瓦落多ガジェット
緒環 兆
プロローグ
第1話 とある敗戦国
―――13年前
その日、近隣諸国をも巻き込んだ大戦が終わりを迎え
敗戦国となった我等が祖国は“帝国”の名を廃棄した。
敗戦をしたこの国には、これまで以上に明確な格差が生まれた。
国王が御座す地であり旧帝国軍の本拠地も置かれていた中心街を含めた第一番街。
国王とその一族、一部の貴族や旧帝国軍でも上位の地位に着いている軍人とその身内が住んでいるこの部分は国の中央にあり、敗戦した事で人や物資の流通が困難になった国内でも比較的物流が良い。
旧帝国軍の本拠地も変わらず存在しているため治安も良く、安全に生きていける地であると言える。
次に旧帝国軍の中でも下位の地位に着いている軍人とその家族、そして帝国時代の民間人が住む第二番街。
第一番街は高さ100mの場所に建設されているため、その麓にある第二番街からは見上げなければ目に入れる事も許されない。人も物資も第一番街へ潤滑に行き届いてから第二番街に流れるので第一番街と比べれば満足に、とは言えないがそれでも生きていくのに困らないだけの物資は得られる人々が住んでいる。
最後に、働き手を失った弱国民や戦争孤児が集う第三番街。
長きに渡り続いた大戦により若い男達は名誉ある帝国軍の軍人として徴兵され、働き手や親を失い生きていく事すら困難になった多くの国民達は決壊した河川の水の様に旧帝国の中心街から離れて行き、この第三番街へ流れ着く。
第二番街と第三番街の間には3m程の高さの丸太で作られた柵があり、その隙間からしか第二番街と遥か先の上空にある第一番街を眺める事しか出来ないこの街の住人は、さながら人というより檻に入れられたケモノに近い扱いを感じさせられる。
この柵の向こう側である第二番街は人の住処であり、その更に先にある第一番街は正しく天上の場所であるのだ、と。
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