八話 始めてのお仕事

 八話 始めてのお仕事


 家庭教師として今日からお仕事開始です。

 ちなみに働くのは前世含めても今日が初めて、なのでさっきから心臓の鼓動が止まりません。


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「きょ、今日はよろしくお願いします」


 お母さまの働いている職場、身内の企業のようなものですが、それでも初めてのお仕事です。

 緊張しないわけがありません。

 しかも初めてのお仕事が、公爵令嬢の家庭教師って……ヒキニートだった私が、転生して随分と出世したものです。

 ま、つぶれることが確定した大企業に入社したみたいなものなので、喜んでいいのかどうか微妙なところがありますが。


「あなたがイリスちゃんね? お嬢様に気に入られるなんてすごいじゃない。それにリバーシもとってもお強いんですってね」


「いえいえ。えっと、私はサポートみたいな形で入ればいいんですよね」


 と、とりあえず嫌われてたりはしてないみたいですね。

 お嬢様が勉強しなくなった原因の遊びを教えたので、小言ぐらい言われるかと思ってましたが。


 まぁ、もともと真面目に勉強してなかったみたいですし、今ばかりはケレスちゃんの悪役令嬢の芽に感謝ですね。

 今からその芽をきれいに摘むわけですが。


「ええ、どうする? お嬢様と同い年ってうかがっていたから形だけで、隣に座って一緒に授業聞いてもらおうかと思ってたけど、想像よりしっかりした子みたいだし……」


「いえ、一緒に授業受けさせていただきます」


 私前世含めて結構生きてるけど、まじめに勉強なんてしたことないからね。

 それにこの世界のことも全然知らないしね。

 悪役令嬢を救おうなんて考えるなら、やっぱり教養の一つや二つはないとね。

 庶民がこのレベルの家庭教師に物事教わるなんて、ありえないはずだし。

 初めてのお仕事&初めてのガチ勉強だね、これは。


「そう?」


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「あ、いりすちゃん!!」


 とことこ、ぎゅっ


 ケレスちゃんが私のこと見つけると、満面の笑みでとことこ走ってきて、ぎゅっと抱き着いてきた。

 かわいい。

 これは守らねば。

 見た目もしぐさもかわいすぎる。


「ケレスちゃ……様お久しぶりですね」


「むー、けれすちゃんってよんでっていった」


「えーっと……」


 そんな、悲しそうな顔されても……


 さすがにこの場でちゃん付けはまずいよね。

 公爵家の中だし、ほかに家庭教師さん達もいるし……


 ちらっと家庭教師さんの方を見ると


「公の場でなければ大丈夫ですよ」


 あ、いいんだ。


「そ、そうなんですね。久しぶりケレスちゃん」


 もしかしてゲームでやってたイメージより、結構この世界って緩いのか?

 それともアルベード家が特別身分差を気にしないのか。

 いや、それなら悪役令嬢が、主人公いじめの音頭を取ってた意味が分からないし……


 貴族学校、学校は社会に出る前の予行練習だというし、だからみんな身分を繊細なまでに気にしてたのか?

 前世でも、先輩後輩とかいうわけわからない文化あったし。

 あれ、今考えると文化という名のいじめだったよね。


「いりすちゃん、だいすき」


 ……

 ……


 アレ? シコウカイロガ……


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