第66話 冒険者資格

「レオ君じゃん。え? 何々どういうこと?」

「えっと、その、ね。アリリアナさんさえよければレオ君も一緒に試験受けても良いかな」


 冒険者の資格試験は主に個人試験とクラン試験に分かれる。個人と違ってクランの場合はもしも合格点に足らない項目があってもクランメンバーの分が加点されるF級制度が使用できるから、若い人はクラン試験を選択する傾向が強いみたい。だから今朝レオ君から魔法文字で一緒に試験受けたいって連絡きた時も、アリリアナさんへの連絡は会ってからでいいかなって判断しちゃった。


「そりゃ私は構わないけど、何? レオ君も冒険者になりたい感じなの?」

「悪いかよ」

「いや、別に悪くはないけど、レオ君まだ学生でしょ。メルルはこのこと知ってるの?」

「当然だろ。……説得に少し時間かかったけど、ほら承諾書」

「どれどれ~? ……うん。確かにおばさんとおじさんの承諾をもらってるみたいね。ようこそレオ君、一緒に冒険者の頂点を目指そうぜい!」


 親指を立てるアリリアナさん。良かった。こうなるだろうとは思ってたけど、レオ君が一緒の試験を受けることを反対されなくて。あっ、でもあのことは言っておかないと。


「あの、アリリアナさん。レオ君は医療第二種の為に冒険者資格を取るだけだから、冒険者の頂点は目指さないと思うよ」

「ありゃ。そうなの?」

「……まぁ、一応は」


 どうしたんだろ? レオ君の歯切れが悪い気がする。


「そういうアリリアナこそどうなんだよ。本気で冒険者目指すつもりなのか?」

「そんなの分かりません!」


 ええっ!? って思わず言いたくなるくらい、アリリアナさんは曖昧な答えに堂々と胸を張った。


「でもやってみたいと思ったからには、とりあえず全力でやってみるわよ。そんな感じだから可能な範囲の協力をお願いね」

「まぁ、アンタ達がそれでいいならいいけど……」


 あっ、レオ君と目が合った。話しかけるタイミングではないけど、無視もしたくないし、笑いかけてみようかな。……えっ!? め、目を逸らされちゃった。どうしよう。ちょっとショックかも。ううん。た、偶々だよね?


「そ、そういえば姉貴が仕事辞めたことに関して詳しく聞きたいから、今度家に来いってさ」

「げっ。ちなみにメルル、どんな感じだった?」

「相談くらいしてくれればいいのにって不満そうにしてたぞ」

「じゃあパ~ス。お家にお邪魔するのは時間を置いてからにします」

「え? いいの?」


 メルルさん、別に怒ってるわけじゃないと思うんだけど。


「いいの、いいの。ほら、それよりもそろそろ行こうよ」

「う、うん」


 メルルさんへの対応、そんなのでいいのかな? 私だったら友達に来いって言われたら用事なんてほっぽり出して行っちゃうけど。それともアリリアナさんの対応の方が普通なのかな?


「姉貴とアリリアナは昔からこんな感じだ。これで仲が悪くなったりはしないから、ドロシーさんが変に気にすることはないと思うぞ」

「レオ君……うん。ありがとう」

「べ、別に礼を言われることじゃないし」


 あっ、また顔を逸らされちゃった。偶然だとは思うけど、なんだかレオ君の態度がちょっと余所余所しい気がする。


「あの、レオくーー」

「二人とも~、何してるの? 早く早く~」

「分かってる」

「ご、ごめんなさい」


 そうして私達三人は冒険者資格を得るためにギルドへと向かった。

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