第13話 アスター大神殿 庭園2
「女神アスターのしもべ、ドノヴァンと申します。遠方より参られた客人に、女神の加護があらんことを」
俺に向いている笑顔は、無邪気とさえ思える。腹に一物を抱えているような顔じゃない。
なのに、何故か、背筋が粟立った。
木の枝だと思って掴んだのが毒蛇のしっぽだった時のような、一瞬で血が冷える感覚。
その時は脳が理解するより早く、遠くへ投げ捨てていたから事なきを得たけど…今は回れ右して逃げるわけにはいかない。
何しろ相手は大司祭。
主教がいない今、このアスター大神殿でバレルノ大司祭と並ぶ最高位の聖職者だ。
めちゃくちゃ失礼だろう。そんなことをしたら。
しかも、見た目は痩せた老人。
そんな人を相手に、大男の部類に入る俺が悲鳴を上げて逃げだしたら、アスラン人ってやっぱり悪魔だから威光を畏れて逃げたんだ、なんて噂が立ってしまう。
明日から冒険者ギルドに行き難くなる。
それにしても。
なんでこれほど、俺はこの人を警戒しているんだろう。
ちぐはぐな人だとは、思った。
年齢よりも老けているし、なんだか重心がずれている感じがする。
だけど、例えばこの人がいきなり刃物を構えて切りかかってきても、多分避けられる。全力で殴られても、折れるのは相手の腕だろう。
つまり、俺にこの人が危害を加えられる可能性は非常に薄い。
それについて警戒はしていないと断言していい。
なら、他の可能性。
例えば、周りの神官や信徒を煽って危害を加えてくるのを危惧している?
大司祭が命じれば、反射的に動く人は多いよな。
だけど、同時にここは楼門をくぐった先の、礼拝堂に至る前の庭。
左方の神官だけがいるわけじゃない。右方の人たちだって大勢いる。
そんなところで、いきなり通行人を襲わせるのはありえない。
つまり、俺はこの人を恐れる要因なんてないはずなんだ。
なのに、明らかに俺はこの人に恐怖している。
なんでだ?この人のどこが、俺の何を怯えさせている?
「おい」
振り向かず、クロムが声だけ飛ばす。
「絶対に俺の後ろから出てくるなよ。出たら蹴り飛ばすからな」
言っていることはひどいが、声が硬い。
クロムも俺と同じように感じているみたいだ。
クロムの右手は自分の腰に添えられている。
何かあれば呼吸ひとつの間に剣を抜ける位置。
脚も軽く広げられ、左膝が微かに曲げられた。完全に警戒態勢になっている。
俺からは見えないけれど、顔も硬質な無表情になっているんだろう。
その隣のユーシンは、特に姿勢を変えていない。
ただ、石突を下にしていた槍が、穂先を地面に向けている。
上から振り下ろすより、広い間合いをカバーできる構えだ。
ただ、ちょっとだけ見える顔はクサイクサイと騒いでいた時と同じしかめっ面。
まあ、臭いの発生源に近付いたしな。
臭いと言えば、この臭い、本当に香油なんだろうか。もっと動物的な気がするけど…
そんな俺たちの様子を見たドノヴァン大司祭は、悲しそうに眉を下げた。
「ああ、そんなに怯えないでください」
「怯える?」
思わず、聞き返す。
確かに、今、自分の様子を客観的に見れば「怯える」は相応しい表現だと思う。
だけど、一応俺だっていい年の男。
恐怖を表面にだしてはいない。
生まれ自体はそれなりの家柄なもんで、内心を隠す曖昧な笑みはばっちり習得しているはずだ。
警戒しないでほしい、ならわかる。
おおっぴらに構えているわけではないけれど、クロムもユーシンも即攻撃に移れる体勢なのだし、俺だって実はさっきから少しだけ腰を落としている。
「ええ、ええ。今、あなた方は私に怯えています。しかし、それは恥ずべきことではありません」
言葉が返ってきて、本当に良かった。
そうはしゃいでいるように見えるほど明るい声で、ドノヴァン大司祭は続ける。
「私は女神アスターの御意志を伺いました。その際、女神は私の前にそのお姿を顕されたのです」
朗々と響く声に、周りの信徒たちがざわめく。中には跪き、涙を流す人もいた。
まあ、信仰している神様の神殿で、大司祭が女神が降臨されましたーって言ったら、そりゃ感動するよなあ。
「あなた方が怯えているのは、その女神の威光の名残り。春先の雪のように、まだこの身に残る、その尊い気の欠片なのです」
なるほど。理屈は一応通るな。
神、というのは非常に大きな存在だ。
神官が振るう御業は、あくまでその強大な力の一部を借り受けているに過ぎない。
それでも、人間の体程度なら修復し、病を癒し、毒を消し去る。攻撃の御業をもってすれば、巨大な塔すら砕いたという伝説だってある。
その神を、一端とはいえ地上に招き、その前に立ったのなら。
神の気配は、確かに身体に降り積もり、残るだろう。
