第10話
「あっちゃんはすごいね。あっちゃんって本当にぶれないって言うか自分をしっかり持ってるよね。しっかりし過ぎてて私がなんでダメだったのかあっちゃんといるとよく分かる。相手もよくなかったけど私にもいっぱいダメなとこあったなって」
「んー…まぁ、人生そんなもんじゃん?私あの時ダメだったなぁって誰かと接して気づいて反省して次に生かすの連続だし。上手くできてるよね人生って」
とてもよく分かる言い分は辛い時の思い出が強いけどちゃんと自分の糧になるのがよくできてるなと生きてて思う。本当生きるのって大変だよなぁ、と呑気に思っていたら奈々は嬉しそうに言った。
「うん。分かる。私あっちゃんのおかげでいっぱい次に生かせたし」
「え~?私なんもしてないよ?この前なんか酒飲ませるだけ飲ませて吐かせちゃったし…。本当にこないだはごめんね奈々。セーブさせなかったのを反省しておりまする」
「それは私のせいだからいいよ。こないだは私の方が迷惑かけてたし……。あれ絶対あっちゃんに引かれたと思ってた……本当にごめんね?」
あれは私のせいでもあったのに奈々に気まずそうな顔をさせてしまった。引くって相当頭がファンタジーか自分に酔ってるようなやつに会わない限りしない。荒れてる時期のあれはしょうがないのだ。
「もー謝んないで。引かないし大丈夫だから。私奈々の事一生嫌いにならないから」
「あんな吐いてたのに……?」
「うん。私も一時ずっとマーライオンだったし、奈々のさぁ、人生頑張ってる感じが私は本当に共感できて好きだから」
「……ありがとう……」
「え、ちょっと急に照れないでよ?」
突然照れだした奈々に驚いていたら奈々は小さく言った。
「だって、あっちゃんよく好きとか言うから……」
「……あのさぁ、大変恐縮なんですが……あ、あと自意識過剰でキモく感じさせたら申し訳無いんだけど聞いてもいい?」
「…うん。なに?」
「奈々は私の事そんなに好きでいてくれてるの………ですか?」
語尾がおかしくなってしまったが奈々の反応は私からしたら疑問と困惑が沸く。こんなに意識されると戸惑うと言うか……。これが男だったらもうヤる気になってんの?数回しか会ってねぇし外見しか見てねぇのに猿かよってなるか、ちゃんと手順踏んで言う事言わないと何もできないよーってなるけど、女だからね?女の子になると先を考えて本当に幸せを願う子が多いから不安になっちゃうよ。自分もそうだけどさ、マジで幸せ考えてる女子ってヤり目じゃないし、ヤる事が一番幸せとかじゃないからな。ヤるのは別にいいんだけどヤったからにはその先を求めるし結果が伴わないと意味がないのよ。性欲なんか自分でも満たせるから。
「……うん。大好きだよ……。あっちゃんといると嬉しいし、……いつも嬉しくて幸せだなって思うんだ…」
「あぁ…………そっか……そう、…なんだ…」
照れながら言う奈々の予想外な返事と可愛いさに後ろめたい気持ちになる。そこまで好きとか思われるほど恋愛上手く行ってなかったからもはや恐怖の対象…。震えるよ奈々…。そして本当にごめん奈々、私恋愛不適合者なの……。何回も言えないから心で言う。
「…あの、あっちゃん?その、ごめんね?あっちゃんは私に気持ちとかないのにあんまり意識されると困るよね?……次からは気を付けるから……本当にごめん。一々反応されたらキモいよね?」
私が笑顔なのに変な間を開けて返答したせいで奈々に違う方向で気を使わせてしまった。今私のせいで傷つかせたかもしれない。それは何よりもダメだよ。女子供は優しく扱わないとダメ絶対。この世で一番尊い生き物。私は真顔で言った。
「いや、全然キモくないし可愛いから!今くそ可愛いと思っただけだから勘違いさせてごめん!」
「え?……う、うん……」
「奈々は可愛いからそんな気使わなくていいからね?!私は奈々が好きだから大丈夫!安心して!」
「……うん……ありがとう……」
私は勘違いさせたらいけないから目をしっかり見ていたらまた照れていたので内心ほっとした。本当に可愛い奈々にショックを与えなくて良かった。ていうか奈々は恥ずかしいのか目線まで逸らしてきたので可愛いと思うしかなかった。
これ男の時はなに照れてんだコイツめんどくせぇ、くらいにしか思わなかったのに女の子だと全然違う。
なんだろう、これはマジックなの?男相手の時との温度差が凄い。私は笑った。
「奈々照れ顔窒息しそうなくらい可愛いいんだけど~。すごい癒し。素敵」
「普通に照れるからやめてあっちゃん」
「はいー。分かりやした」
やー、可愛い~。こういう可愛い生物見てると心が安定する。奈々ってずっと可愛いと思ってたけどいいなぁこんなに可愛くて。照れるとかほぼなかったからどんな感覚だったか忘れたけどこういうのできた方が恋愛は上手くいくよ。私全然できてなかったから求める反応返せなくて空気どよめいてめんどくさかったもん。
「あ、あとさ、あっちゃん…」
「んー?なんぞ?」
可愛い可愛いと思ってニタニタしていたら奈々は私を驚かせてきた。
「あのね、あの、あっちゃんが良かったらね、お試しでもいいからとりあえず付き合っても私は全然いいからね」
「……え?いや、それは……ダメだよ絶対……!」
和んでいた心が驚いて乱れてくる。
とりあえず付き合うってのはやった事あるし分かるよ?でも、相手はいい年のおなごよ?とりあえず付き合って時間無駄にさせたらどうするの?金はどうにかなるけど時間は返ってこないんだよ?ここで分かった、とりあえず付き合うとか罪重過ぎるだろ。幸せ本気で考えてる人にそんな失礼な事できないよ!男だったらそこまで考えてないやつ多いからとりあえずでも行ってたけど奈々は絶対ダメ!そんな気持ちで奈々と付き合おうとするやつは私のこの立派な肩でタックルを決める!
「それ絶対ダメ奈々!とりあえず付き合うとか私はできないから無理!好きだけどごめん!許して!」
「え、うん……分かった」
はっきり断ると奈々は驚いてちょっと引いていたが私は奈々の未来のために止まらなかった。
「とりあえずとか絶対ダメだよ奈々?!奈々は幸せになんないといけないのに確信持って時間使わないとダメ絶対!」
「でも……確信持ってるから、言ってみたんだけど……」
「え……………………え、いや、あの、…あのですね、なんか嫌とかそういう意味じゃないんだけど……、私本当に恋愛向いてないからね……。付き合っても全く幸せになれてないし…、上手くいってないし…」
奈々の言葉に白目向きそうになるくらいの衝撃を受けながら私はどうにか言葉を発した。
そこまで期待されると自分がダメなの分かってるから干からびそう……。てか、怖いからやめて……。まともな人幸せにしてあげて奈々を。
「でも、付き合ってた時興味ないみたいな態度とか普通にされてたからあっちゃんといるといつも嬉しいし楽しいよ。あっちゃんすごく優しいし」
「だって女の子だし奈々は好きだから優しくするよ。幸せになってほしいし人生頑張ってんのに報われないなんて可哀想じゃん。奈々は頑張って偉いし……」
「……嬉しい……。やっぱり、あっちゃんの事、すごい好き……」
「……………………」
私は今完全に白目を向いてしまったと思う。この好感度は何?なんて答えたらいいの?女の子に好意を寄せられた事ないから分からなくて悲鳴出そう…。男で興味なかったからへー、私は好きじゃねぇわで終わってんだけど終われなくないこの感じ?てか、言えない私は。奈々にそんな酷い事できない…。私は秒速で悩んでから口を開いた。
「えっとさ、気持ちは嬉しいけどさ……その、まずは、……見極め期間って事でさ、……大事な事だから一緒の時間作ってしっかりどう思うか考えよう?」
「う、うん……」
「じゃ、早速予定立てない?来週また奈々に会いたいんだけど来週暇?土日とか」
「うん、私も会いたい!ちょっと待ってね」
嬉しそうにはにかむ奈々は鞄から手帳を取り出した。一々反応が可愛くて見習わないとなと思っていたら奈々は予定を確認しながら困ったように言った。
「あ、……来週は、ちょっと予定あって無理かも……。ごめんねあっちゃん」
「あ、マジ?全然いいよ。じゃ、再来週にする?」
「再来週も、ちょっと……ダメかも。ごめん……」
「あっそうなん?そっか~、んー……じゃあ、金曜の夜とかは?平日はダルいだろうし」
奈々は見た目通り可愛いから友達多そうだし充実しているみたいだった。そういえば酒と恋愛話ししかしてないから趣味とかあんまり知らないし今度聞いてみるか。全く予定がない私の提案に奈々はようやく頷いた。
「うん!金曜の夜なら空いてるから金曜の夜がいい」
「おっけー。じゃあ、金曜の夜ね?どっか行きてーとこある?」
「ん~。私はどこでもいいよ?」
「おけ!じゃ、適当に店決めてまた飲も?」
「うん!」
こうして私達のちょっと真面目な恋愛観の元、奈々との新しい関係が始まった。
だけど、あんまり変わらなかった。変わらなかったと言うかどうしたらいいか分からなかった。
私はたまに連絡するけど基本連絡とか全然しないからこう改まると何を話したら良いのか余計分からなくてひいちゃんと仕事ダルいねって話をして仕事をして金曜日になった。
金曜日になって私は改めてどうしようと思った。
てか、付き合ってた時連絡とかしなさ過ぎて好き?って聞かれたり浮気疑われたり浮気されたりしてたけど話す事なくない?会って話せばよくない?しかも彼氏より友達の方が仲良かったから二の次三の次だったし。
だからそうなってたのかって今更気づいたのは置いといてした方が良かったよね?嫌いじゃないのに嫌われたって思わせてない?
ていうか、しないと付き合ってた時のような末路じゃないの?なに話したらいいか分からないじゃなくてするのが宿命なんじゃないの?
頭の中で私は結論をほぼ導き出していたがもう金曜日である。今更遅いし何だったら今日奈々から連絡が来ている。
待ち合わせの場所に着く時間と仕事頑張ろうねと言う素敵連絡が。
それで今待ち合わせ場所だよ私。え、私ダメじゃない?この連絡が来て素敵!女子みたい!これが女子だよ!って思ってもう仕事終わって今だよ?返せよって話だけど着いた~しか返せなかった……。
もう私は連絡をしなさ過ぎて分からなくなっていて辛かった。付き合ってた時の方がもっとましだった気がするけど思い出せない……。用件がある時だけ連絡しろよダルいなぁって思って一応頑張ってたのしか思い出せない……。あぁ、嫌な思いさせてたらどうしよう……。
携帯を見ながら沈んでいたらちょうど奈々がやって来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます