二百七十三話 魔王城6

「陰険な場所ね。」



「ああ、どこから敵が来るか

わからねぇから落ち着かねぇな......」



「しかし......敵の気配など

微塵も感じ無いのだよ。」



魔王城へと侵入した計20名の

職業者達は、入り口に堂々と

そびえ立つもう一つの大きな扉を

開ける。



タタタッ



まず最初にカクバ率いる戦士が

中へと入り、狙撃手、弓使い、

魔法使いなどがその後に続く。

そして、その部屋に設置されて

いた階段を上り、二階へと

進む。



「結構入り組んでな。魔王は

どこにいんだよ。」



そう呟きながら、更に城の奥へと

カクバは突き進む。



「......長老......その目使って大丈夫......?」



後ろでは鬼灯が、常に何かを占う

ことの出来る右目の魔法を

発動させようとしている長老を

心配していた。



「平気じゃよ。」



「.....それ......魔力使いすぎる......

無理は駄目......」



「ははは......心配ありがとう。

じゃがの、ここは無理をするとき

なんじゃよ。」



「......でも......」



「年寄りにも花を持たせておくれ。」



「......」



長老は心配そうな表情で

見てくる鬼灯に苦笑しながら、

右目の魔法を発動させた。



ちょうどそのころ、先頭を行く

カクバ達は明らかに今までの

扉とは違う、鋼色の扉の前に

たどり着いていた。



「俺の勘がここだって言ってるぜ。」



「お前の勘は当てにならないが、

俺もこの扉の奥が怪しいと

思うのだよ。」



「......いよいよ......魔王......」



「長老! 開けていいか?」



「待つんじゃ、カクバ君。

この城に来た目的が

もう一つあったじゃろ。」



「ああ、ルドルフとサッちゃんの

救出だよな。けど、先に魔王を

ぶっ殺した方が早いぜ?」



「じゃがそうこうしておる

うちに、二人の救出が手遅れに

なってしまうやもしれぬ。」



「それなら、二手に分かれれば

いいじゃない? 魔王を討伐する組と、

二人を救出する組に。」



「......そうだな。」



「なら、しばし待っておれ。

今わしが二人の居場所を──」



『その必要はない。』



すると、どこからかあの声がする。



「魔王!? てめぇどこにいんだ!!」



カクバがその声を聞いて吠えたか

と思えば



ギィーーーーー



と、カクバ達の前に立ちはだかって

いた扉や、周りの壁が姿を

変えていく。



その光景に皆が困惑している中、

再びその声がこの城中に響き渡る。



『よくぞ来た。我が玉座の間に。』



目の前にあった扉は姿を消し、

壁もいつの間にか自分達を

逃がさないように後ろにある。

それはまるでフィールドだった。



人間と魔族が決着をつけるために、

魔王が用意した華やかなステージ

であることを、ここにいた職業者達は

悟ったのだった。






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