第64話 仲良きことは美しきかな
「この馬鹿!胸見んの禁止!」
すかさずかなめがこぶしで誠の頭を殴りつける。頭を押さえる誠を見ながら、茜は心の奥から楽しそうな笑みを浮かべた。
「ふふふ、誠さんとかなめさん。本当に仲がよろしいんですね」
微笑む茜に誠は思わずかなめを見た。一気にかなめの頬が赤らむ。
「お……おうよ。こいつはアタシの部下で『ペット』だからな」
そう言うとかなめは誠の首根っこをつかむとヘッドロックをした。
「苦しいですよ、西園寺さん!」
「いいじゃねえか、ほらアタシの胸が頬に当たってるぞ。あ?うれしいだろ?」
誠は幸せなのか不幸せなのかわからないと言うような笑みを浮かべる。
「本当にお似合いですわよ」
茜は笑顔を振りまく。しかし、その視線がかなめ達の後ろに立つ二つの人影をも見つめているものだと言うことはかなめも誠も知らなかった。
「ふうん、そう。かなめと誠君がマブでラブラブねえ」
「まあ仕方ないんではないか?神前は胸が大きい女が好きなようだからな」
誠はかなめの腕からすり抜け、振り向いた。そこにはアメリアとカウラが腕組みをして立っている。
「おお、いたのか。聞かれちまったら仕方がねえな。そう言うわけだ」
「西園寺さん!」
かなめはサングラスを外してアメリアとカウラをにらみつける。誠は半泣きの状態でおろおろとしていた。漂う殺気に誠は少しずつ後ずさりする。一ヶ月間、彼女達の部下をやってきたのは伊達ではない。
「どうされましたの?誠さん」
不思議そうな視線が茜から誠に注がれている。
「おい、神前!何とか言えよ!」
誠のシャツの襟首をつかんでかなめが迫る。
「力で脅すなんて下品ね」
「西園寺の行動が短絡的なのはいつものことだ」
かなめを責めているはずの言葉だが、アメリアとカウラの視線は冷や汗を拭っている誠に向けられている。茜は落ち着いた表情で誠の肩に手を当てる。
「お父様がおっしゃっていた通りですわね。あの誠さんがモテモテだって……」
「誰がこの馬鹿に惚れてるって!」
そう言うとかなめは誠に荷物を投げつける。
「茜さん。席は用意してあるから、誠君は補助席ね」
「クラウゼ少佐、お気を使わせてしまったみたいで」
茜はそう言うと歩き始めたアメリアとカウラの後ろに続いた。
「それ持ってもっときびきび動け!行くぞ神前」
そう言うとかなめ達は誠を置いてバスに向かって早足で歩き出した。足元に転がるかなめとアメリアのバッグが置き去りにされている。
「まったく、いつもこうだ」
そう愚痴りながら誠は二人の分の荷物も一緒に担いで駐車場の一番奥に止めてあるバスへ急いだ。
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