(三)-5


「お前にはまだ早かったか」

 ジーノが僕の方を見てそういった。

 するとジョッキ三つを持ってマリアが戻ってきた。

「カワイイねえ、この子は。顔を赤くしちゃって。私もこんなウブな子だったらいつでも歓迎だよ」

 マリアはジーノの「冗談はやめてくれ」という声に耳を貸さずにジョッキをテーブルに置いた。そして口元を緩ませて笑いながら奥へ戻っていった。


 その後、僕たちはジーノから父であるビアージョ・ピエッティのことについて多少話を聞いた。それによると、父はしばらくここで働いたあと、すぐにバレンシアの方へと移っていったそうだ。働いているときにトラブルがあったとかそういうのではなく、単に向こうで人手が足りないので派遣して欲しい、という商会側の都合だった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る