【破壊令嬢アヌリウム】「竜の血を宿す少女は業灼拳で全ての敵を破壊する。赦しを乞うてももう遅いですわ」

アオピーナ

序幕

頁000 死神の目覚め

 ――『屍焼洞ししょうどう』。

 

 無数の屍の山を背に、桃髪の女は立っていた。


 つい今しがた死んでいた筈の女は、しかし、今そこに立っていて星空を象ったようなドレスを身に纏い、不敵な笑みを浮かべている。


 小指の先で点滅している、黒紫色の炎。


 女はそれを薄紅色の唇の前に持っていき、ふっ、と吹いて消した。


 たった、それだけの動作で。


 だだっ広い空間は、崩落した。


 けたたましい音と荒れ狂う炎。


 黒と紫に彩られたそれは竜の形となって、その場で立ち尽くす魔術師たちを焼き尽くしていく。


「――さあ」


 女が、言葉を紡いだ。


「叛逆の宴を、始めますわぁ」


 直後、拳を握り締め、構え。


 瞬きすら許さぬほんの一瞬を挟み、気が付けば魔術師たちの腹には穴が空いていた。女は彼らの背後に居て、手甲に付いた血を舐めて焼き焦がす。


 その刹那、大地が崩れ、女は黒紫の炎で作った翼をはためかせて、飛散する瓦礫を焼き払いながら天へと翔けていく。



 ――これが、女の伝説の火蓋が切られた瞬間だった。


 誕生日。暖かな日常は崩れ去った。


 故郷の都市で発令された『亜人追放令』。


 亜人討伐を掲げる『陰魔導教団』。


 そして、最高位魔導師の貴族であるアルヴィレッダ家に代々伝わる、『冥竜』と称される種族が一体――『業灼竜』の血脈。


 数奇に交わる運命は、一人の少女に復讐の業火を灯させた。


 災厄級国際指名手配魔導師『破壊令嬢』――そのとある一ページの詳細より。

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