二百五十九話 フリーズランド19

「......」



んー、となると......やっぱ異世界から

来たのかもな......

討伐軍に参加してない人が

呪覆島にいるわけないしな......



「そろそろ外に出ようか、隼人。

もう随分体も暖まってきたぞ。」



「そうだな......もう一度木のある

ところまで行ってみよう。」



まあ、考えてもしかたない。

それに、タチアナが何者であろうと

今の彼女には居場所がある。

慕ってくれる部下、信頼できる仲間。

そして家族がいるのだ。

その事実は変わらない。

ならば、俺はそれを守るのみ。



「あの吹雪姫とやらが

また襲って来たときはどうする?」



「そん時は俺が注意を引くから、

その隙にタチアナは何本か木を

盗んで来てくれ。」



「了解した。

このマントは......どうすればいい

だろうか......洗う時間もない......」



「マントは......」



どうすっかな......

ここで、いいよ! 俺は気にしないし!

とか言って、能天気に着るのも逆に

それはそれで気持ち悪がられるし......



「いいよ。タチアナにやる。」



「え、いいのか?」



「いいよ。この島寒いし、そんな

薄着じゃ風邪引きそうだ。」



「わ、わかった。君がそう言うなら、

ありがたく受け取ろう。」



そう言ってタチアナが俺のマントを

着るのを見届けて、俺たちは

外に出た。



そのとき



「ウォーーーーーーーーーン!!!!」



外に出た俺たちを待ち構えていたのは

無数の狼だった。

俺たちの姿を確認すると、

誰かに知らせるように

次々と遠吠えをしていく。



「まずいぞ......臭いで居場所が

ばれていたようだな。」



「あんま傷つけたくはないが、

この数じゃ大人しく逃がしても

くれないか......」



「私のライジング・スラッシュで

一度この狼達をびびらせるのは

どうだ?」



「お、アルナさんが選抜試験でやって

た技か。 いいんじゃね。

たぶんあれ見たら一目散

に逃げ出すだろ。」



「なら──」



タチアナが大技を繰り出す準備に

入ったのを横目で見ながら



ガルルッ!



と威嚇してくる狼達に対して、俺も



ガルルッ!!!



と対抗していた、次の瞬間



バリッ!!!!



俺とタチアナの足元が一瞬にして凍る。

狼達を見れば、狼達の足元は

全く凍っていない。



奴が来たかと悟った俺だったが



「貴様から氷の塊となれ。」



突然、真上から奴が

俺の視界に現れた。

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