第31話
「うん。分かった。そうして行くわ。なんか変な想像とか決めつけ持ってんのが一番だるいしね」
「うん。でも、あんまり引かせないようにね?なんかエロい言葉言わせたいみたいな男昔いたんだけど本当引いたし気持ち悪かったから。そんな事で喜んで興奮してんだ?って思わせないようにね。聞くのはいいけど」
ひいちゃんのアドバイスは正確で完全に同意だったので何度も頷いた。
「うんうん。分かってる。あれまじで引くもんね。は?なにコイツってなるし」
「それね。でも、そんなんで喜べるって能天気でいいよね。私もそんな単純に生きたかったなぁ…。彼氏は人として好きな所があるだけだからそんな単純な話じゃないし、長くいて先を考えるとねぇ…」
「んーまぁ、全く頭の作りが違う生き物だからしょうがないよ。そこまで求めちゃダメだよひいちゃん。もうそういう種族と思ってればそんな事思わなくなるから考えちゃダメ」
「うん。分かったそうする」
私はひいちゃんを励ましてとりあえず今後の目標が決まった。
私は奈々を辱しめて劇萎え引き案件にならないようにヤるのだ。女の子ってどうやったらいいのか分からないけど奈々に引かれないように聞きながら進めて行こう。だがもし、間違えたくないけど万が一ドン引きみたいな事をしてしまった場合はもう土下座か切腹かサンドバッグになろう。
よし!私はやってやるぞ!
私は改めて気合いを入れ直して仕事に取り組んだ。
しかし、それからの日々は何かとヤる事について考えてしまって奈々と会ったらどうしようか悩んだ。
だってまずあんな小さい奈々とヤるって…………どっから触ったらいいの?引き案件起こしそうで怖いから触りたくないけど触んないとできないし、そもそも奈々は私とヤりたいとか思うかな?私は身長百七十越えの巨体女だよ?しかも筋肉質だから身体硬いし胸板厚いとか思われたらどうしよう…一応脂肪の方の胸ですって言ってみる?…ていうか、どうやったらいいんだろう本当に……。男だったらあぁ、あんたこうしたいの?はいはいって適当に合わせてヤってたんだけど女だしなぁ……。玩具とか使うのかな?でも、玩具とか使った事ないし、ヤってる時とかめんどくさくて早くしてよってキレる時もあったくらいだし。…………あぁ、どうしよう。ていうか、こんなんでできるの私…………?
考えに考えて落ち込む私はひいちゃんにロゼを奢ったり泳いだり走ったりしていたら週末がやってきた。
今日は奈々と会う日だ。前行けなかったダーツに行って今日は奈々の家に泊まる流れになっているが何かしら情報を得たいところ…。でも、大丈夫かな…。
私は奈々との待ち合わせ場所に向かうと奈々と合流してご飯を食べた。隣にいる奈々は相変わらず小さくて可愛かった。
「あっちゃん今日ダーツで私に勝ったら何でもしてあげるね?」
ご飯を食べてお酒を飲みながら奈々は可愛らしく話しかけてきた。私はもうそれだけで素敵って和んでいた。奈々は喋ってるだけでなんて可愛いんでしょうか……。私隣にいていいんでしょうか……。
「え~、絶対無理じゃん。頑張りたいけど私が一桁マンなの忘れたの奈々?」
「ん~、じゃあ、ブルに当たったらにしよ?ブルに当たったらあっちゃんにお祝いしたい。ダメ?」
「うん、いいよ!私頑張るわ!でも当たっかなぁ~…。自信ねぇ~」
あんなド下手じゃ無理な予感しかしない。ていうか、奈々優しくて好き。できないと思うけど気を使ってくれた奈々のためにも頑張らないと。奈々は笑顔で言った。
「大丈夫だよ。絶対当たるから。私今日教えてあげるね?」
「えー、奈々ありがとう。好き。死ぬ気でやります」
「うん……」
ちょっと視線を逸らした奈々はいつも通り可愛かった。照れてて和むがふっ、照れてんのか?とか言ったら可哀想だから笑顔で黙っておいた。これ以上照れさせたら本当に困らせちゃうから気を付けないと。
「じゃあ、私も今日奈々にお祝いしてあげるね。私負けると思うからなんでも言ってね?」
「いつもあっちゃんいろいろしてくれるから私はいいよ」
遠慮をする奈々に私は笑って言った。
私はまだまだ取り返さないとならない物が沢山あるゴミクズ野郎だから言いなりになりたいくらいなのだ。
「え、ダメだよ。奈々にはいっぱいしてあげたいの。だから何か考えといてね?でも、世界一周とかはやめてね?」
「うん。ありがとう」
「よーし。なんかやる気がみなぎってきたわ私…!」
ヤる件もあるがまずはこっちだ。ダーツは久々で楽しみだし奈々も楽しみにしていたからまずはダーツを純粋に楽しみたい。奈々はきっと百発百中だろうしうきうきだなぁと思っていたら隣にいた奈々がぴったり密着してきた。
え?と笑顔で驚いていたら奈々は照れながら困り顔をしていた。
「…………」
「…………」
え、な、何を言ったらいいんだ…………?!
下を向いてしまった奈々は照れていて何も言わない。だが、奈々がこういう事してくれたんなら私もしないとダメだよ!しかし、どうしたらいいの恋愛の神様!私は秒速で悩んだ。
今はやらなきゃならん時。
だけど下手に手を出したら衝突事故。過失致死で私の一発終了。十ゼロで私が悪いのだけは避けねば……!
