第11話 不老不死


 夕凪が当時20歳だったとしても今生きていれば60歳以上になっているはずだ。


 ここで、瞬は1つ恐ろしい想定をする。


 明治時代から続いている一連の失踪事件の犯人は全て同一人物ではないか?


 そして、その魔女が若さを維持するために人の命が必要だとしたら。


 考えるだけでも恐ろしい、そして、防衛省や政府のお偉いさんはここまでは既に予測した上でこの不老不死の力を得るために瞬と凛を雇った(もちろん他の人物や組織が動いている可能性は十分にありうるが)のではないかということだ。


 考えがここに至ったとき、瞬は軽い眩暈めまいを覚えたが、凛の身の危険も考えて正直に伝えた。


 「え・・そんなことって」凛も顔色が真っ青になり床にへたり込んだ。


 「凛のことは俺が必ず守る、初日に護身用具を買いそろえたのは正解だったかもしれないね」


 「瞬」そう言って長身の瞬を強く抱きしめた。


 瞬もそれに応じて凛の頭を撫でてあげる。


 凛の体は小刻みに震えていた。


 「この仕事はやめられないの?」


 「12週間はやり続けることが僕らに課されている、途中放棄のペナルティは300万円らしい」


 「300万円か、私ずっと貯めていたお小遣い出せば半分くらいになるよ、それで許してもらおうよ」


 「いや、やろう」


 「魔女に殺されるかもしれないんだよ?」


 「大丈夫だと思う、凛は俺が守るから」


 「馬鹿、なんだかかっこよく見えちゃうじゃない、そうだよね、教授もあの林っていう人も途中で辞めさせてはくれないよね、私たちもう知っちゃっているから」


 「魔女がどんな魔法を使うかは分からないけど、2人で離れずにいたら絶対に大丈夫、そんな気がするよ」


 「お風呂も一緒?」


 「ああ、そうだな、お風呂も一緒に入ろう、俺は後ろを向いているから」


 「なに?今更そんなところで紳士ぶるつもり?いっぱい見てるくせに」


 「そっか、そう言われてみれば今更かもしれないな」


 「うん、ねえ」


 「ん?」


 「キスして、」


 「ああ」


 瞬は凛の唇に自分の唇を重ね、肩を強く抱きしめた。

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