二百三十三話 仲間の捜索31

ラーバの自爆は機械獣の自爆ほど

周りに威力は無く、皆ほぼ無傷だった。

しかし、最後に吐き捨てた

謎の言葉と、敵の目の前で堂々と

命を絶ったラーバに対して

全員が呆然と立ち尽くすほか

なかった。



ビチャッ。



その沈黙を絶ったのは長老だった。

この島に上陸してからずっと

右目でラーバの呪術について

解除法を占っていた長老は、

流石に体力の限界が来てその場に

膝を着く。

その様子を見た隼人が

素早く駆け寄った。



「大丈夫ですか?」



「......おお、すまぬの。隼人君。」



「肩かしますよ。立てますか?」



「うむ、大丈夫じゃ。」



長老が右腕を隼人の背中に回すと



「おい、手伝うぜ。」



カクバが逆側に回って長老を

支える。



「まさか、自爆するなんてね。」



「ああ。敵に情報を漏らすまいと

躊躇わず自分の命を絶つとわ......」



「それにしてもやっぱあいつ

気味が悪いわ。なんか自爆する

直前にも変なこと言ってたし。」



「耳を貸すことなんて

ないさ、ヨーテル。

我々が内部崩壊をするなどありえない。」



「それもそうね。」



ヨーテルとタチアナは辺りに

飛び散ったラーバの血や肉片を

今にも動き出すのではないかと

思いながら見渡す。



「そう言えば長老。サーマクリフエント

ロマナーニとあれは?」



「......あの二人はどうやらラーバの

手下達によって別の島に連れて

いかれたようじゃ。」



「は!? 嘘でしょ!」



「おいおい、一体何が起きてんだよ。

全然今の状況がわかんねぇよ。」



「そろそろ......私達にも......情報求む......」



状況が複雑化し、各々が

困惑する中



「とりあえずここは一旦船に戻ろう。

船に戻ったら私から兄様達に

これまでの経緯を話す。」



と、リーダーらしくタチアナが

その場を収め、皆は船へと

移動し始めた。














「タチアナ。」



「?」



ラーバが自爆した場所から船までは

そこまで距離は無く、後十分程歩けば

着きそうだった。

そんな中、バーゼンがタチアナに

ぼそっと話しかける。



「なんだ、兄様。」



「......どうだ? やはり覚えていない

のか?」



「......」



バーゼンの問いにタチアナは申し訳

無さそうに頷く。



「気にすることはないのだよ。」



「......兄様。本当にここが......」



タチアナは辺りを見渡しながら

更に悲しそうな表情を浮かべる。

すると、バーゼンはタチアナを

励ますように微笑んで言った。



「タチアナ、大丈夫。お前は

俺の立派な妹なのだよ。」



その言葉にタチアナは

ありがとうと言ってバーゼンに

微笑み返したのだった。

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