ここは、ここはそうだな…………本当に軽く腰を引き寄せる?この距離ならありよりのありだけどそれで飯とか食ったりするのはウザいか。いや、待てよ?それなら…………。
私は思い付いて即行動した。
「奈々明日は予定ないんだっけ?」
私は奈々の腰に恐る恐る腕を回しながら手を軽く握った。なるべく自然に見えるように笑顔で。これなら腰にはそこまで触れてないし奈々は手を繋ぐの好きって言ってたから大丈夫だと思いたい……!私の一方的な希望!許可無しだからダメだったらすぐ離すし。あの恐怖の動悸を感じていたら奈々は私の手を握り返して笑ってくれた。
「うん。だから明日はゆっくりしよう?」
「そうだね。あ、私またボニーピンクのライブ見たい」
「うん。じゃあ、一緒に見よう?」
「やった。楽しみ~」
自然に会話をしながら衝突事故を避けれたのを悟る。よし、いい感じだよ私。奈々はお皿を持ったりする時には離すけどまた手を軽く握ってくれるし嫌そうじゃない。さっきより笑みが深まっている感じだから嬉しがっているような気がする。
私は出だしは順調だと一安心した。
この調子で行ってまずはスキンシップを取って行きたいところだ。よし!頑張ろう!
私はそれからいい感じで奈々との会話を楽しんでダーツバーに向かった。そして奈々とダーツを始めるも私はやはりド下手だった。
「あぁー!もうまた一?なんで?なんでブルに当たんないの?腹立つー」
私は何本か投げてるのに全くブルにかすりもしていなかった。ていうか、ブルを狙っているから逆に一桁ばかりで奈々の圧勝だ。奈々は以前のように正確に狙った所を当てていて凄いとしか言いようがない。
「あっちゃん動きすぎだからじゃない?」
「え?そんな動いてる?」
「うん。あんまり動くと重心がぶれちゃって上手く飛ばないよ」
奈々はそう言いながら涼しい顔をしてトリプル三連続だ。かっこいいなぁと思っていたら奈々はダーツを抜いて私の元に帰ってきた。
次は私の番だけど奈々が気を使ってくれたからどうにかブルに当てたいところ。
私はダーツを持って構えた。できれば奈々のアドバイス通りにしたいがあんまり分からない。少し悩んでいたら奈々は私の腕に触ってきた。
「あっちゃんまた肘と肩がすごい動いてる。ていうか、全身が動いてるよ」
「え?そんな動いてる?」
私は素人で適当にやっていたからあまり分からないが奈々は私の肩や腕を触りながら頷いた。
「うん。ダーツ投げる時は動いちゃダメ。肘と肩は特にそんなに動かしちゃダメだよ。ボール投げるみたいに全身使って力一杯投げちゃダメなの。ダーツは投げる時に力を入れ過ぎないでさって投げればいいから」
「そうなんだ。さすが奈々」
私の腕を動かして教えてくれる奈々に関心する。確かに奈々は華麗に投げていると言うか所作が綺麗だ。それに比べたら私はかなり力を込めて見苦しい投げ方をしていただろう。私は体の力を抜いた。そして動かないようにした。
「あと手首にもそんなに力は入れちゃダメ。それで投げる瞬間にぱって指を同時に離さないと動いちゃうから気をつけて」
「うん!分かった」
「うん。私難しい事言ってるけど感覚的には投げるって言うか飛ばす?みたいにやってみたらいいかも」
「飛ばすかぁ……。よし!ありがと奈々!あとは私に任せろ!」
「うん。頑張ってあっちゃん」
とりあえず力を抜いて動かないように狙って振れば良いんだな。私は奈々のアドバイスを頭で反芻して改めて狙いを定めた。
私の狙いは真ん中のブルのみ。それ以外は眼中にない。
奈々がアドバイスしてくれたし奈々がわざわざあんな事言ってくれたんだから当てないと帰れないよ。
私は力を抜いて奈々のアドバイス通りに力を入れすぎないようにさっと投げた。
するとど真ん中ブルに命中して時が止まったかのように驚いた。
「えっ?!!ヤバいブル当たった!!!奈々ありがとう超嬉しい!!えー!?私始めてだよ!!泣きそう!!」
「あっちゃんよかったね」
「うん!奈々ありがとう!大好き!愛してる!本当嬉しすぎてヤバい~!」
私は初のブルに大興奮で跳び跳ねながら奈々の手を握ってしっかり感謝を伝えた。ヤバいヤバいヤバい!奇跡起きたよ!奈々にやっと良いとこ見せられた!もうこれっきりの二度とできない奇跡だけど!嬉しくて踊りだしそうになっていた私は奈々の様子に我に返った。奈々は何か赤くなって本当に照れて困っていた。
私はそれで血の気が引いた。奈々は可愛いけど奇跡起こして即墓穴って頭弱いの私?プラマイゼロ……。
「……あ、奈々ごめんうるさかったね私。本当ごめん気を付ける」
「ううん…平気だよ…」
「私全部投げちゃうからちょっと待っててね!」
「うん……」
奈々が恥ずかしくて本当に困っているので私は残りをさっさと投げて私の番を終わりにした。そしてどうにか奈々が恥ずかしくないような空気を作る事にした。奈々は照れても可愛いけど奈々を辱しめてはダメ。奈々は尊い生き物。私は笑顔で話しかけた。
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