第37話 魔物の素材の買取
「すみません。魔物退治の依頼を請けて戻ってきたんですけど」
「はーい。では確認しますので、そちらの部屋にお入りくださーい」
冒険者ギルドの受付のお姉さんに言われて奥の部屋に入ると、大きな机が置かれ、壁に色んな刃物が掛けられていた。
随分と物騒な部屋だなと思っていると、
「よう、兄ちゃん。初めて見る顔だが、D級に昇格したばかりか? 魔物を倒した討伐証明の部位も血が付いているし、素材を買い取る為に解体したりするだろ? ま、要はそういう部屋さ」
筋肉隆々のベテランって感じのオジサンが現れた。
「とりあえず、何も持っていないように見えるが、ストレージスキル持ちか? とりあえず出してみな」
「分かりました。そのまま出した方が良いですよね?」
「……そのままじゃなく出せるのか?」
オジサンに訝しげな表情を向けられつつ、先ずは沢山倒した狼の魔物を七体出す。
「おー、ワイルドウルフか。なるほど。ストレージスキルを持っている上に、氷魔法を使えるんだな。それなら、魔物退治でかなり儲けられると思うぜ」
「と、言いますと?」
「容量に限度があるとは言え、先ずストレージスキルで大量に運べるだろ。あと、こいつらみたいに、丸ごと収納してしまえば、現場で解体の手間も不要。更に氷魔法で凍らせているから、ストレージスキルの中で腐敗が進み難く、ギルドへ素材の質が良い状態で持って来れるから、買取価格も高くなるって訳だ」
なるほど。ゴミ収集だけかと思っていたけど、沢山使い道があるんだね。
けど、ゴミスキルでストレージに収納している間は時間が経過しないから、凍っていなくても腐敗しないんだけど……他のストレージスキルは違うのかな?
「よし。何も状態が良いから、これだと銀貨十四枚ってとこだな」
「じゃあ次は……」
「は? 次って、まだあるのか? このワイルドウルフだけでも、かなりの量なんだが」
「はい。結構、倒してきたので」
ウサギみたいな魔物に、大きなイモムシみたいな魔物。巨大なカエルやゴブリンなどを出していくと、
「……兄ちゃん、凄えな。こんなに大きな容量のストレージを持っているなら、運搬専門になった方が儲けられるんじゃないのか? いや、もちろん魔物退治でもやっていけるが」
オジサンが呆れたというか、驚きを隠そうとせずに、魔物の死骸が並んだ机を見つめる。
「色々ありまして、僕たちは魔物退治の方が良いんですよ」
「そうか。まぁギルドとしても、良質な素材が沢山手に入るから、良いんだけどな。それに、魔物の死骸は他の魔物を集めてしまう事もあるし、こうして丸ごと持ち帰ってくれるのはありがたい」
「そうなんですか?」
「あぁ。仲間の死骸を食うのか知らないが、魔物の死骸に魔物が集まるのはよく聞く話だぞ。ところで死骸はこれで全部か?」
「あと、次が最後なんですけど、その、ちょっと実験……こほん。色々あって、バラバラになってしまいまして」
「ふむ、勿体ないな。とりあえず見せてくれ」
最後に、実験でゴミ分別スキルを使い、部位毎に分かれてしまった狼の魔物を出していく。
「ほう。この毛皮はワイルドウルフか。めちゃくちゃ上手く剥いだな。普通、素人でここまで傷を付けずに剥いだり出来ないぞ? 兄ちゃんは魔法使いって感じだし、そっちの嬢ちゃんがやったのか?」
「そ、そんな感じです」
「ふむ。良い腕だな。牙も傷付いていないし、肝や心臓も非常に綺麗だな。俺の弟子にしたいくらいだ」
クリスがキョトンしていてるからか、オジサンがウインクして……クリスが僕の背中に隠れたっ!
まぁ確かに不気味なウインクだったけど、オジサンなりに気を遣ってくれたんだと思う。……たぶん。
ゴミスキルには、魔物の血も収納されているんだけど、流石にそんな物は不要だろうと考え、一先ずこんなところだろう……と思った物を出すと、
「ん? ワイルドウルフの魔石は無いのか?」
「魔石?」
「あぁ、小さな石みたいな物なんだが、魔力の伝導率が良くて……まぁ要はマジックアイテムの材料になるんだよ。魔物の素材において、だいたい高価な部類に入るんだが」
聞き慣れない言葉が出てきた。
一先ず、ゴミ整理スキルで探してみると、魔石があったので出してみる。
「あ、これかな?」
「おぅ、これこれ。魔物によって大きさも種類も違うが、一般的に強い魔物ほど、大きな魔石が体内にあるんだよ」
「へぇー、そうなんですね」
「あぁ。巨大な魔石からは、魔鋼鉄って呼ばれる特殊な金属が作れるから、買取額が一気に跳ね上がるぜ」
なるほど。巨大な魔石は高く買い取って貰えるのか。
「……って、魔鋼鉄!?」
「あぁ。魔力を流し込む事で、色んな事が出来る、未来の金属って言われているな」
いや未来というか、むしろ大昔からあるみたいだけど……意外な所から、シャルロットを修理する為に必要な材料の情報が判明してしまった。
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