狼の残した毛一本だけで、子羊が怯えるのと同じだ。
圧倒的な強者の気配に、感じ取った者は怯えてしまう。
「しかし、その威光の欠片を感じられるということは、あなたは今、神を感じているということです。素晴らしいことです!ええ、ええ!」
まるで自分の親でも自慢しているような勢いだ。
目はキラキラと輝き、頬は紅潮している。
心の底から神を愛し、信じているのがひしひしと伝わってくる。
ただ、伝わってくるそのテンションに俺らが置いてけぼりになっているけれど。
「はあ…」
「アスラン王国にも、女神アスターの神殿はあると聞き及んでいます。ええ。異国の客人よ、貴方も女神の信徒なのですね?」
「え?ええっと、特に特定の神の信徒ってワケじゃないです。強いて言えば国の守護神リューティンになるのかな…?あと、学者なので探求の神クロウドの神殿があれば足を運びます」
「そうですか…しかし、ええ、今、貴方も女神の威光に触れ、その気高さ、偉大さを感じていらっしゃいます。ええ、そうですとも、女神アスターは至高の御方。貴方が今感じる怯えは、きっとあなたの夜を終わらせる光となります。ええ、どうぞ、女神アスターの御意志を見過ごされずに…」
俺の手を取って握りしめそうな勢いに、クロムが動いた。
さりげなく一歩を踏み出し、ドノヴァン大司祭と俺との間に完全に立ち塞がる。
「用がないなら退け。さっさと帰って飯でも食いたいんでな」
「おや、貴方は…」
ぱちくりと瞬きをして、ドノヴァン大司祭はクロムを見つめた。
今初めて、その存在に気付いたようなそぶりだ。
さっきからいたんだけど、目に入っていなかったんだろうか?
「大司祭、そろそろ戻りましょう。冷たい風がお体に障ります」
クロムから目を離さない大司祭の肩に、一目で偉い神官…おそらく司祭だろうとわかる老人が手を置いた。
ちらり、とジョーンズ司祭にも目配せをしている。
それを受けて、ジョーンズ司祭も大司祭に歩み寄った。
「私たちはお客様を外までお送りしてから、日没の礼拝に向かいますわ。ドノヴァン大司祭、お風邪を召される前に、お部屋に戻ってくださいませ」
「ややや、確かに、確かに、ええ、もう日が暮れますね。礼拝の準備をせねば」
二人の司祭の言葉にうなずくと、もう俺たちのことは目に入っていない様子でトコトコと歩き去る。
あわてて、男性司祭がその後に続いた。
なんか、苦労してそうだなあ。あの人。もう、お爺ちゃんって言われるような年だろうに。
真横を通られて、唖然とした様子でクロムはそれを見送っていた。
それでも姿勢は崩さず、視線だけでドノヴァン司祭を追っている。
さすがに首を回しても追いきれないあたりで前に向き直ったけれど。
『あの爺さん、ボケてんじゃねぇか?』
『クロム…まだそんな年じゃないはず…だぞ?』
西方語ではなく、俺たちの母国語、タタル語でクロムが呟く。
アスラン、キリク、クトラの民が使う言語だから、もちろんユーシンにも解る。
ふう、とひとつ息を吐いて、ユーシンは俺に向きなおった。
『ファン、俺は怯えていたのか?』
しかめ面からいつもの顔に戻っているけれど、眉は寄っていた。
こっちが普通に考えて憂い顔ってヤツなんじゃないかな。
周りの女性たちの視線が一気にユーシンに集まっている。
『あの感覚が怯えるというものなのか?胃の腑を握られたような不快感があったが』
おそらく、ユーシンは生まれてこのかた、恐怖を感じたことがない。
怖いもの知らず、というレベルじゃなく、恐れ怖がる…その感覚がユーシンにはない。
それは、戦士として長所のように思えるが、むしろ逆。大きな欠点だ。
恐怖知っているからこそ、警戒する。
警戒するからこそ、敵の存在を察知できる。
引き際を探れる。
ユーシンは止めなければ、腹が抉れても、腕を切り落とされても戦おうとするだろう。
そして、恐怖と向き合ったことのないユーシンが、初めてその感覚を知った時、果たしてコイツは正気でいられるだろうか。
ユーシンに恐怖を覚えさせられるのなら、それはとんでもない存在だ。
そんなものを恐怖という痛みを知らない心にいきなりぶつけられたら。
魂が砕けてしまっても不思議ではない。
だから、今、その恐怖の欠片でも覚えたのなら、もうそれだけでここに来た甲斐はあったな。
わけのわからない体験も恐怖も、悪いことばかりじゃない。うん。そう思おう。
『少なくとも俺は怖かったな…逃げ出したいと思うくらいには』
『ふむ…そうは思わなかったが…ただ、不快だ』
『うん、それでもさ、お前が乳粥を口に突っ込まれた時以外で不快になる事って、そうはないじゃないか。だからさ、ユーシン。今のその感覚、覚えとけよ?』
『ああ。わかった』
