第56話 少女


 キッチンで解体されていた男性はもう亡くなっていた。


 もしかすると地元の男性なのかもしれない。


 山に山菜採りにでも入って拉致されたのかもしれない。


 凛も同じような目にあっていたらと思うと瞬は眩暈めまいがするほど怖くなった。


 物音を聞きつけてか奥のリビングから数人の男女が集まってきた。


 こちらを攻撃するつもりだろう、刃物や吹き矢を持っている。


 最上隊長や近藤が反応するより速くこのみがハチキュウで全員撃ち殺していた。



 完全に制圧したのを確認しながらキッチンとリビングを見たが凛の姿はなかった。


 部屋を出て階段に戻る。


 どうやら3階建ての建物らしい。


 一行は2階へ上がっていく。



 部屋が2つ並んでいるようだ。


 近藤は奥の部屋のドアから慎重に開けていく。


 部屋にはベッドがあり生活感があった。


 大きなクマのぬいぐるみ、女の子の部屋だろうか。


 ただ部屋主はいないようだ。


 次の部屋を開けると書斎のようだった。


 多くの書籍が本棚に積まれ、机にも読みかけの本がある。


 ただ、やはりここにも部屋主はいない。


 一度廊下に戻り反対側にたどり着く。


 バスルームのようだ、中に人がいる気配がある。


 使用中のバスルームを開けるなんて許されることではないが今は非常事態だ。


 近藤がバスルームのドアを開ける。




 そこにいたのは13歳くらいの少女だろうか。


 慎重は140センチくらい。


 まだ成長しきっていない一糸まとわぬ裸体はお風呂から出たばかりで、その若く幼い体はお湯を弾いていた。


 どうしたらよいものか一行の動きが止まる。


 女の子の顔がみるみる赤くなり大きな口を開けて叫びそうになるのを近藤の手が伸びて口をふさぐ。


 最上隊長がバスルームを確認するが他には誰もいないみたいだ。


 この少女は先ほどの子ども部屋の主だろうか。


 少女は近藤に押さえつけられていたが、最上隊長が下着と服を渡すとそれを素早く身に着ける。


 とにかく大人しくしてもらうしかない。


 ハンドタオルを何枚か集めて少女を拘束することにした。


 近藤がハンドタオルを持って少女の口をふさごうとした瞬間。


 自分の胸の辺りが熱いことに気付いた。


 どこに隠し持っていたのか、少女の両手で握られた小刀が近藤の胸に深々と突き刺さっていた。


 そのまま前に倒れる。


 それを見ても、最上隊長も瞬も攻撃することができない。


 相手は子どもだ。


 

 近藤の胸から小刀を抜いた少女はなまめかしいような表情をして残りの3人を見る。


 まるで攻撃されることなど考えていないようだった。


 硬直する3人の間をすり抜けて少女は階段を3階へと上がっていった。





 最上隊長が近藤の容態を確認するが即死だった。

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