第20話
「もー、なんであの時にちゃんと本当のこと言ってくれなかったの!」
小春は俺から体温計を受け取り、表示されている数字を見て怒る。
「三十八度四分もあるよ……」
「ごめん。そんなにあると思ってなくて」
俺も小春に怒られて反省する。
熱なんて出したのは何時ぶりだろうか。
「でも体調は悪くなかったんでしょ?」
俺は正直に頷く。
「心配かけたら悪いと思って……」
「はぁ……」
小春は深いため息を吐いた。
「私は悠斗くんに心配かけられても構わないよ? それに、私は悠斗くんが苦しむ方が嫌だよ」
俺が小春の立場だったら同じような事を言っていただろう。
何故あの時にこんな簡単な事が分からなかったのだろう。
少し考えれば分かることじゃないか。もしあの時に熱で頭が回っていなかったとしても、小春を傷つけたことには変わりない。
「小春、ごめん。次からはちゃんと言うよ」
「もう良いよ、お
「ありがとう。助かるよ」
「うん。悠斗くんは絶対に寝ててね。眠たくなくても寝るんだよ? 寝てなかったら怒っちゃうからね」
小春は俺に手を振りながら部屋を出て行った。
俺は小春に言われたことを素直に聞き、目を閉じることにした。
☆
「よし、まずは鍋を出して、っと」
悠斗くんが熱を出しちゃったから、消化が良いお粥を作ってあげることにした。
もう、何であの時に正直に言ってくれなかったのかな。
私、頼られてないのかな?
そう思ってしまうけど、悠斗くんが言っていた、心配をかけたくなかったという言葉を信じることにする。
「たまごも入れようかな」
お粥は作ったことがないし、失敗するといけないので、ネットで作り方を調べて作ることにした。
ネットには凄く分かりやすく作り方が書かれている。
美味しく作れたらいいんだけど……
「お粥って凄く簡単なんだ」
出来上がったお粥を見て私はそう呟く。
食べやすいように飯椀にお粥をよそって悠斗くんの部屋へ持って行った。
悠斗くんは私が言った通りにしっかりと眠っている。
私は悠斗くんの額に手を当てる。
「熱い……」
勿論まだ熱は治まっていないため熱い。
ぐっすり眠っているから起こしたくないけど、起こさないといけない。
「悠斗くん、悠斗くん」
私は悠斗くんの体を優しく、優しく叩いて起こす。
悠斗くんはゆっくりと目を開ける。
「お粥できたよ」
「ありがとう」
悠斗くんは重そうな体をゆっくりと起こし、私からお粥の入った飯椀を受け取った。
「まだ熱いから気を付けて食べてね。食べさせてあげようか?」
もしお粥を食べる気力もないなら私が食べさせてあげようと思ったが、悠斗くんは「大丈夫だよ。自分で食べれるから。ありがとう。でもうつっちゃうといけないから今日はリビングか隣の部屋に敷布団引いて寝てくれないかな?」と言った。
「うん。分かった。リビングで寝かせてもらうね」
「ごめんね、敷布団運んであげられなくて」
「いいの、いいの。私だって敷布団運ぶくらいの力はあるよ」
敷布団をリビングへ運び終えると、私はテレビの電源を入れる。
いつもなら悠斗くんも一緒にリビングに居て会話をしているからこの静かなリビングが嫌だった。
「悠斗くん、何で熱なんてひいちゃったの……」
ソファに座り、クッションを抱きしめながらそう呟いた。
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