第54話 小休憩
「シャルロット。そろそろ休憩にしようと思うんだけど、どこか良い場所はある?」
「そうですね……少し行くと、小さな湖がありますので、そこはどうでしょう?」
「分かった。じゃあ、そこまで行って休憩にしよう」
「……も、もう少しなので頑張ってください」
シャルロットが心配そうにしながら、励ましてくれるんだけど、何気に僕の体力が限界だったりする。
というのも、シャルロットとマリーとクリスが謎の戦いを始め、僕も変に巻き込まれてしまった。
その結果、左腕にシャルロット、右腕にマリーが抱きつき、背中にクリスがおぶさってくる事に。
その状態で暫く森を歩いて……今に至っている。
「お兄ちゃん。ごめんね……クリスの背中に乗る?」
「いや、大丈夫だよ。ありがとう」
「ここが森の中でなければ、風魔法で吹き飛ばすんだけど……残念ね」
流石に今は、全員僕から離れてくれているけど、女の子に背負ってもらうのは男としてどうかと思うし、マリーさんの言う吹き飛ばすってのは、流石に遠慮願いたいかな。
一先ず、頑張ってあるくと、シャルロットの言っていた湖が見えてきた。
「着いたー!」
草むらに腰を下ろし、仰向けに寝転ぼうとすると、何故か頭に柔らかい物が触れる。
何かと思って身体を起こそうとすると、
「大丈夫です。ゆっくりお休みください」
いつの間に居たのか、シャルロットの顔が視界に広がっていた。
たぶん、僕より少し上の十七歳か十八歳くらいの銀髪美少女が、優しい瞳で僕を見つめてくれている。
ちょっとドキドキしていると、
「シャルロットさん! ズルい! お兄ちゃんに膝枕なんてっ!」
「お姉様。カーティスが寝転ぼうとしたタイミングと位置を計算して、完璧なポジショニングを……流石です」
クリスとマリーの声が聞こえてきたんだけど、膝枕っ!? じゃあ、この頭に触れている柔らかい物って、シャルロットの脚なのっ!?
慌てて起き上がろうとしたけど、
「大丈夫ですから、ゆっくり休んでください」
「……あ、ありがとう」
優しく止められてしまった。
結局疲れていた事もあり、そのまま少し眠ってしまい……目覚めた時にはマリーやクリスも含めた三人の顔が視界に映る。
うーん、三人とも近過ぎない?
「おはようございます。少しは疲れが取れましたか?」
「うん、ありがとう」
「お休みになられる時は、いつでも言ってくださいね。その、膝枕ではなく、抱き枕でも構いませんし」
いや、抱き枕は流石にダメだと思うんだけど、
「お兄ちゃん。シャルロットさんは大き過ぎるから、抱き枕にするならクリスが丁度良いと思うの」
「……確かに柔らか過ぎて窒息したら困るわね。かと言って、お嬢ちゃんだと抱き心地が悪そうだから、ここは私が抱き枕になってあげるしかなさそうね」
いや、クリスもマリーも何を言っているの!?
「大丈夫です。私が本気を出せば、カーティスさんの体温や心拍数に、呼吸から脳波までチェックして常に快適な睡眠を提供する事が出来るので、窒息なんて事はあり得ません」
いや、シャルロットが何を言っているかも分からないんだけどっ!
体温はともかく、脳波って何なの!?
とりあえず起き上がると、ストレージから鉄の鍋や食材の入った箱を出す。
元々は鍋も箱も壊れていた物だけど、スキルで修理したから新品同様なんだよね。
いつものように、僕とクリスとで食事の準備を進めていると、
「カーティスさん。わ、私も手伝います。というか、私が作ります!」
シャルロットが手伝うと言ってきた。
「ダメーっ! これは、お兄ちゃんとクリスの役割だもん。ねー、お兄ちゃん」
「えーっと、手伝ってもらうくらいは良いんじゃないかな?」
「むー……じゃあ、このニンジンの皮を剥いて」
僕の言葉で、クリスが渋々といった様子でシャルロットに野菜とナイフを渡す。
「ま、任せてください。美味しいご飯をカーティスさんに食べていただくんです」
そう言って、シャルロットが恐る恐るニンジンの皮を剥く……?
「あの、シャルロットさん。ニンジンの皮を剥いて欲しかったんだけど……」
「うぅ……まさか、料理がこんなに難しいなんて。知識は……知識はあるんですっ!」
シャルロットが手にしていたニンジンは、鉛筆みたいに細くなっていて……意外な事に、シャルロットは不器用だった。
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