二百六十一話 フリーズランド21

もしも自分が頭の中で想像している

ことが正しいのであれば、

今自分が踏んでいるこの

氷の地面は......

そう思うと体が無意識に

身震いしてしまう。



「観念したかや?

貴様がここから出る術など

ありんせん。ここから出るには

わらわの魔法が必要じゃからな。

じゃから、大人しくこの次元の

一部となりんす!」



吹雪姫は煙のように

その場から姿を消し、

タチアナに接近する。

そして、タチアナを

凍らせるために一瞬だけ肉体を

実体化しようとしたが



「石化切烈!」



その一瞬を捉えようと

タチアナも反撃した。

が、またもや吹雪姫は

タチアナの攻撃が当たる直前で

再び気体状となる。

しかし、逆に吹雪姫の手も

気体状となってしまいタチアナには

触れることができなかった。



「まだじゃ!」



だが、吹雪姫は諦めることなく




「アイス・ウィンド!」



マイナス100度の冷たい風を

タチアナに放つ。



「チェイン! シャドーウォール!」



タチアナはそれをなんとか

一瞬だけ影の壁を生成して

防いだ。



「ほう......意外にやるの。メスよ。

こんなに体を動かしたのは

久しぶりでありんす。

近頃は侵入者など

おらなかったからのう。」



「......勘違いをしているようだが、

私たちは別に君に危害を加える

者ではない。」



「たわけ。嘘をつくな。どうせ、

この島にいるわらわの仲間を

奪いにきたのじゃろう?」



「仲間?」



「あのオスが言っていたでは

ないか。この島の木が欲しいと。」



「......まるでその言い分では

木が君の仲間みたいではないか。」



「そうじゃ。この島にあるもの

全てがわらわの大切な仲間じゃ。

もう誰にも穢させはせん。」



「......待ってくれ。そういうことで

あったのなら私から謝る。そもそも

私達はこの島にそんな目的で来たの

ではない。私達はとある鳥を

故郷に──」




「あああっ!!!

全く人間というものは!

口を開けばそうやって

虚言を並べて!

何度わらわを騙してしたことか!

もううんざりでありんす!」



すると、吹雪姫は氷の剣を

二本生成し、タチアナに斬りかかる。



「話を──」



タチアナはその斬撃を受け止め、

必死に吹雪姫に話しかけるが、

吹雪姫は耳を貸すことなく

タチアナに何度も剣を振るう。



カンッ! カンッ!



容赦なく振るわれるその

二本の剣を、自慢の剣術で

受け止め跳ね返し、

タチアナは何とか

話を聞いてもらおうと

吹雪姫から一旦距離を取った。



「君は勘違いをしている!

私は君と戦うつもりなどない!」



「ならば、その剣を捨て

大人しくわらわに凍らされるで

ありんす。」



少しも心を許そうとしない

吹雪姫は、自身の髪を逆立てて

威嚇してくる。




私の攻撃が当たらない

相手とこのまま戦闘を

続けたところで、いつかは

私の体力の限界が来るのは

目に見えている。

相手も悪い者ではなさそうだし、

何とか話を聞いてくれれば

和解できそうなのだが......



タチアナは出口のないこの

異次元の空間で、吹雪姫から一定の

距離を取りつつ、どうすべきかを

考える。



あるいは、この空間から脱出する

方法を考えるべきか......

しかし、この閉ざされた空間から

出る方法など私には......



「どうせこの異次元から

出られないのであれば......

いっそのこと、あれをやって

みようか......」



そう呟いてタチアナは

剣をかざす。



「? 何をするつもりかや?」



タチアナの不明な行動に

吹雪姫は若干警戒しつつ、

尋ねる。



「チェイン!」

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