胃のあたりを開いた左手で押さえながら、ユーシンは何とも言えない顔をしていた。
これがきっかけになって恐怖をユーシンが感じられるようになったのなら、俺は女神アスターに帰依してもいい。
ユーシンはきっと一生槍を置かないだろう。
戦士として生きるのに恐怖を知らないままなら、いつかそれが原因で命を落とす気がする。
そうなってほしくない。
ちゃんと七十過ぎるまで生きて、この面子で若いころの話とかしたいよ。俺は。
爺さんになって、あの頃はお前も無茶だったなあとかさ。
「ねー、僕のわかんない言葉で話さないでよー」
「ああ、ごめん。ちょっとクロムが空気を読んだから」
くいくい、と服を引っ張られて振り向くと、頬を膨らませたヤクモと、血の気が引いた顔をしたウィルさんがいた。
ウィルさんも怖かったのかな。バレルノ大司祭に対しては全く怖がっていなかったし、地位に対して怯えていたわけじゃなさそうだ。
「クロムに空気を読ませたのか…あのお爺ちゃん、すごいねぃ」
「うん、さすがに大司祭だな」
「あ?とっさに母国語が出ただけだ。さすがにありゃ予想外すぎる」
今度はちゃんと振り向いて、クロムが肩を竦めた。
「関わり合いにならん方がいい人種だな」
「うーん、まあ…同感だな。いかにも聖職者って人だって聞いてたけど…」
確かに、純粋に神を信じている。それは間違いないだろう。
でも、もう少し落ち着いた人を想像してたよ。
多分あの人の目に、自分と女神以外は入っていない。ひたすらに信仰にすべてを捧げられる人なんだろう。
「すべてにおいて、真正面からとらえ、見る方なのです」
ふう、とジョーンズ司祭が溜息をついて、肩の力を抜いた。
「あと、アスランに悪印象を持っていない感じでしたね。バレルノ大司祭がアスランに使節団を送るのを毎回止めると聞いていましたが…」
「アスラン人に遺恨はなく、アスラン王を敵視している、と言うべきでしょうか。なにより、信仰を制限されるのが許せないと主張されておりますし。
神殿は王国の中にあれど、王の領域にあらず。それがあの方の目指す大神殿の形です」
実際には、アスランが大神殿に何か言いだすとしたら、反アスラン主義に偏り切った時だけだろう。
本当に信仰を制限するなら、大神殿の再建は許されなかったし、左派の存在はなかった。
反アスラン主義を掲げた時点で踏み込まれて、首謀者は見せしめに処刑されている。
今回の聖女拝命の儀は、微妙なところと言えば微妙なところではある。
もし、聖女候補の中に王族の血を引く少女がいれば、許可は出なかった可能性は高い。
二度と聖女王を戴かず。その誓約を破りかねない行為だからだ。
誓約を破れば裏切りとみなされ、アスラン軍が報復のために進軍を開始する可能性がある。
ただ、現実問題として、今この国には王女しかいない。
バルト陛下と王妃には三人子供がいるけれど、全員娘で男子は生まれなかった。
そして、30年前のアスラン侵攻で、バルト陛下以外の血統は絶えている。
まだバルト陛下も若いし、これから男子が生まれる可能性もあるけれど…その気なら、もっと側妃を娶って子供を産ませていただろうしなあ。
それに対しては事情があって、寧ろよく三人も作ったもんだと思う。
長だとか王だとかって人間は、結婚も子作りも一種の政治だ。
うちの親父も母さんが大好きで、寧ろ母さんだけが好きな人だけれど、俺には三人、腹違いの弟がいて、弟の母親はみんな違う。
そういうことだ。
バルト陛下も、愛する人と王妃は違う。
王妃とは家族としての情と敬意をもって接しているし、子供たちは可愛がっている。
そういう人だからこそ、妻となる女性を子供を産むための道具とみなすことも、子供を国を継がせるだけの存在と思うこともできない。もうこれ以上子供を作る気はないだろう。
公式にはいないとされている陛下の長子が男子だったら、大波乱だっただろう。
それとも、男子だからとごり押しで、認めさせたんだろうか。
現実には娘なので、親しい人たちだけがその存在を知っているだけだけれど。
「おい!貴様冒険者ギルドにいた野蛮人じゃないか!女神の園にな…」
その声は、俺の意識を思考の泥沼から引っ張り上げつつ、止まる。
視線を上げると、冒険者ギルドにウィルさんと一緒に来ていた太ったおっさん。
それと、その前に仁王立ち、その喚き声を止めるジョーンズ司祭の背中が見えた。
「まあ、あなた。お客様にそのような言葉を使うなど、女神さまは許されませんよ?」
「う、ジョ、ジョーンズ司祭…しかしそやつはアスラン人で…」
左方のおっさんでも、ジョーンズ司祭の顔と名前は知っているみたいだ。
バレルノ大司祭の直弟子かつ腹心として、有名なのかな。
