ワールドリオーダー

春嵐

ワールドリオーダー

『おめでとうございます。あなた方に世界の命運は握られました』


「はい」


「うん」


「ええ」


『ではお三方の理想の世界をご提示ください』


「いろんな可能性を選択できる社会」


「可能性?」


「選択?」


「そう。選択することができる社会がいい」


「自由ってことか?」


「いや。真逆。限られた選択肢のなかから選択ができるってことだから、自由ってわけじゃない」


『次の方は?』


「俺か。俺は、自由がほしい」


「自由ですか。それはとても良いことです」


「おい。こいつがそんな良いこと言うわけないだろ。まず聞いてみようか。お前の自由はどんな自由だ?」


「他人に危害を加えてもいいし、逆に他人から攻撃されるスリルもある。そんな自由」


「うわあ」


「ほらな。こいつがそんな都合の良いこと言うわけないんだ」


「他人に危害を加えない程度の自由なんて、自由とは呼ばねえんだよ」


「世紀末みたいな思想じゃねえか」


『では最後の方』


「わたし。わたしは」


「ぜってえお花畑みたいなこと言うぞこいつ」


「だいたいなんて言うか分かるな」


「わたしは、争いのない平和な世界がいいです」


「ほらきた」


「なんと素晴らしいお花畑だこと」


「え、だめですか?」


「争いのない世界ってなんだよ。全員が全員同じ顔同じ名前で同じことすんのか。それじゃそこらへんの微生物のが違いのある分ましだよ」


「争いは好きじゃないが、完全に争いをなくすってのは選択の余地がなくてだめだな」


「うええなんでですか」


『お三方の理想の世界は把握しました』


「さて、どうなる?」


「どうにもならんだろ。選択肢のほしいやつ、自由がほしいやつ、争いのないのがいいやつ。全員ばらばらだ」


『お三方の理想の世界を合体させて顕現させます』


「おっ」


「えっ」


『選択の余地があり、そこそこ自由で、争いをなくそうとする意思のある世界』


「あ、ああそうか。意外と三つとも矛盾してないのか」


「いやいやいや」


「矛盾してます。平和と自由」


『自由も平和も、可能性として選択が可能な世界になります』


「そいつはいいな。選択の余地がある」


『よろしいでしょうか?』


「いいぜ。自由ならなんでも」


「まあ、平和なら、とりあえずよしとします」


『では、世界が創世されます。ようこそ、新たな世界へ』


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