の前で手を合わせ、オムライスを食べ始める。
「うん! 美味しい」
「ありがとう。やっぱり手料理を美味しいって言ってもらえると嬉しいなぁ」
「小春の手料理で美味しくないって思った事なんて一度も無いぞ」
「本当に? 嬉しい! あ、悠斗くんに相談したいことがあるんだけど……」
「相談したいこと?」
何だろう? 小春が相談したいこと。
「えーっと、ね」
小春は胸の前で手をもじもじさせながら言う。
「私達が信頼してる人には私たちが付き合ってること言わない? も、勿論同棲していることは内緒だけど」
「信頼している人?」
小春はコクリと頷いた。
「悠斗くんなら篠原くんとか。私なら奈那子先輩に」
「俺は良いけど、小春は良いのか?」
「う、うん。そ、そうすれば篠原くん、奈那子先輩と一緒にダブルデートとかもできたりするよ?」
確かにそれは魅力的だ。それにいちいち篠原にバレないように振舞う必要もなくなる。
「でも何時話すんだ?」
「そ、それは……」
どうやら考えていなかったらしい。
「じゃあ篠原には俺が話しておくから、奈那子先輩には小春が話してくれるか?」
「う、うん。分かった」
と言っても、篠原が信じてくれるか分からないけど……
俺と小春は月と鼈だ。
間違いなく最初は信じてもらえないだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます