第73話 シャルロットの本領発揮

 一先ず黒ずくめたちを動けなくして、騎士団に匿名で通報する事にして、


「あの、こちらの女性はもしかして……」

「初めまして。シャルロットと言います」

「やっぱり! レナと申します。カーディさんの身の回りのお世話をさせていただく事になりましたので、どうぞ宜しくお願いします」


 レナさんとシャルロットが互いに挨拶を交わす。

 マリーには会わせない方が良いと言われていたけど、特に問題無いんじゃないかな?


「さて。とりあえず、宿に戻ろう……と言いたいところだけど、宿はキャンセルして他の所にしようか」

「えぇっ!? ど、どうしてですか!?」

「いや、襲撃されるところだったしね。良い宿をシャルロットが教えてくれたし、そっちへ行こう」

「……か、畏まりました」


 レナさんが宿の変更を渋ったけど、シャルロットがお勧めしてくれる宿へ。

 ついでに、途中のゴミ捨て場でゴミを回収もして、就寝する。


 翌朝。一人一部屋で、シャルロットも含めて五部屋で泊まったのに、僕の部屋の狭いベッドで、レナさんを除く全員が寝ていたのは何故だろうか。


「……本当なら、私もその中に混ざっていたハズなのに……こほん。おはようございます、カーディさん」

「おはよう、レナさん。ほら、皆起きて!」


 とりあえずクリスは寝相が酷くて、色々と見えちゃっているし、マリーはくっつき過ぎで、シャルロットは……何て所に居るんだよっ!

 それぞれ支度を終え、皆で朝食も済ませた所で、


「少し調べましたが、クリスさんの故郷へ行くのなら、馬車より歩いた方が早そうですよ」


 と、シャルロットから提案が。

 何でも、乗合馬車のルートが無い場所らしく、馬車で一番近い街へ行くにしても、結構な遠回りらしい。

 ただ、シャルロットはストレージに入っていたから知らないけど、襲撃されているんだよね。

 多少遠回りになっても、馬車の方が良い気もする。


「クリスは、安全に馬車の方が良いかなー。でも、お兄ちゃんを早くパパに紹介もしたいし……迷うー!」

「私は徒歩でも大丈夫だと思うわ」

「私は……カーディさんにお任せします」


 それぞれの意見を聞き……徒歩で行く事に。

 道はシャルロットが居れば迷う事はないし、人が近付いてきても、分かるしね。

 ……昨日みたいに、シャルロットが別の事に気を取られていなければ。

 街を出る前に昨日とは別のゴミ捨て場に寄り、ゴミを回収して門から出る。


「では、ここからは私がご案内しますね」


 シャルロットに先導してもらい、暫く街道を進むと、草むらの中へ。

 しかし、少ししてシャルロットから警戒の声が届く。


「後ろから大勢の人が来ていますね」

「大勢って、どれくらい?」

「ざっと、二十人は居るかと」

「え……流石にこんな所へ来る人なんて居ないだろうし、僕たちを狙っているって事か」


 とりあえず、氷の魔銃に魔力を注ぎ始めたところで、


「私に任せて」

「マリー? でも人間相手に攻撃魔法って放てるの?」

「今は放てるわよ。私の所有者はご主人様だもの。けど、直接攻撃しなくても……うん、オッケー」


 マリーが地面に手を着き、小声で何かの魔法を使う。


「さぁ、後ろは気にせず先へ進むわよ」


 マリーが腕を組んで来て、グイグイと引っ張ると、反対側の腕にシャルロットが。問答無用で背中にクリスが飛び乗ってくる。


「あの、後ろの人たちは良いのでしょうか?」


 僕もレナさんと同じ疑問を持っているんだけど、


「うわぁぁぁっ!」

「クソッ! いつの間に落とし穴なんて……」

「げっ! こっちもか! どれだけ広い落とし穴なんだよっ!」


 後ろから悲鳴が聞こえてきた。

 どうやら、あの時マリーが地面に穴を開けていたらしい。

 僅かな短時間で、あんな事が出来るのか。


「あ、正確には地面の表面には干渉せずに、地中を空洞にしたのよ。見た目はそのままで、何人かが乗ると崩れるようにね」

「へぇー、凄いね……って、よく僕が考えている事が分かったね」

「ふふっ、どれだけ一緒に居ると思っているのよ。貴方が考えている事なんて、直ぐにわかるわよ」


 マリーがくすくす笑っていると、


「クリスだって、お兄ちゃんが考えている事がわかるもん!」

「わ、私だって分かりますよっ! 今はきっと、腕に当てている私の胸の事で頭がいっぱいのはずです!」

「いや、違うから! というか、当てなくて良いからっ!」


 クリスとシャルロットが対抗する。

 いや、対抗なんてしなくて良いから。

 レナさんなんて、そんな気持ちを欠片も持ち合わせずに……


「ちっ……」

「えっ!?」

「どうかされましたか? カーディさん」

「い、いや、何でもない……です」


 レナさんに目を向けると、一瞬普段のレナさんからは想像出来ないような怖い顔に見えた。

 気のせい……気のせいだよね?

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