第4話

「お皿洗いも私の担当で良いのに」

「いや、皿洗いは掃除の一つだから」


 小春が作ってくれたオムライスを美味しく頂き、俺はその後の皿洗いをしている。

 小春は、皿洗いも料理の一つだと言い、自分がやると言ってくる。だが俺の中では皿洗いは料理とはまた別と考えている。互いに意見が違っているのだ。


「だから小春は先に風呂入ってきなよ」


 だから俺と小春は皿洗いを二人でやっている。


「じゃあさ」


 小春は一度手を止めた。


「お皿洗いは一日交代にしない?」

「一日交代か。ああ、それ良いな」


 彼方の提案に俺は賛成した。

 とりあえず今日は俺の当番ということになった。


「じゃあ風呂に入っておいで。ちゃんと温まれよ?」

「うん」


 小春はそう返事をして風呂に入りに行った。

 その間にすべての食器を洗い終える。

 まだ小春と同棲し始めて一日も経っていないが、上手くやっていける気がする。

 俺もこんな可愛い彼女と一緒に暮らせて嬉しい。

今日は良い出来事がありすぎた。明日死んでも不思議ではないくらいに。

明日は気を付けて学校へ登校しないといけないな。

皿洗いを済ませた俺は、布巾で机の上を拭き、コーヒーを飲むためにお湯を沸かした。

数分でお湯は沸き、作ったコーヒーを片手に再び椅子に座りテレビを見る。

テレビではもうすぐクリスマスがやってくるということもあり、綺麗なイルミネーションスポットが紹介されている。今までは綺麗だな、と思うだけで行ってみたいとは思わなかったが、今は小春と一緒に見に行きたいと思っている。


「そういえばまだ課題やってなかったな」


 今日は色々な出来事が起こり未だに課題を一切やっていない。といっても出されている課題は少ない。そんなに時間はかからないだろう。

 一度俺の部屋に戻り課題を持ってくる。

 小春が風呂から出てくるころには終えられそうだ。


「悠斗くん、出たよ」


 小春が風呂に入って数十分が経った。小春はもこもこの可愛らしい寝巻姿で脱衣所から出てきた。

 そんな小春に俺は見惚れてしまった。

 

「どうしたの? 何か変かな?」

「い、いや、変じゃないよ。ただ可愛いなって思って」

「か、可愛い⁉ そんな急に言われたら照れちゃうよ……」


 小春は少し赤くなった頬を手で隠した。何それ可愛い。


「そ、それより髪乾かさないと風邪ひくぞ。ドライヤーならそこにあるから」

「う、うん。分かった」


 俺は小春に髪を乾かすように言った後に風呂に入りに行った。

 風呂に入る行為が面倒くさいと思ってしまう俺は、体が温まったと思ったらそれ以上長居はせずに直ぐに出る。入浴時間は大体十分から十五分くらいだ。

 風呂にスマホなどは持ち込んでいないので暇なのだ。

 持ち込んでも良いけど、持ち込んだら長居しすぎてのぼせてしまう可能性があるからしない。

 いつも通り直ぐに風呂から出て、寝巻に着替え、洗濯機をまわす。

 

「え! 悠斗くんもう出たの⁉」


 脱衣所から出てきた俺を見て小春は驚いた様子でそう言った。

 小春は俺に比べて長時間風呂に入っていた。

 逆に俺からすれば長時間風呂に入って退屈したりのぼせたりしないのかと不思議だ。

 

「ああ、いつもこれくらいだぞ? 逆に小春はよく長時間入浴できるんだよ」

「えー、なんかお風呂に入ってる間ってリラックスできて癒されない?」

「でも長風呂は肌が乾燥するって聞いたことあるぞ?」

「ちゃんと保湿したから大丈夫だよ」


 小春はそう言って保湿クリームを手に取って見せてきた。


「それならいいけど、でも脱水症状にはならないように気を付けろよ?」

「うん。気を付けるね」


 風呂の中で脱水症状になられて倒れられたりしても直ぐに駆けつけれるとは思えない。


「悠斗くんって心配性だね」


 言われてみればそうかもしれない。


「心配なんだからしょうがないだろ」

「そんな心配しなくても良いのに。でも、ありがとう。私の事心配してくれて」

「お礼を言われるとは思わなかったな」

「だって、私の事が大切だから心配してくれるんでしょ?」


 小春の言う通りに、俺は小春に何かあったら嫌だと思ったからそう言っていた。

 正直ウザがられると思っていた。


「あ、あれ? 違うの? だったら恥ずかしい……」

「違わないよ。小春の言う通りだよ」

「そ、そうなの? なら良かった」


 俺はドライヤで髪を乾かし、ソファーに座る小春の隣に座った。

 

「ねぇ、悠斗くん。このイルミネーション凄く綺麗だね」


 テレビでは未だにイルミネーションの紹介がされていた。どうやら全国のイルミネーションを紹介しているらしい。

 

「そうだね」


 今は噴水を使ったイルミネーションが紹介されている。

 

「生で見てみたいね。やっぱり画面で見るよりも綺麗に見れるのかな?」

「見れると思うよ。やっぱり生で見るのが一番なんじゃないかな」

「ねぇねぇ」


 小春は俺の腕の袖を詰まんで引っ張ってきた。

 その可愛らしい仕草にグッときた。


「どうしたの?」

「もうすぐクリスマスでしょ?」

「ああ、そうだね」

「私たちの始めてのクリスマスデートにイルミネーション見に行かない?」


 小春からのクリスマスデートの提案。

 人生で初めてのクリスマスデートをこんな可愛い子とできるという幸せ。

 俺は小春とデートができるなら何処でも良い。


「良いよ。小春の行きたい場所に行こうか」

「本当に⁉ やったー! ありがとう悠斗くん」


 小春が笑顔になれるなら何処にだって一緒に行きたい。

 小春と綺麗なイルミネーションをテレビ越しに見ながら会話をしているうちに、時間はどんどんと過ぎていく。

 いつの間にか時刻は十一時。小春がいつも何時に寝ているのかは分からないが、少し眠たそうな表情をしている。


「小春、眠たいならそろそろ寝るか?」

「うん」


 小春は眠たそうな目を擦りながらそう答えた。

 

「いつもは何時に寝てるの?」

「十時くらいかな? 悠斗くんと話してると時間を忘れちゃうね」

「それは同意見だ」


 小春は俺と一緒で家に帰ると話し相手が誰も居ない。誰かと通話すればいいけれど、毎日そういうわけにはいかない。

 こんな俺でも小春の話し相手になれるなら良かったな。


「じゃあ寝るか」


 俺はソファーから腰を上げた。それに続くようにして小春も立ち上がった。

 小春は後ろで俺の服の裾を掴みながら着いてくる。


「電気消すぞ?」

「ま、豆電球付けてほしいな……真っ暗は怖いから」

「ああ、分かった」


 豆電球のみを付けてそれぞれの布団に入る。


「なぁ、俺が敷布団で寝ようか? 小春ベッドの方が良いだろ?」

「敷布団で良いよ。悠斗くんと一緒の部屋で寝れるならそれで満足だから」

「そうか。お休み、小春」

「うん。お休み、悠斗くん」


 そして俺たちは眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る