第64話 風のレナ
「わざわざ来てもらって、すまないね。私がベルナルドだ」
「旅の鍛冶師カーディと、同じくクリスティーヌです」
杖をついた白髪のお爺さん、ベルナルド伯爵に挨拶をすると、僕たちにお茶を出してくれた普通の格好のメイドさんが部屋を出て行く。
一方で、露出の激しいメイドさんは残っているんだけど、
「さて。単刀直入に話そうか。魔導少女はどうしたのかね?」
いきなりシャルロットの話をし始めた。
「すみません。何の事だか……」
「はっはっは。惚けなくても良いよ。これでも私は高位の魔法使いだ。……遠見の魔法も使う事が出来る程にね」
遠見の魔法……そんな魔法があるなんて聞いた事がない。
このロールシア国に伝わる魔法なのか、ベルナルド伯爵が作り出した魔法なのか。それとも、ハッタリか。
伯爵の言葉が真実か否かを見極めるため、無言で様子を窺っていると、
「ふむ。私の言葉が信じられないかね? ならば、≪エクス・ステータス≫……ふむ。ゴミ保管スキルというのが、ストレージスキルのようだな。そのストレージの中に、二体の魔導少女が居るね。名前はシャルロットとマリー……そうだね?」
騎士たちが使ったマジックアイテムよりも詳細に僕のスキルについて言い当て、シャルロットたちの事まで言及されてしまった。
くっ……伯爵自身が高位の魔法使いだというのは本当なのか。
「……シャルロットをどうする気なんですか? その回答次第では、こちらも覚悟を決めます」
「む? どうするも何も、私は何もしないが?」
「え? なら、どうしてシャルロットの事を聞いたんですか?」
「君が例の魔導少女の所有者がどうかを、念の為に最終確認したくてね。……レナ。自己紹介を」
伯爵に言われ、先程の露出メイドさんが一歩前に出る。
「レナと申します。風魔法を得意としております魔導少女です。どうぞ宜しくお願い致します」
「魔導少女!? えっ!? このメイドさんが!?」
「はい。普段はご主人様のメイド兼護衛をさせていただいております。ちなみに、この衣服生地が少ないのは、護衛として敵の目を私に引きつける為なんですよ? カーディさん」
そう言って、レナさんが短いスカートを少しだけチラッと上げてきた。
変なメイド服だとは思っていたけど、そんな意味が……って、痛いから。
どうして、クリスは僕の腕を抓るのさっ!
「ふーんだ」
いや、目の前にシャルロットを壊した内の一人が居るんだよ!?
こんな事をしている場合じゃないんだってば!
逃げ出す為に扉の位置を……ダメだ。
扉側にレナさんがいるから、窓を突き破って……
「待ちたまえ。君は……何か勘違いをしていないか?」
僕が考えていた事が読まれていたのか、伯爵から待ったが掛けられる。
「勘違いとは?」
「シャルロットという名の魔導少女が、レナの姉にあたる事は知っている。そして、各国が協力して、それぞれの保有する魔導少女を使って破壊させた事も」
「だったら、そのレナさんもシャルロットを攻撃した内の一人ですよね。だから……」
「いや、違う。それに参加したのは、各国が保有する魔導少女だと言っただろう。このレナは、私の……というか、私の父が個人で保有していた魔導少女だ。つまり、その破壊活動には参加していないという訳だ」
個人で所有している魔導少女!?
いや、貴族ならあり得るの?
かなり財力がありそうな家だし……なくはないのかな?
「私たちに敵意が無いのは分かってくれたかね? そもそも、私はレナに何もさせていないだろう? 風魔法を得意とするレナは、スピードが速い。その気になれば、君たち二人を気絶させるくらい訳は無いのだから」
「た、確かに」
とはいえ、鵜呑みには出来ないので、向こうの言葉の裏を取る為、ゴミスキルでマリーを呼び出す。
「あら? 随分と綺麗な部屋ね……って、ここは? 目の前に私の仲間が居るんだけど、どういう状況なのかしら?」
「色々あるんだけど……マリー、先ず一つ教えて欲しい」
「そこに居るレナさんは、シャルロットの破壊活動に参加していたの?」
「……会った事が無いから、参加していないんじゃ無いかしら。初めまして……よね?」
マリーがそう言うと、
「はい。レナと申します。以後、お見知り置きを」
レナさんが挨拶と共に、深々と頭を下げた。
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