第26話


今年もその日が来てしまった。





その日とは、僕の誕生日である。



めでたい?何がめでたいものか。良いことなんて何もない。


誕生日だからと言って宝くじが当たる訳でもない。

愛してくれる人が突然現れる訳でもない。

誕生日だからって別にお金も愛も増える訳じゃない。

増えるのは年齢だけだ。



なんなら愛してくれる人はむしろ誕生日が来る度に減っている。


7年前の誕生日に父方の祖父を亡くした。


その翌年、6年前の誕生日は同じく父方の祖母を亡くした。



その後も毎年、僕の誕生日は家族が次々亡くなっていった。


5年前は母方の祖父。

4年前は父。

3年前は母方の祖母。

2年前は母。


昨年は妹を失った。


僕にとって誕生日は何も得るものがない、何かを失うことない日だ。

何も良いことがない、最悪な日である。


家族はもう誰も居ない。

これ以上誰も失なわないという意味では今年はだいぶマシかもしれない。



今年の誕生日は平日だ。なので普通に仕事がある。

誕生日だから特別に休みなんてことはない。


夜は天気が悪くなるらしいので早めに帰ろうと思った。




が、間に合わなかった。雨の中帰るはめになった。やはり良いことなんて無い。

愚痴を言いながら帰る。何故毎年こんな感じなんだ

良いことが無いどころか悪いことばかり起きる。

これだけずっと嫌な思いをしているのだから1度くらいくじか何か当たっても良いじゃないか。


そんな小言を延々つぶやく。

空のゴロゴロ...という音にかき消される。



その時。


一瞬、上空で稲妻が走るのが見えた。




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