「ええ、それがどうしたのです?神の恩寵は人種などで左右されません。朝日が万人の上に降り注ぐように、神の愛は全ての国に、その国民に向けられるのです」
司祭らしい説教に、まわりの人々が感動した面持ちで頷く。
大司祭のお言葉に司祭の説教かあ…。
今、神殿に訪れている人たちは、素晴らしい経験として一生語り継ぐんだろう。そう思うと、おっさんの汚い声も許せる気がする。
そのおっさん神官は、反論を許されず、ひたすらに顔を赤くした。
まあ、あれだけバシッと言われたら、論破は難しいだろう。
何せ、おっさんの主張は感情論だ。しかも悪い方の。
確かに30年前大神殿を破壊したのはアスラン人だけれど、その時の苦労をおっさんが知っているわけではない。それにしては若すぎる。
そんな薄い感情論と、司祭の女神の愛を説く言葉じゃ、どうしたって後者に分がある。
「いいえ司祭様。女神の愛が無限でも、アスランの賊どもには向けられたりは致しません」
けれど、どうやら全員がそう思ったわけじゃないらしい。
背中しか見えないけれど…ジョーンズ司祭の顔に、ピキリとした何かが走るのがわかった気がした。
薔薇の茂みの方から颯爽と歩いてくるのは、冒険者ギルドで名乗りを上げた女の子。
あれから半日くらいたつけれど、その顔にはむしろ自信とかそういうものが上乗せされている気がする。
まあ、半日誉めまくられていれば、ドヤってしまうのも無理はない。
見た感じ、十代半ばの子供だし。そりゃあ少々木にも昇る。
「まあ、お嬢さんは女神さまの愛を疑われますの?」
いかにも悲しそうに答えるジョーンズ司祭の言葉は、頭の上から振り下ろす斧の一撃に見えた。この人、間違いなく叩き潰す気だ。
「わ、私は男です!」
うん、全然見えないけれど、男装しているのはわかる。
そしてそれを承知で、ジョーンズ司祭が喧嘩を買っているのも。
彼女が、この一見温厚そうな女性司祭が、喧嘩を高値で買い付けたことに気付いているかはわからないけど。
…うん。多分、わかってないな。
「あ、ファン、あのこ?」
「うん。エルディーンさんって言ったかな?」
「た、たしか、そうでした!」
ヤクモの質問に、俺とウィルさんが頷いた。
後ろにはやっぱり、例の護衛の騎士が従っている。
「うわー、あの人、騎士だね!ものっすごく全身全霊で騎士ですって主張してるねぃ!」
レイブラッドと呼ばれていた騎士を見ながら、ヤクモはなんだか楽しそうだ。
でも、他所様を珍しい動物見た時と同じ反応で見るのはやめような?
「クロムとは全然ちがうね!」
「当たり前だ。俺をあんな雑魚と一緒にするな。反吐が出る」
クロムは相変わらず俺の前。
ただ、腕を組んでいるからさっきより警戒レベルが下がっている。
言い換えれば、武器を持った騎士然とした男より、小柄な老人を警戒していたってことだな。
やっぱり、あの何とも言えない恐怖は、神の残滓なんだろうか。
なんか腑に落ちないけれど、そう考えるのが一番無理はないんだよなあ。
まあ、検証するためには、他の「ちょっと前に神様に直接神託を受けた人」に会うしかないわけで、それはだいぶん難しいけれど。
「まあ、男性でしたの。それは失礼いたしました。ごめんなさいね、可愛らしいお嬢さんにしか見えなかったものですから、きっと、身長もまだ伸びますし、逞しくなる日も来ますわ」
容赦なく連打を見舞うジョーンズ司祭。
クロムが面白そうに口の端を持ち上げ、何かをぽそっとユーシンに呟いた。
嫌な予感しかしねえ。
「なに!?お前は男なのか!」
「そ、そうだ!」
「女にしか見えん!声も女の声だ!お前、親や医者に男と騙されているのではないか!?」
「ユーシン、そこまで」
ほっとくと、服を毟って確かめかねない勢いに、さすがに止めに入る。
「クロム、ユーシンを煽らない」
「俺は、アイツ男なんだってよと言っただけだぞ」
ニヤニヤした顔で言われてもなあ。
「ファン、あいつ間違っているぞ!」
ユーシンが何故止める、という顔で言い募る。
「うーんと、さ。旅に出るのに、女性だと、ほら、危ないことが多いから、男だってことにして変装する人がいるんだよ。彼女もきっとそうだろう。それをばらしたら、良くない輩に目を付けられちゃうかもしれないだろ?」
「む…そうだったのか。それはすまなかった。しかし、一目でわかるのは変装としては失敗なのでは…」
ものすごく一理あるけど、彼女が男装しているのは多分、身の安全を考えて、とかじゃないだろうからなあ。
「アレはどうせ、物語の主人公にでもなりきってる痛いだけの小娘だろ。十年後には寝台の上で足をばたつかせるのがオチだ」
相変わらずスパッと切って捨ててるけど、クロム。小娘ってお前とそんなには年違わないんじゃない?
そういや、ウィルさんも小僧扱いしてたな。むしろ、ウィルさんはお前より年上なんじゃ?
「まあ、十年後まで、生き残れれば、だがな。来年にはどこぞの店で客を取らされて、ばたつく足をなくしていそうだが
ふう、と肩を竦めるクロムに、エルディーンさんはもう、言葉が出ない。
怒りが頂点を超えているというより、なんて言われているのか理解しきれていないんだろう。
おそらく、ここまで悪しざまに言われたのは彼女の人生で始めてだ。
下卑た揶揄いを受けてそれを颯爽と切り抜ける自分は想像したことがあるかもしれないが、その相手はいかにも山賊ですって見た目の連中で、周りの女性が目を奪われるほどの美形二人ではなかっただろう。
想定外すぎて脳みそがついて行ってないんだろうなあ。
えーと、その、うちのがすいません。
「エルディーン様」
その横に、かつんと足音を立てて彼女の騎士が立った。
「許可を。無礼者には相応の礼をもって対さねばなりません」
言いながら、剣の柄に手をかけている。あ、これはやばい。
「まあ、女神の庭で剣をお抜きになるの?」
ぴしゃり、とその手を撃つように、ジョーンズ司祭の声が響いた。
「それはさすがに、叱りますよ?」
「彼らも武器を所持しています」
レイブラッド卿は怯まない。
確かにクロムもユーシンも武器を持っている。と、いうか、アイツらがその気になれば素手で十分人を殺傷できる。
だけど、クロムは今まで一度も剣の柄に触れていない。
ユーシンの槍も鞘に収まったままだ。独特の振り方をすれば鞘は外れるようになっているけど、今日はちゃんと革紐で鞘は柄に括り付けられている。
武器の所持と、抜身の武器を構える。それはどう見ても大きな差だ。
『煽るなよ、クロム』
タタル語で釘を刺しておくと、つまらなさそうに頷いた。
ここは大神殿だ。しかも周りは一般人ばかり。
そこで剣を抜けば、間違いなく彼は罪に問われる。
厳重注意だけで済むかどうかはどこまでやってしまったかによるけれど、司祭に剣を向ければお咎めなしはないだろう。
それで彼が処罰を受けるのは自業自得ともいえるけれど、それにクロムとユーシンが巻き込まれるのは駄目だ。
この場にはあの太ったおっさんもいる。
絶対に自分たちだけの瑕疵にはさせないだろう。ここで武器を抜けば、全員面倒くさいことになる。
と言うか、俺と同い年くらいに見えるけど、どうしてそんなことが解んないんだ!
「確かに彼らは武器を所持しています。しかし、抜こうとしていない。無礼は代表して謝ります。申し訳ない。ですが、最初にこちらを賊呼ばわりしたのは、そちらですよ。それについてはきちんと謝罪してください」
「賊を賊と言って何が悪い!」
パニックから立ち直ったエルディーンさんが、顔を赤くして叫んだ。
その隣で、おっさん神官もぶんぶんと首を縦に振る。
「まあ…」
本気でキレそうな気配のジョーンズ司祭の肩を掴んで、少し下がっていてもらう。
すぐにその手の上に、司祭の手が置かれて少し握られたのは、なんていうか、激励だと思おう。うん。
「ウィルさん、ちょっと、ジョーンズ司祭を抑えといてください」
「は、はい!」
司祭の袖をつかんで、ウィルさんが少し後ろに下がる。
とりあえず、手を離してくれてよかった…
「まず、何を根拠に俺を賊と呼ぶのでしょうか?冒険者資格を得ている以上、犯罪者でないことは証明できていると言えます」
笊もいいところだけれど、冒険者として登録するためには、一応過去の犯罪歴も調べられる。
当然偽名を使っていたり、別の国で悪さをしていたり、捕まっていなければ調べようがないから、実際には犯罪歴を抱えた人はいるのだろうけれど。
俺に関しては全くのシロだと胸を張って言える。
「お、お前はアスラン人だからだ!野蛮な賊め!」
おっさんが援護射撃とばかりに喚く。まあ、想定内だ。
「アスラン人全体を賊、と称するということでしょうか?もう一度聞きます。何を根拠に?30年前の侵攻を根拠とするならば、アステリアも同時期にクトラ王国に侵攻しています。
つまり、侵攻を行うことが賊であるという根拠になっているのならば、アステリア人全体も賊とみなされる、と判断してよいでしょうか」
ぎゅむ、と不快な声を出して、おっさんは黙った。
だが、それでも男装の少女剣士は諦めない。「詭弁を!」と声を張り上げる。
アスランに親でも殺されたんだろうか。普通にありえそうだけれど。
「戦争と言う行為に、善も不善も、綺麗も汚いもありません。クトラの非武装民まで虐殺したアステリアの侵略行為を聖戦などと称し、それに対するアスランの報復行為を野蛮と評するのはあまりにも評価が偏っていて審議に値しないので、だからアステリアは賊ではないなどと言う証明はやめてください。時間の無駄です」
先に言われそうなことを封じておく。実際それを持ち出されると面倒だ。感情論になってしまう。
「第一、野蛮と言うのはアスランの何を指して野蛮なのでしょうか」
少し、相手の反応を待つ。
よく、アスランの野蛮人めってフレーズは聞くんだけれど、いったい何を指してそういわれるのか、アスラン人である俺からすると純粋に不思議だ。
頭のてっぺんだけ残した髪を逆立てて、上半身裸にトゲトゲ付き肩当…というのが良く言われるアスラン人の姿なんだけど、そんな恰好どこで売っているんだろう?もちろん、している人を見たこともない。
「野蛮人、とは未開の地であるとか、文化が発達せず、原始的な生活を行う人々の事であると定義してよろしいですか?」
「そうだ!アスラン人は羊を生きたまま貪り食い、皮を血まみれのまま纏うのだろう!」
絶対にそれはない。遊牧民にとって、羊は財産だ。
食べ方も、毛皮の活用方法も、世界一詳しいのはアスラン人だと断言できる。骨ですら無駄にはしない。
生で食うなんて不味い上に羊を苦しめるような食い方して、ちゃんと剥がず鞣さず、血まみれのまま着るなんて言う皮をダメにしかしないことを、アスラン人がするわけがない!
「貴方はそれを見たのですか?見たのであれば、いつ、どこで、どのように、そのような行為があったのかを説明してください。サンプルが100以上で、個人的な嗜虐趣味ではなく、そうした習慣があると考えるに足りえます」
「な、み、皆、そう言っている!」
「皆、などと対象を曖昧にしないでください。皆、と言うのは具体的にどなたですか。その人が、いつ、どこで、どのように、そのような行為を目撃したのですか」
我ながら、ちょっと大人げないな。子供相手に。
だけど、なあ。
母国を馬鹿にされて、子供のした事だと大目に見るほど、俺は無責任な人間でありたくない。
「アイツ、アホだな。ファンを怒らせたぞ」
「あ、やっぱりあれ、怒ってるんだ?」
「羊を無駄に殺してるって言われたようなもんだろ。アスラン人を煽るなら、お前の羊はマズいって言うのが一番手っ取り早いからな」
クロムとヤクモがひそひそと話しているのが聞こえる。いや、羊にだけ怒っているわけじゃないけどな?
エルディーンさんは答えない。
そりゃあ、まあ、実際に見たことがある奴なんていないからな。
そんな馬鹿なことをするアスラン人がいるわけないんだから。
まあ、ちょっと頭の病気とかで、違う世界を見ている人がやってしまう可能性はあるけれど、それはアスラン人の習俗と言えない。個人の狂気だ。
「では、俺からアスランが野蛮ではないことを説明します。
まず、アスランの王都…
百万の人口を支える都市機能を有している国が、未開でしょうか」
周りの聴衆が、ざわりと揺れた。
参考に言えば、アステリア聖王国の王都イシリスの人口は約十万弱…もっと少ないかな?
アステリア全土で百二十万くらいだろう。つまり、大都だけでアステリアの総人口の八割以上が暮らしているわけだ。
総人口になると、アスランは大体五千万くらい。もちろん、領土の広さも全く違うし、アスランが割と大都に人口が集中しているってのもある。
「文化的な、といえば、大都には王立大図書館をはじめとして、五ヶ所の図書館が存在します。
すべて国民は自由に閲覧することができ、常に読むための座席は不足しています。
これは、識字率の高さを証明することにもなるでしょう」
大図書館では少し前までは隠れて夜通し読書することもできたんだけど、とある少年が持ち込んだ食糧で三日間籠城して大問題になったため、現在は夜警が強化されて泊まり込みができなくなっている。
ええと、その節はものすごく申し訳ございませんでした…。『南方の生物全集』全十巻が面白すぎたのがいけないんです…。
「その他にも大都だけでも様々な文化施設がありますが、まずはこの一例をもって根拠とします」
「それこそ出鱈目じゃないのか!」
反撃だ、とばかりにエルディーンさんは叫んだが、本当なんだよなあ。
その証拠に、聴衆から「そうそう、すっげえ人なんだ!」とか「大バザールっていってな、大神殿よりもでかい建物に市場があって、入り切れない店が街みたいになってるんだ!」と言った、実際に大都を訪れた人の感想が聞こえてくる。
何せ、一応アスランとアステリアは隣国同士。こうやって人が集まっていれば、アスランを訪れたことがある人の一人や二人はいるのだ。
「さて、もう一度確認します。貴方は何をもってアスラン王国を野蛮だと評するのでしょうか。根拠もなく言っていたならば、それは誹謗中傷です。謝罪と認識の訂正を要求します」
エルディーンさんはうつむいて答えない。かわりに、ぱちぱちと拍手の音が聞こえた。
その音に振り向くと、ジョーンズ司祭が満面の笑みで拍手をしている。
司祭につられたように、聴衆からも拍手が起こった。
拍手に混じって、「そうだー、あやまれー」とか「貴族だからっていばるな~」とかいう声も聞こえる。
「黙れ、黙れ!」
拍手と野次が止んだ。
涙目になりながらこちらを睨みつけるエルディーンさんに、さすがにちょっと悪かったかなとは思う。
ただ、お付きの騎士様はそんなお姫様を宥めるのに必死で、剣からは完全に手を離していた。まずは作戦成功だろう。
「久しぶりに見たな。お前の理屈煽り」
「煽ったつもりはないんだけどな」
「じゃあ、ありゃなんだっていうんだ」
くっくっくっと猫のように笑うクロムは、とても楽しそうだ。
その横でユーシンがちょっとうとうとしているように見えるのは、気のせいだよ、なあ?もう、俺の話聞くと眠くなっちゃうの?
「おい、さっさと謝れよ。うちの
「謝らない!アスラン人は悪魔だ!」
手を振り回し、彼女は叫ぶ。
うーん、引っ込みつかなくなっちゃったかなあ。そういう時こそ、お付きの騎士がなんとか諌めるもんだと思うんだけれど。
うちのクロムなら…俺に当て身を食わらして物理的に大人しくさせた後、何もなかったかのように引き摺って帰りそうだ。
あれ?それって諌めてる、って言っていいのか?
「30年前、お前たちが何をしたのか…!知らないとは言わせない!」
「アステリアへの侵攻の事なら、先ほど言いましたが」
「違う!」
腹の底から絞り出すように、吠える。
「30年前、お前たちアスラン人は母の祖国フェリニス王国を蹂躙し、今もまだ、属国として支配下に置いている…!」
ああ、そっちか。
30年前、アステリア侵攻は言うなれば本筋から離れた一戦で、大軍を動かして国境を越えたアスラン軍の主目的は、アステリアの北、フェリニス王国の征服だった。
征服と言っても、全土を呑み込んでアスランの領土にしたわけじゃない。
奪い取った南部に南フェリニス王国を名乗らせ、属国にしたんだ。
征服とどちらがマシか、と言えば、どちらもマシではない、としか言えないけれど。
南フェリニス王となったのはフェリニス王の甥にあたり、戦争が始まる前からアスランに内通していた人物だ。現在は彼の息子が南フェリニス王となっている。
北側のフェリニス王国はアスランの侵攻に耐え、独立を守った。
実際には、最初からアスランの攻撃対象は南半分であり、南北を別ける大河を渡る気はなかったのは、今では周知の事実だ。
先代アスラン王は渡河を厳禁していた。だがそれを、当時のフェリニス王は知らなかった。
アスラン軍25万を退け、独立を守った。
それはフェリニス王国の輝かしい誇り。
その誇りこそ、アスランが用いた毒なのだけれど。
フェリニス北部は貧しい。
寒冷地帯である上に、国土のほとんどが開墾不可能な森林におおわれ、少ない港も冬は凍り付いて雪の中に眠る。
南も決して豊かな土地ではないけれど、開墾して開かれた農地は作物を育て、家畜を養うことができる。
そして、アスランの属国となってからは、豊富な木材を輸出することでぐんと豊かになった。
アスランは交易の国だ。
盛んに南フェリニスの木材を買い求め、アスラン国内へ流通させる。
独特の風合いと機能美を持つフェリニスの木工家具に高値を付け、他国へ輸出する。
それを公然と行うことで、南フェリニスの木材をアスラン王国が保証すると宣言したわけだ。
さらに鉄鉱石の鉱山が開発され鉱石の輸出も始まると、一気にその国力は上を向き、今では北部のフェリニス王国と南部の南フェリニス王国でははっきりと貧富の差がある。
その豊かさもまた、アスランの毒だ。
フェリニス王国からすれば、南半分は憎い侵略者によって征服され、属国とされるという屈辱的な扱いを受けている同胞だ。
何としても奪い返し、統一フェリニス王国として旗を立てたい。
それはもう、悲願と言うべきもの。
だけど、南フェリニスからすれば、貧しい北に『奪還』されるのは何としても避けたい。阻止したい。
属国になってから毎年生活は楽になり、今では北方交易の中心地の一つとして大いに栄えている。
賊がいない国、とはよく言われる言葉だ。
常に鉱山や木工所で人手を求めているため、食うに困って賊に身を落とす人がいない。
むしろ、農夫として生きるより炭鉱夫や樵に職人、それらの商品を扱う商人になった方が儲かるからと、農民が減っている事が近年の問題点になっているくらいだ。
減ってしまった農夫を補うため、春になると北フェリニス王国からたくさんの出稼ぎがやってきて、農作業をして秋の終わりに北へ戻る、と言う流れが近年できあがっている。
そうして出稼ぎで豊かな南を見た北部の人々は、統一さえすれば自分たちもあの富を手に入れられるのだと思い、貧しい北の民を見た南部の住民は、絶対にああはなりたくないと眉を顰める。
その侮蔑や貧しさへの恐怖は、当然北部の人々にも伝わる。
そんな目で見られたら、面白くはない。
何故、戦って守り抜いた自分たち勝者は貧しく、裏切り者と敗者が豊かなのか。
それはおかしい。間違っている。南の富は、本来フェリニス王国のもののはずだ。
ここまでくれば、もう密かに手を組んでアスランに対抗するなんてことは難しいだろう。
とは言え、統一派が全くいないわけじゃなくて、火種があれば燃える可能性はあるんだけれど。今はまだ、少数派だ。
むしろ、アスラン国内から南フェリニスを優遇しすぎだ、アスランの領土に組み込むべきだという声が大きい。
北部のフェリニス王国は、恐らくこれからも貧しいままだろう。
バレルノ大司祭は、フェリニス王国からの干渉を気にしていたけれど、かの国にそれほどの力はもうない。
アステリアに出兵した場合、楽勝かつ完勝で終わらせなくては自滅する。
最大の好機だった20年前の内乱時にさえ手を出せなかったのだし。
南を真似て木材の輸出を試みても、買う国がない。
アスランに逆らって購入するより、南フェリニスの木材を買ってご機嫌を取る方が得策だからだ。
質自体は北フェリニスの木材の方が良いけれど、どれだけ貴重な商品であっても買うものがいなければどうにもならない。
アスランの影響力が大陸交易にある限り、フェリニス王国の貧しさは見せしめとして晒され続ける。アスランへ逆らったものの末路として。
そして、南フェリニスは飼い殺される。
鉄鉱石を採掘しても、それを鉄材へと加工する技術や施設を、アスランは南フェリニスへ与えていない。
自国で加工ができない以上、アスランが用意した流通網に乗せなければ、鉄鉱石もただの石ころなのだから。
逆らえば北部と同じ貧しい暮らしへ戻るかと、常に脅されているようなものだ。
うん。やっぱり、アスランに対する評価って、「野蛮」じゃなくて「悪辣」が正しいよなあ。
俺の内心の結論が聞こえたわけはないのだけれど、少女は大きく頷いて、頭を振った。
大袈裟な、芝居がかった動作。
けれど、彼女は演技をしているつもりは毛頭ないだろう。
ただ、自分が主役になっていると感じ、「そうなった時」を思い描いて、いろいろフフフと寝具の中で考えたように…身体が動いちゃっているんじゃないかなー。
思い返すと、「いっそ殺せ」ってなるような。
「私は、私は…必ずお前たちアスラン人の手から、南フェリニスを取り戻す!」
涙を大きな目に浮かべ、声を震わせながら、夕日に赤く染まった少女は宣言した。
その宣言は、フェリニス王国の女神神殿で行われていたら、もう少し反応は違っただろう。
けれど、なにしろここはアステリア。
フェリニスのことを言われてもピンとくる人の方が少ない。
だけれど、少女の魂を込めたような宣言は、人々のざわめきを消し去り、彼女に注目させることに成功させた。
その注目にききりと眉を上げ、唇を嚙みしめると、彼女はグローブを取り去った。
綺麗な手だ。爪も割れておらず、薄紅色に磨かれている。
「この、灯の刻印にかけて!」
露わになった素手を、夕日の中に掲げる。
高々を掲げられた、その右手の甲に、蝋燭の炎のような形の文様があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます