第14話 学芸会グリッドマン

 学芸会だかで『グリッドマン』の舞台をやらされました。

 グリッドマン役が俺。

 他の仲間はわからん。知った顔だったかもしれない。

 

 とにかく、俺は台詞を覚えていなかった。

 だから適当にアドリブ。

 けれど正規の台本に合わせて練習してきた仲間と合うはずがない。

 もう舞台はめちゃくちゃ。


「肝心のグリッドマンが崩れちゃいましたねー」


 となぜか本番中なはずなのにマイクで煽られる始末。

 発表が終わって泣き崩れる仲間たち。


 真摯に取り組んできたのだろうね。

 俺のせいでめちゃくちゃにしちゃったよ。


 舞台から観客席に戻って、皮肉を言われた。

 ぶっ飛ばそうと思ったけどやめた。

 代わりにこう言ってやった。


「いまのひどいグリッドマンに代わってお手本を見せてくれるそうです」


 マイクを取り寄せて、皮肉野郎に渡した。

 もちろんうまくできるはずもなく、俺よりももっとひどかった。

 笑いが起きる。

 ぷるぷる震えているそいつからマイクを取り返して発言。


「はい、いま笑ったヤツ、みんなやってみような!」


 途端に静まりかえる会場。

 どいつもこいつも人を笑うことはできるのに、笑いものにはなりたくないクソ。


「じゃあ本物に登場してもらいましょうか!」


 俺がマイクでうながし、舞台袖から人がゆっくりと現れる。

 緑川光(グリッドマンの声優さん)その人だ。

 なお、俺は顔を見たことがないので、のっぺらぼう……というわけではなく、なにやらケバい化粧をした美顔のおじさんだった。そんな印象はないのに、なぜこんな顔で夢にでてきたのかはわからん。

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