八話 傾国の美女
八話 傾国の美女
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「メティスさん。最近、随分と頑張ってるみたいね」
「ケレス嬢……いえ、アルベード公爵」
主人公ちゃん、この数週見なかった間に随分と顔つきが変わったような気がする。
この前まで、本当に幼い顔だったのに……
人は成長する生き物だと、そう実感させられる。
私が、止まった存在だからこそ。
「でも、あまり強引なやり方は感心しないわね」
「……今は非常時ですから」
でも、成長の過程というのは案外もろいものだ。
前世の私が、簡単に曲がったように。
「貴族たちの間で噂になっているわよ。王らしくないやり方だって」
「何が言いたいんです?」
隣で支えてくれる人がいれば、人は曲がっても持ち直せる。
王子は主人公のおかげで、かなり持ち直した。
「権力者が女に溺れ、言いなりになり国そのものが傾く。そんなことが、昔とある国であったらしいわ。王子は随分とあなたに入れ込んでるらしいじゃない、政治上大事な婚約者との婚約を破棄しようとするぐらい」
「……言いなりなんて。それに、私はこの国のためを思って」
でも、王子に主人公ちゃんを支える余裕はあるのだろうか?
今の二人の関係は、一方的な依存関係。
愛は双方向だが、人としての関係は確実に主人公が支える側だ。
「生まれてからずっと国を思い続けた王子より、あなたの方が優れているとでも? あなたと王子が仲良しやるのはご自由ですけど、国を巻き込んで一緒に沈むのは了承しかねるわね」
「……」
つぶれてしまうだろう。
きっとお互いにつぶれて、共依存でも何でもない、ただの傷のなめ愛になることだろう。
普通なら。
「そういえば、この国が悪化し始めたのも、あなたと王子が出会ってからかしら? 王子最大の汚点奴隷法もちょうど……」
「……違う!! 私は国のためを、王子の夢を……」
主人公とは、私の次いや私以上に世界から外れた存在だ。
私が外部からの意図せぬ異物だとしたら、彼女は意図して作られた内部の異物だ。
私は結果的に特別ではある、ただ主人公は特別であることをこの世界に強制されている。
「ふふふ、まぁ、頑張って」
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ーー演説ーー
この国は限界だ。
勝ち目の見えない戦争。
悪化の一途をたどる、奴隷や労働者への待遇。
苦しい経済活動の中、それすら吸い上げた商会。
人々の希望だった、かつて神童と、王国建国以来最高の天才と言われた、クリュセイス王。
彼はいつしか民の心も、貴族の心も、国そのものを見失い、一人の女に傾倒する愚王へとなり果てた。
この国は、もう終わってしまった。
だからこそ、私は……
ケレス・アルベードはここに『新王国』の建国を宣言します
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