四話 消えた少女

 四話 消えた少女

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 私の人生で、今日という日ほど衝撃を受けた日はありません。

 そして後悔した日も……


「え、イリスが行方不明? お父様いったいどういう……」


「仕事に来なくて確認したが、連絡が取れなかった」


「どうして……」


「わからない。ただ、いくつか心当たりは……」


 イリスが行方不明になった。

 その事実を聞いた瞬間、目の前が真っ白になり思考が完全に停止しました。


 行方不明ということは、そういうことなのでしょう。

 仕事がいやになって夜逃げしたとかなら、もしかしたら生きているなんてことも考えられますが……

 イリスは逃げる必要なんてありません。

 働きたくないぐらいのわがまま簡単に通りますし、彼女の一生を養うぐらいなんてことありません。


 何の後ろ盾もない少女が生きていけるほど、この国はいい場所ではありません。

 生まれてからずっとメイドだった少女は……

 イリスはすごい、何でもできて、天才だけど、だけど……


「実はイリスには……ケレス、お前の影武者を頼んでいたことがあったんだ」


「それって前のパーティーの……もしかしてそこで誰かに目をつけられたり、私がわがまま言わずに……」


「違うんだ……もっと前から……」


「え!?」


 つまりイリスが行方不明になったのは……

 いや、そもそも昔私があんなドッキリなんてしなければ……


 お父様もイリスのことは気に入っていた。

 はじめからお気に入りだったが、はじめと今では気持ちが違うと思う。

 最初は部下としての、今では私と同じように娘として。


「今回の責任はすべて私にある。今部隊を動かして国中を探してるところだが、結果は芳しくない」


「……そう」


 もし私としてさらわれたのなら、生きてると思う。

 偽物だとばれなければ。

 もしばれたら……


 その前に私が名乗り出て交換条件を。

 そんな輩が条件なんて飲むの?

 ああ、どうすれば……


 イリス、あなたならこんな時きっと……


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「お久しぶりです、伯爵」


「ケレス嬢!? なぜこちらに」


「ふふ、突然ごめんなさいね。でもこれで貸し借りなしってことでご勘弁を」


「は、はぁ」


「改めまして自己紹介を、私の名前はイリス。前職はとある公爵令嬢の影武者をやっておりました」


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