第112話 アリスの誕生日②
リアム様が帰った後、今年はタロウからも誕生日プレゼントをもらった。
「アリス、誕生日おめでとう。これ……」
「えっ、タロウ……プレゼントをくれるの?」
タロウからもらったプレゼントは、
このペンダントは防御力がアップするアイテムで、テオと一緒に魔道具屋を何軒も回って見つけたんだって。
「ふふ、嬉しいな。タロウ、ありがとう!」
「うん。フフ」
早速、ペンダントを付けたよ。
◇
夜は、エリオット様のお屋敷に招待されています。
誕生日が来る前に、アルバート様とロペス様からお礼をしたいって言われたの。何でも、スタンピードの時に付けた片手剣の『聖魔法』がまだ消えていないとか……うん、テオとタロウの剣の『聖魔法』もまだ消えてないですよ。
『聖魔法』の付加はいつ消えるか分からないから、お礼なんていりませんって言ったら、ロペス様が「アリス、『聖剣』を手に出来るなんて嬉しいんだよ!」って言うの。
「「ええっ! 聖剣?」」「ん……??」
それって、物語に出て来る剣ですよね? タロウは『聖剣』を知らないみたいで、首を傾げた頭の上に『?』マークが見える。
「ブハハハッ! ロペス殿、『聖剣』なんて物語に出て来る架空の剣じゃないですか!」
テオが、ロペス様に
そっか~、私が付けた『聖魔法』が仕事をしているなら嬉しいな。
「テオ殿、私達の剣に『聖魔法』の付加が付いていることは秘密にしている。騎士団で知っている者は、私達3人だけだ」
「エリオット様……分かりました」
剣に付いている『聖魔法』のことは言わないように、ってことかな? あっ、リアム様と同じで、人前で『付加魔法』を使わないように、ってことですね。
◇
それで、お礼を兼ねて、私の誕生日にエリオット様のお屋敷に招待されました。
マナーが必要な料理が一皿ずつ出て来る食事会じゃなくて、アルバート様とロペス様が持ち込んだ料理がテーブルに並べてあるの。その料理を執事のトーマスさんが順番に持って来てくれて、食べたい量だけ取り皿に入れてくれる。
アルバート様のデイル領とロペス様のラミレス領の特産品なのか、見たことのない赤い野菜や黒や白のキノコの料理があって、トーマスさんに全部の料理を少しずつお皿にのせてもらった。ふふ、ミアの気持ちが分かるな。
飲み物はエリオット様が用意してくれて、テオが旨い酒だと喜んで飲んでいる。ふふ。タロウと私は果実水です。
今、アルバート様とロペス様は<リッヒダンジョン>の53階を探索していて、『聖魔法』付の剣でサキュバスに攻撃すると、いつも以上のダメージを与えていると言う。
「えっ、アルバート様、「サキュバスは魔法で倒さないんですか?」」
目をキラキラさせたタロウと声が重なった。
「ああ。宮廷魔術師もいるが、彼らには補助をしてもらっている」
複数体出て来た魔物を『スリープ』で寝かしてもらったり、魔法の詠唱を止めてもらったりしているそうです。
高ランクの『回復魔法』を持つ宮廷魔術師も同行しているから、『魅了』や『石化』の状態異常も治してもらえて、順調にダンジョンの探索が進んでいるとか。
「そうだ、アリス達は知っているかな? サキュバスの『魅了』はね、『スリープ』と同じである程度時間が経てば元に戻るし、ダメージを受けて戻ることもあるんだよ」
「ロペス様、『スリープ』と同じって……『魅了』も殴ったら治るんですか?」
「えっ、治るけどそんなことはしないよ~。フフ、アリスは面白いことを言うね」
ロペス様、笑っていますけど宮廷魔術師のMPが無くなったら……ねぇ。
いつも思うけど、楽しい時間はあっという間に過ぎるな~。
エリオット様のお屋敷からの帰り道、夜空を見上げて2つの丸い月を眺めていたら、「何で月が2つもあるの?」ってタロウがテオに聞いている。タロウの世界では、月は1つなんだって。
「ん……タロウ、この世界の月は昔から2つあるんだ」
「……そうか」
テオ、それって答えになってないよ……まあ、いいけど。
今日は、久しぶりに執事のトーマスさんとメイドのステラさんに会えて嬉しかった。タロウも紹介できたしね。テオがやたらとステラさんに話し掛けていた気がしたけど……ふふ。
◇◇◇
学園の『魔物討伐の実習』は、20階のワープを通して終了した。それ以上ダンジョンを攻略しないのは、20階から出て来るコカトリスの嘴攻撃で受ける『石化』の治療が問題なんだろうね。
フランチェ先生に「アリスの『回復魔法』で『石化』を治せないですか?」と聞かれたので、「聖女じゃないです」って答えたら、先生は「……聖女? そうですか」と言ってそれ以上何も言ってこなかった。
嘘を付くのが嫌だったから見当違いな返事をしたけど、出しゃばって「治せます」なんて言ったら大変な目に遭うって私でも分かるからね。
そして、学園の試験もなんとか無事(一般教養の試験結果は変わらず『D』だった)に終わって冬休みに入った。平日はタロウと私が店番をして、テオが1人で薬草採りやダンジョンに入っている。
タロウに、「テオと一緒にダンジョンに行っても良いよ」と言っても、私1人に店番はさせられないって言うの。もう誘拐犯や商人は捕まったのにね……タロウは言わないけど、怖かったんだと思う。
だから、平日の薬草集めはテオに任せて、週末は3人でダンジョンに入っている。冒険者ギルドでダンジョンの50階までの地図も買ったしね。
今は44階辺りで、そろそろヴァイパとサキュバスが出て来る階層になる。
「テオ、50階のワープを取りに行こうよ」
「タロウ、45階から出て来るヴァイパとサキュバスに慣れてからだな」
「そうだよ。タロウ、ゆっくり行こう~」
ダンジョンの53階を探索している騎士団に追いつく訳にはいかないから、ゆっくりでいい。
私は、リアム様から宮廷魔術師の内定をもらって後ろ盾になってもらったから、もう魔法を隠す必要は無くなったけど……あっ、『付加魔法』は隠すんだっけ。
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