第8話 プライベート(甘えん坊)タイム到来!!!
――夜。
とりあえず今抱えている問題は二つ。
一つは、白井家襲撃事件の犯人特定。
一つは、優美の傷の手当てと剣の道に戻ってもらうこと。
白井家襲撃事件は王城全体でも有名になっており、あの後一人になったファントムが散歩がてら城内をウロウロしていても色々な所で耳に入って来た。
その中でも気になったのが優美の件だ。
白井家の令嬢でありながら、剣士としての才能がある優美ですら負けた相手が野放しになっている。その事実が世間を恐怖に陥れているらしい。
なんとしても早急に解決する必要があるのだ。
それにこれは後から知ったのだが、三日後優美はここを離れ少し遠出するらしい。
その為、時間は限られている。
なぜアイリスがこの三日間だけ城内の強化、主に自身の身の安全に力を入れているのかがこれでわかった。つまりこの機を利用して襲撃される可能性を考えるとアイリスの場合はこの三日間が一番高く危険だと言うわけだ。そして優美を狙うのであれば護衛が手薄になる三日後だと言うわけだ。
元部下に聞いた話では入院中である白井家当主とその付き添いである婦人は、国が直接運営する病院に入院中の為、軍の人間が常駐していることから比較的に安全であることがわかった。
「どうしても外せない用事がある……と聞いたけど、そのせいで三日しか時間がないのは辛いな……。それにさっき会った時もふとっ思ったけど、剣の道に戻って貰わないと、今後自分の身を自分で護れなくなる。それはそれで今後を考えると良くないんだよな……」
ベッドの天井を見つめて、ぼんやりとしながらファントムが呟いた。
ここに来る前、天音から貰ったデータは全部頭の中にある。
その中でわかったこともあるわけだが、気掛かりな事も幾つかあった。
「レベル六(原書)クラスじゃなければあの剣を前にして瞬殺は無理。かと言ってこの国のレベル六は全員ありばいがある。それにレベル五(最能力魔術師)の人間で剣に精通している者もありばいがあるし、今のリベラ国にはレベル七(魔術原書)はいない……となると犯人の目星が一切つかない。そもそもこれは自国の者の仕業ではなく、他国の人間の仕業だと考えるべきなのか……」
特に思い悩むのはここだった。
優美の証言から犯人は優美以上の剣の使い手だとわかっている。
そもそも検問を通らずしてリベラ国に侵入はほぼ不可能。
外部から誰かが侵入すれば二四時間体制で監視している衛星や広範囲魔力探知機と言った警備システムになにかしら感知され王城内にある作戦司令室へとすぐ報告されるからだ。だがそれすらも事件発生前から約一か月前まで遡って調べても何もなかったと天音の報告書には書かれていた。
「謎だ、謎過ぎる……」
一人考えこんでいると、部屋の扉がノックされる。
そのままベッドから起き上がり、扉の方に身体を向けて返事をする。
「どうぞー」
ガチャ
「やっほー、仕事終わって遊びに来たよ!」
扉を開き、職務を終えたアイリスが笑顔で手を振りながら入ってきた。
「お疲れ様」
「ありがとう。ってことで隣いい?」
「いいよ」
アイリスは扉を閉め、ファントムの隣に腰を降ろす。
それから顔をファントムに向けてニコニコし始める。
最初は抵抗があったが、もう慣れた。
と言うわけで、ファントムはアイリスの頭に手を伸ばして優しく撫でてあげる。
「うぅ~ん、ありがとう」
幸せそうに笑みを零し、それでいて気持ちよさそうな声をあげるアイリス。
そのまましばらくアイリスが満足するまで、撫でてあげる。
「しあわせ~」
「気持ちいい?」
「うん。きもちいいょ~」
これはこれでアイリスにとっては良い息抜きになっているとファントムは思っている。
その為、アイリスが甘えたそうな時はよくこうして頭を撫でてあげるのだ。
「ぎゅ~してー」
すっかり甘えん坊になったアイリスが身体を寄せて抱き着いて来たので、同い年なのに妹みたいだなと思い、受け入れてあげる。
やっぱり女の子だな、と思う程に細い身体を優しく包み込んであげる。
すると身体と身体が引っ付いて程よい弾力を持った物がファントムの若い肉体を刺激してくる。本人(アイリス)に悪気がないのは知っているが、それでも身体は正直に反応してしまう。だからと言って引き剥がせばそれはそれでアイリスが悲しむのでファントムは本能を己と理性で押さえつけて紳士を演じる。
「だいしゅきーだよ~」
(異性としてだよー)
「ありがとう」
(幼馴染としてかな?)
「えへへ~」
こんな甘えん坊な姿誰にも見せられない。
もしこんな事が他の誰かにバレたらこの国はある意味色々な意味でマズイ。
そう二人は思っている。
なのでこれは二人だけの秘密。
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