第21話 作戦
「うおおおおお!!」
パラパラとページをめくるバニロ。
「そんなに気合いを入れて読む物でもないかと、初歩中の初歩、召喚獣図鑑の第一巻ですよ? さあ気張らず、音読してください」
マリアが冷ややかな視線で先を促す。
「……はい、ええ、吸血鬼などの
「いいですよ、その調子です」
一方その頃、リルカ達は王都の路地裏に避難していた。
「はぁはぁ……ここまでくれば大丈夫ね……、今日は宿を取りましょう。サタンにバレないよう安宿をね」
そのまま路地裏の小汚い宿に入る二人。
「……いらっしゃい」
「二人よ、メタリア杯の日まで泊めて頂戴」
「ああ、あのサモンバトルの大会の……参加者かい?」
リルカの腰のホルスターを見やる店主。
「ええ、まあ、そんなところよ」
「はいよ、部屋の鍵だ。といっても扉はぼろくて無理矢理開ければ開いちまうがな」
「構わないわ」
そう言って奥の部屋へと通される。
そこは外観とは違って意外にも整っていた。
「さて、早速始めるわよ」
「え? 何をです?」
フィルが訊ねる。
「
「あの……疑問だったんですけど、本当に宝物庫に
「
「どういう意味です?」
「今のサタンはお父様の中で
その言葉を聞いてフィルは合点がいったように手を打った。
「あ!
「そう、
そうこうしている間に
「出来たわ。宝物庫までのルートよ」
「うわ、複雑ですね……」
「そりゃそうよ。これは召喚獣ミノタウロスが作り出した〈
「〈
「そう、ミノタウロスとのサモンバトルに勝たないと出られない開かずの部屋となっているわ」
「……勝てるんですか?」
「昔、攻略させられた事があるわ、そこは大丈夫……ただ問題なのは普通の警備も居るって事」
「それのなにが問題なんです?」
「私はあまり長期戦が出来ないのは分かってるわね? だから、複数人の召喚術師に囲まれたらアウトって訳。そうじゃなくても、無罪の警備員に召喚獣を向けるのは気が引けるわ」
「じゃあ、どうするんです?」
フィルが尋ねる。
「警備が手薄になる大会当日を狙う」
「どうして大会当日だと宝物庫の警備が手薄になるって分かるんです?」
「フィル、私を誰だと思ってるの? この城の姫よ。前に大会があった時の警備体制ぐらい把握してるわ。大会の日は、観客の安全を確保するために城の警備を総動員するの。だから――」
「その時がチャンス!」
「ええ、そういう事よ……ただもう一つ問題が……」
不安そうになるリルカ。釣られて不安気になるフィル。
「……なんです?」
「大会の参加者には
とリルカは言った。その一言だけ。フィルはしばし疑問に思い、そして合点がいった。
「ああ! リルカさんはバニロさんの
「……ええ、そうよ、あいつ一人、サタンの前に出すのは危険だわ」
「サタンの前?」
「今、あいつはお父様、つまり王様の姿をしている。その立場上、大会には出席しなければならないの」
「なるほど」
「それに毎年、賞品の受け渡しは王が直々に行う事になっているわ」
「サタンが目の前に来るって事ですか? でも流石に大衆の前じゃ素性を自分からバラしたりしないんじゃ……?」
ふぅ……とリルカはため息を吐く。
「それは希望的観測だわ。サタンは狡猾よ、どんな卑怯な手を使ってくるか分からない。恐らくあの優勝賞品の
そこでなぜかふふっとフィルが笑った。
「? どうして笑うのよフィル。私、何か変な事言った?」
「いえ、リルカさん、バニロさんが優勝するって信じてるんだなって思って」
リルカは少し顔を赤くして、そっぽを向きながら。
「と、当然よ! 私の一番弟子なんだから!」
と言った。
「分かりました。じゃあミノタウロスは私とユニコーンが倒します。それで宝物庫から
「フィル!? 無茶よ! 貴女は正式な召喚術師じゃないわ。禁忌が発動しないから、貴女が直接狙われる可能性だってあるのよ!」
「大丈夫です。ユニコーンが守ってくれますから」
「……本気、なの?」
そこにはすがりつくような表情があった。リルカはフィルに甘えていいか迷っている。
「はい! 絶対大丈夫です!」
「……分かったわ、でも作戦決行まで三日あるわ。その間に対ミノタウロス用の作戦を教えてあげる。いいわね?」
リルカが自分を信用してくれた事を喜ぶフィル。
「はい! お願いします!」
こうして打倒サタンへの作戦会議が始まったのだった。
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