第66話 ベルナルド邸

「カーディさん。今日はこちらの部屋をお使いください。他の皆さんにも、それぞれ一部屋ずつご用意しておりますので」


 ベルナルド伯爵とレナさんに言われ、今日は屋敷に泊まって行く事に。

 宿泊代の節約の為、いつもクリスと同じ部屋に泊まっていたので、何気に一人一部屋というのは初めてかもしれない。

 とはいえ、クリスは隣の部屋で、マリーはその隣の部屋となっているけど、シャルロットに部屋は無い。

 というのも、ベルナルド伯爵とレナさんが嘘を吐いている可能性もあると、マリーに指摘され、シャルロットをストレージから出さなかったからだ。

 僕からすると、ベルナルド伯爵は表情の変化が少なかったから分からないけど、少なくともレナさんが嘘を吐いているようには見えないんだけどね。


「カーディさん。お食事まで少し時間がありますので、先にお風呂へどうぞ。ご案内致しますので」

「分かりました。ちなみに……男女別でお風呂があったりします?」

「勿論です」

「分かりました。では、クリスやマリーにも声を掛けるので、少し待ってください」


 扉越しにレナさんと会話し、荷物を纏め……って、殆どがストレージに入っているから、荷物なんて殆どないか。

 部屋を出て、廊下で立っているレナさんに待ってもらうと、先ずはクリスの部屋へ。


「クリス。お風呂へ……」

「お兄ちゃーん! 見てみて! ベッドがフカフカで、大きいの! 防音もしっかりしていそうだし、これなら色々出来ちゃうよっ!」

「色々……って?」

「……こほん。な、何でもないよ? それより、クリスの部屋に来てくれたっていう事は、その……いつもみたく一緒に寝るっていう事だよね?」

「いや、そうじゃなくて、夕食の前にお風呂へどうぞって、レナさんが待ってくれているからさ」

「そ、そうだよね! 先ずは身体を綺麗にしないといけないよね!」


 クリスがお風呂へ入るだけで、かなり気合が入っているけど、これだけ大きな屋敷のお風呂だもんね。

 たぶん、僕の実家よりも大きな屋敷だと思うし、こんな所のお風呂へ入れる事がなんてそうそう無いだろうから、気合も入っちゃうのも分かるかな。

 一先ず、クリスが準備をしているあいだにマリーを呼びに行く為、隣の部屋へ入ると、


「マリー。お風呂へ行こう……」

「きゃー。ご主人様のえっちー。私が着替えているタイミングを見計らって入って来るなんてー」

「えぇっ!? ご、ごめん」

「さぁ、ご主人様。私のこの綺麗な脚線美と、あのメイドの脚……どっちが好みなのかしら?」

「ちょ、マリーっ!? そんな事より、服を着てよっ!」

「大丈夫。下着は身に着けているわ。それより、どっちなの? ほら、ちゃんと見なさいよねっ!」


 近い近い近いっ!

 というか、下着姿で迫って来ないでっ!

 マリーは未だに僕の事をご主人様だなんて呼び方をするし、色んな所が見えちゃっているし、これじゃあ、僕が変質者みたいじゃないかっ!


「もー、お兄ちゃん? クリスを放って何処へ……ちょっと、お兄ちゃんっ! マリーさんと何をしようとしているのっ!?」

「僕の方が聞きたいよっ! 僕はお風呂へ行きたいだけなんだってば!」

「お風呂!? それを先に言いなさいよねっ! さぁ行くわよっ!」


 そう言って、マリーが僕の手を取り、そのまま部屋から出ようとして、


「って、待って! 服っ! マリーは服を着てっ!」


 逆に僕がマリーの腕を引っ張り、動きを止める。

 そんな格好で人の家を歩こうとしないでよっ!

 一先ずマリーが服を着た所で、


「お待たせして、すみません」

「いえいえ。楽しそうな声が聞こえて来て、本当に仲が宜しいのだなと、改めて思いました。では、こちらへどうぞ」


 レナさんに案内されて、大きなお風呂へ。

 やっぱり貴族の屋敷なだけあって、お風呂が豪華だ。

 男女別は当然として、客人用のお風呂に、従業員用のお風呂と、どれだけお風呂があるのやら。

 ……ただ、男女で入り口が分かれているのを見た途に、クリスとマリーのテンションが下がったのが不思議だけど。

 広いお風呂に一人で寛いでいると、


「カーディさん。お身体を綺麗にさせていただきますね」


 何故かメイド服姿の……いや、バスタオルを身体に巻いたレナさんが現れた。

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