第4話〜未練まみれの決別〜


「勝利を祝して乾杯〜」


 洞窟での戦いを終えた日の夜。

 ハツヤドの集会所ではシザースビートルの群れの撃退成功を祝して飲めや歌えのどんちゃん騒ぎとなっていた。

 皆酒を飲んで出来上がっており、陽気になっている。


「おうおう兄ちゃんもっと飲めよ〜」

「あ、いや俺は……」

「飲みねぇ飲みねぇ。今日ぐらい飲みねぇ〜」

「あの……」

「良いじゃねぇか。主」

「ロウエン……」

「ほら、剣の旦那も言ってんだ。飲みぃ飲みぃ」


 そう言って俺の木のグラスにドボドボと緑色の酒を注ぐオッサン。


「ヘッヘッへ〜。一気はするんじゃねぇぞ〜いっと」


 オッサンは言うだけ言うとガッハッハ〜と笑いながら別のグループの元へ行ってしまった。


 彼は彼でロウエンがボスビートルと戦っている時、その周りで手下のビートル達の相手をしていたのだ。

 その時は持って来ていた剣が折れてしまった事もあり、その場に倒れていた丸太を抱えて戦っていたのを覚えている。


「……にがっ。いや甘い?」

「ハハッ。主は酒は初めてか?」

「あぁ。飲む暇があったら走っていたよ」

「成程、な。どうりで速い訳だ。あの速さ、流石としか言えないな」

「はは。ありがとうな」


 ググーっと注がれた酒を飲み干す。

 始めは苦いが喉に差し掛かる辺りに来ると甘く感じる。

 どうやら複数の果実を使った酒の様だ。


「にしても良かったな。この町も一気に労働力を得られたし」

「だな。まさか通訳スキルを持った人がいるとは思わなかったよ」

「ま、いたおかげでビートル達を町の労働力として使える事になったんだ。説得する手間が省けたってもんだ」

「……もし通訳スキルを持った人がいなくて説得にも失敗したらどうなっていたんだろうな」

「そりゃ……一つしか無いだろ」


 そう言ってロウエンも酒を飲む。

 彼の酒は紫色をしており、苦いのか一口飲むと顔をしかめている。


 そう。

 あのビートル達は群れのボスを倒した俺を新たなボスと定めたのだ。

 一応ボスビートルに攻撃を加えた人は他にもいるが、彼等の中ではトドメを刺した者が次のボスという事らしい。


 その為俺を担ぎ上げ、新たなボスと他のビートルに見せつけられたり、メスのビートルがやたらと近付いて来たのを覚えている。


 その後どうするかと思っていたら、種族を問わずに言語の通訳をできる通訳者のスキルを持つ者がいたので、この町に残り働く様に命令したのだ。

 多少は嫌がるかと思ったが何とめちゃくちゃ素直にそれを彼等は受け入れたのだ。

 いや〜、素直な子達で助かったぜ。


「あ、槍の子見っけ〜」

「私達ともお話ししようよ〜」

「良いでしょ良いでしょ?」


 寄って来た3人の女性。一緒に戦いはしなかったが今回のクエストに参加した方達だ。


 俺を槍の子と言った女性は短い茶色の髪を頭の後ろで一つに束ねている。

 可愛いと言うより美人系の人だ。

 腰を見ると短剣が二本ずつ左右に下げられている。


 次にお話ししようよと言って来た女性は真っ赤な髪をしている。

 大人な女といった感じだ。

 左腰には束ねた鞭がホルスターに納められている。


 最後に良いでしょ良いでしょと来た女性は艶のある長い黒髪。

 腰に下げた筒には矢が入っている事から弓が武器だろうか。


 3人ともそれぞれ自分の髪と同じ色の酒が入ったグラスを持っている。


「凄いかっこよかったよ〜」

「あ、ど、どうも……」

「ねぇねぇ名前教えてよ」

「あ、抜け駆けズルイ!!」

「えと……」


 グイグイと俺に迫る3人。

 遠慮と言う言葉を知らないのだろうか。

 ただ見た所体の見える所に傷は見えないので相当戦い慣れているのかサボっていたのか、はたまた回復魔法が上手いのか。


「よく見ると君かっこいいしさ、何かアクセサリーとか着けたら?」

「お〜、それ良いね〜。お姉さん達が選んであげよっか!!」

「いや、別に……」

「遠慮しない遠慮しない。こう言う時は素直に」


 どうしようかと思っていると


「はいはい。俺の主をあまり困らせないでくれるか?」

「おっ!! 君は珍しい剣使いの!!」

「やだー!! こっちもイケメン!!」

「ねぇねぇ私に戦い方教えて!!」

「ちょっとミイは弓使いでしょ? 剣関係無いじゃない」

「違う違う。剣使いの人との連携の取り方を知りたいの」

「じゃあ私がみっちり教えてよあげるわよ」

「ちょっ、アンタじゃ参考にならないから……助けて〜」


 ミイさんを引きずるように連れて行く短剣の女性。

 それを見て呆れた様子をしつつ俺を見てニコッと微笑み、鞭使いの女性は二人を追って行った。


「モテてるねぇ。我が主」

「なんだろうね。その呼び方もう慣れてきたよ」

「それは僥倖」

「僥倖って……まぁ良いか」


 ため息を吐くが自然と嫌じゃない。


 殿を自分から買って出て、ボスビートルとその取り巻きともやり合って、ボスにトドメを刺す為の隙を作ってくれて。


 しかもボスの攻撃を受けてもたいした怪我をしていない。

 ステータスが高めなのだろう。

 一体レベルが幾つなのか凄く気になる。

 因みに俺はボスを倒した事もあってレベルが23に上がり、ステータスもそれなりに上がった。

 しかも新たなスキル群れの長を習得。

 というよりボスビートルから継承した。


 この群れの長というスキルだが、パーティーを組んでいる場合自分含んだパーティーメンバーのステータスを上昇させるという効果を持つ。

 ただし、そのスキル所有者がボスに相応しい器でないとあまり強化されない。


 なので、俺がボスの器に相応しくないと意味が無いのだ。

 ただこのスキルの良い所は例えレベルが低くても勇気がある者、仲間を想う気持ちが強い者であれば仲間を強化できるという点だ。

 逆に自分本位で仲間を駒と思っている者がこのスキルを手に入れても大して意味が無いのだ。


 じゃあ俺はどうだと思いステータスをチェックすると


(……あまり上がってねぇな)


 まだ駆け出しだし、心構えや旅の目的も定まっていないのだ。

 ある程度決まってくれば変わってくるだろう。


「そう言えば主はアクセサリー着けねぇのか?」

「え、まぁうん。落としたくないしな」

「ほぉ〜。でも着けた方が楽な時もあるぜ?」

「そうなのか?」

「あぁ。ま、いうて俺も着けてはいないがな」

「なんだ、着けてないのかよ」

「カカッ。すまないすまない」


 ニカッと笑いながら酒を飲んで顔を顰めるロウエン。

 ただ、彼と話している俺に突き刺さる様な視線を感じる。

 心当たりはあるが、今は触れないでおこう。

 向こうから来れば相手をするが、来なければそれに越した事は無い。


「さて主」

「ん、何だ?」

「次は何処へ行く?」

「次……そうだなぁ」

「南や北のハツヤドに行くも良し。そこを通り過ぎて東のハツヤドに行くも良し。このまま真っ直ぐ」

「王都か?」

「それもありだ。俺としては今回のボスの素材を加工出来る奴を知っているからな。できれば行きたい」

「ほぉ〜。よし、じゃあ次は王都に行こう」

「良いのか? 我が主」

「おう。折角だし王都も見てみたいと思ってな」

「そうか。なら話は決まりだな。移動手段は俺に任せてくれ。三日以内に用意する」


 一度頷いてからそう言うロウエン。

 その口ぶりから察するに、移動手段には何かあてがあるようだ。


「そこまで……悪いな。ロウエン」

「気にする事は無い。俺は雇われの身。主の機嫌を損ねて捨てられない様、尻尾を振るだけだからな」

「そ、そうか……って、何?」


 周囲の俺を見る目に思わず引き気味になってしまう。

 信じられないといった目で俺の事を見ているのだ。


「え、嘘だろ。剣の兄ちゃんが雇われているのかよ」

「ウソ〜」


 どうやら俺の方が立場は下だと思っていた様だ。

 そんな中でも一つだけ違った感情を宿した視線が俺に向けられる。

 鬱陶しい程に真っ直ぐ俺へと向けられる視線。

 そんな視線スルーだスルー。

 用件があんならそっちから来いってんだ。


「まさか驚かれるとはね。我が主は余程過小評価されていた様だ」


 やれやれと言う様に肩を竦めるロウエン。


「さて、そろそろ宿に戻ろう我が主。夜も更けてきたようだしな」

「お、おう……そうだな」

「では皆さん。我々は一足先に失礼します」

「今日はお疲れ様でした」


 軽く頭を下げて集会所を後にし、宿へと帰る。

 皆口々に今日の事を労う言葉を投げかけてくれた。

 が、最後まで彼女の視線が俺から外れる事は無く、また話しかけて来る事も無かった。




 宿に戻り、戦いの疲れを癒す事三日。

 ロウエンが王都への足を確保してくれたのだが、その足というのが


「いや〜、悪いね。お兄ちゃん方」

「いえ。王都への送ってもらうお礼ですよ」


 ハツヤドから王都へ向かう商人の馬車に乗せてもらえる事になったのだ。

 ただこの商人、他にも荷を下ろす場所があるので到着まで一週間程かかるそうだ。


「どこにも寄らなければ三日ぐらいなんだけどね〜。まぁオイラの相棒の馬もそろそろ歳だし。今回で引退してもらうかねぇ」


 ポンポンと馬を優しく叩くその手はシワだらけ。

 馬も鬣に艶は無く、かなり高齢である事が窺える。


「にしても良い野菜ですね。どれも美味そうだ」

「これを売って収入にしてっからね」

「では引退したらどうします?」

「そうさねぇ……どうしようかねぇ。若いモンに継いでもらおうかねぇ」

「……じゃああのビートル達に荷を引っ張って貰うのはどうです?」

「びぃとるねぇ。そいつは良いかもしれんね。力持ちだし、兄ちゃん達みたいに守って貰わなくても良さそうだしの」


 町で暮らすビートル達もすっかり受け入れられており、今では大工や道路舗装の手伝いの様に力仕事の手伝いをしている。

 今も荷台に野菜や鉱石が詰め込まれた荷物を乗せてくれている。


「ありがとうの」

「グギャウ」


 爺さんが礼を言うと分かるのか穏やかな声で返すビートル達。

 だったが……


「おいおい荷物積みはまだか〜?」

「す、すみません!! もう少しお待ち下さい」

「ったく……仕方ねぇな。さっさとやれよ?」

「へ、へい!!」


 少し離れた所で王都への向かう為に馬車に荷物を乗せる作業中のカラトがいた。

 ただアイツは自分では荷物を積もうとはせず、手伝いで雇ったビートルやその監督官にやらせており、遅いと文句を言っていた。


「も〜、じゃあカラトが積むのやれば良いじゃ〜ん」

「嫌に決まってんだろ。怪我したらどーすんだ? 俺は勇者なんだぜ?」

「す、すいやせん。すぐ終わりやすので」

「おう。早くしろよ〜」

「って、お前〜。何見てんだよ〜」


 俺の視線に気付いたモーラが俺の方へとズカズカと歩いて来る。


「何だよ」

「何見てんだよ」

「デケェ声で話してたら見ちまうだろうが」

「んだよその口の聞き方は。こちとら勇者パーティーの一員だぞ?」

「だからなんだよ。聖剣無しのくせに」

「テメェ……それを言うかよ!!」

「やるか?」

「やってやろうか……オラァッ!!」


 トンッとモーラの拳が俺の腹に打ち込まれるが


「おい。マッサージならしっかりやってくれよ」

「テメェ、何だよこの固さ」


 一応鍛えていたのだ。

 村一番の俊足の俺だって初めからちゃんと走れた訳じゃ無い。

 走って転んで大怪我して。

 酷い時は骨折したりもした。

 その度に次は怪我をしない様に、転んでも大怪我をしない様に鍛えた。


 その結果同年代の中では結構頑丈な体になっていたのだ。

 更にレベルが上がった事も加わり、かなり頑丈な体にレベルアップしたのだ。


「舐めてんじゃ……」


 ググッと拳を引き絞るとその拳に青い炎を纏わせるモーラ。


「ねぇぞ!!」


 バンッ!! と音を立てて打ち込まれる拳。だったのだが……


「ッ、どうして……」


 その拳は俺に届かず、手前5センチ程の所で止められていた。

 即席で作った風の壁による防御を行なったのだ。


「そんな。お前そんなに魔力無かったのに……」

「まぁな。でもちょっとは強くなっているんだぜ」

「ぐっ……クソがっ!!」


 そう吐き捨てカラトの元へと帰って行くモーラ。

 その彼女と入れ替わる様に俺に向かって来る一人の女性。

 金髪に染められた髪はこの前見た時と違い、見慣れた髪型になっている。


「……ね、ねぇハヤテ」

「何だよ」


 俺と付き合っていた時の髪型。

 頭の後ろで髪を纏め、肩からそれを垂らす髪型。

 あの時は似合っていたが、金髪となった今は違和感がある。


「この髪型、覚えている?」

「……あぁ」

「村のお祭りの時にさ、似合っているって言ってくれたよね」

「まぁな」

「どう、かな……今も似合っている?」

「……正直言うと似合って無いな」

「あはは。そっか……ちょっと悲しいな」

「……何の用だ?」

「あのさ、一緒に旅に来ない?」

「は?」


 想定外の言葉に思わず言葉を失ってしまう。


「だってほら、カラトのサポートがあったとはいえさボスビートルを倒せたんだし。カラトの事、説得してあげるからさ」


 ニコニコと笑いつつ、両手を体の前で握る様に合わせながら話すセーラ。

 だが俺は


「悪いけどそれは無理だな」

「……え?」

「今の俺には雇っている人がいてよ。その人の修行の旅に付き合っているんだ。だから、無理だ」

「修行なら一緒に魔王退治に行こうよ!! うんうん、そうだよそれが良いよ!!」

「悪いけど、だったらなおさら断るよ」

「何でよ!!」

「……悪いけど、俺は大人じゃないんだ」


 付いては行けない。

 行く気も無い。

 行ったら、俺はきっと。


「悪い。俺は、無理して付いて行ってお前達を傷付けたく無いんだ」

「……」

「だから、ごめん」

「ふぅ〜ん。私を取り返そうとかも思わないんだ」

「……ッ!?」

「意気地なし」


 ボソリと吐き捨てる様に、冷え切った目で俺を見て言うだけ言ってカラトの元へと戻って行くセーラ。

 戻るなりアイツの腕に抱き付いて甘えている。

 去年までは俺があそこにいたんだよなと思いつつ、アイツ等に背を向けて馬車の荷物積みを手伝う。




 その後無事にハツヤドを出発した俺達はノンビリと馬車の荷台で揺られていた。


「何を話したんだ?」

「え?」

「お前の兄ちゃんとこの奴等と何を話したのかな〜って思ってよ」

「……別に」

「……そういや、指輪の事は言ってこなかったか?」

「あぁ。気付いてすらいなかったみたいだよ」


 指輪とは俺とセーラで持っていた番の指輪の事。

 そう、俺はビートル達との戦いの時にネックレス状にして身に付けていた番の指輪を外していたのだ。

 だからセーラが放った火矢の火力が落ちていたのだ。


 初めはこれに気付くかどうか試すのは危険も伴うから辞めようと言ったのだが、いざと言う時は俺が守るとロウエンが約束したのでやったのだ。

 結果、アイツは気付かなかった。


「……結局俺はその程度だったって事か」

「……悪かったな。聞いて」

「いや、良いよ。ちょうど吐き出したかったんだ」

「あえぇ!? 酔っちまったかい?」

「爺さん、こっちの話だ」

「そうかいそうかい。何かあったら言ってくれなぁ?」

「あいよ」


 爺さんのおかげで少し和んだ気がする。

 そこから俺はロウエンにアニキのパーティーのメンバーについて話した。


 モーラは隣の家の子で、小さい時からよく遊んでいた。

 とにかくやんちゃで元気で村のガキ大将とよく喧嘩をしていたのを覚えている。

 そんでだいたい勝っていた。

 村一番腕っ節が強いモーラと村一番の俊足の俺。

 よくペアにされていた。


「カラトを一緒に助けてさ、魔王退治しようぜ!!」


 とよく笑いながら言っていたのに、ある日を境に俺とあまり会わなくなった。


 そしてそのままアニキと一緒に旅に出てしまった。


 そのある日と言うのがヒモリの家で行われたパーティーの日なのだ。

 ヒモリは俺が育ったカザミ村とその隣にあるカゼナリ村、それとオヤシロ村を治めている領主の娘なのだ。


 領主の娘である為か何処か品の良さを時々感じていた。

 幼い頃から色々と教えられており、魔法も使える。

 更に槍も使えるので、彼女が持つ槍は魔法を使う際の杖の役目も与えられている。


「ほう? そのパーティーには主も行ったのか?」

「え? まぁ、誘われたし行ったよ」

「そうか……何があったんだろうな」

「最後はセーラか……」


 セーラ。幼馴染みで、お互いの父親が大の親友だった。

 でも互いに父を失った。

 近くの森に出た魔獣の駆除に行ってそれっきり行方不明になったのだ。


 帰って来ないと言って泣いていた彼女を慰めたのを今でも覚えている。

 その時に俺に向かってどこにも行かないでねと言われて、その時に好きだと言う気持ちを伝えたんだ。


 そしたら向こうも俺の事が好きだと言ってくれた。

 それからは基本的には仲は良かったが時折喧嘩もした。

 喧嘩しては仲直りしたし、どう仲直りしようと悩んだ時はモーラに相談に行った事もあった。


 でもなんだかんだで仲直りして、大人になったら一緒に暮らそうって約束もして。

 なのに……


「どうして……」

「……そう言う時もあるさ」

「でも俺さっきさ、良かったら一緒に旅に来ないかって言われたんだ」

「おう」

「でも、気持ちの整理。ちゃんと付けられなくって……断って」

「うん」

「付いて行ったら、傷付けそうでさ……」

「そうか……」

「そしたら意気地なしって言われちゃってさ」

「良いじゃねぇか。意気地なしで。臆病でよ」


 その言葉に顔を上げる。


「俺は傭兵をやっていたからって言うのもあるが、臆病で意気地なし程長生きする。別に恥ずかしがる事じゃ無いさ」

「……」

「それに俺からすれば、幼馴染みで側にいたから流れで付き合ってしまったというように見える。お互いに同じ傷を持った仲間同士傷を舐め合って、気付いたら流れでと言った感じにな。違うか?」

「そ、それは……」


 言われてみるとそうかもしれない。


「ま、そんな奴等とは離れる事が出来たんだ。何かしら新しい目標を決めて過ごすとしようぜ」

「そ、そうだな……」

「その為にもまずは王都に行かないとな」

「あぁ。そうだな。王都に着いたらまずはパーティーの正規登録しないとな」

「おっ、覚えていたか。流石だ」

「当たり前だろ。風月の群狼を登録しないといけないからな」

「そうだな。正規登録しないとサービスを完全利用できないからな。覚えていて合格だ」

「ちゃんと覚えていたぜ!! 集会所じゃなくて集会場に行けば良いんだっけか?」

「その通りだ」


 集会場は王都にある冒険者ギルド本部の事だ。

 集会所よりも規模が大きいので集会場と呼ばれているのだ。


「まぁ着けば分かると思うが、その前に俺の方の用事を済ませて良いか?」

「あぁ。別に構わないが何かあるのか?」

「昔馴染みに顔を見せにな」

「成程……分かった。じゃあまずはそっちからな」

「助かる」


 僅かに微笑むロウエン。

 たがそれと同時に馬車が止まってしまった。


「爺さん、何かあったのか?」

「うーむ。どうやら倒木らしくてな。辛うじて通れるとは思うんだが馬が行こうとせんでな……」

「そうか。なら俺が切ろう」

「本当かい。いやはや、助かるよ」

「持ちつ持たれつだ」

「あ、俺も手伝うよ」


 王都に向かう為にまずは目の前の壁を打ち壊す事にしよう。

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