百八十八話 再会を夢見て2

暗闇の中、ナイフの刃で反射された

月の光が一筋の線を描き、

六本の吹き矢をあっという間

にかたづけた。



「皆! 無事か!?」



そこに現れたのは



「タ、タ、タチアナ様!!!!」



金髪の女騎士、タチアナだった。

が、現在は鎧ではなく簡易な服を

着ていて、剣ではなく片手で扱いやすい

ナイフを使用していた。



アルナはタチアナを見るやいなや

泣きながら彼女に抱きつく。



「すまない、アルナ。

心配をかけてしまった。」



「タチアナ様! よくぞご無事で!」



ドッペもアルナの叫び声を聞いて

駆けつける。



「た、タぢアナ様ーーーー!」



ビルメも右腕に傷を負っていたが、

半泣き状態で突進してくた。



「い、一体どこにいたんですか!!

僕心配したんですよー!」



「すまなかったな。ビルメ。

そう泣くな。私が来たからには──」



とタチアナは喋っている

途中で、一度しまったナイフに

手をかける。



そして



「もう皆には傷を負わせない。」



そう言って、更に飛んできていた

吹き矢をいとも簡単に斬り捨てた。



「か、かっけぇ......」



ビルメは思わずそう口にしたのだった。



「これより、私が指揮を取る。

現在の戦況を教えてくれ。」



「はい、現在、遠距離攻撃を

出来る職業者達は

弾や矢、魔力が尽きていて

ほとんど戦えない状態です。

加えて負傷者も半数を超えており、

戦況は人間側が明らかに不利かと。」



アルナは手短に早口でタチアナに

伝える。



「......わかった。弓使い、ガンナー、

魔法使いは回復魔法士と共に

ポーションを使って負傷者の手当てに

まわってくれ。」



「了解です!」



そう言って牛喜は周りの

魔法使いや弓使いに指示を

伝えていく。



「それからアルナ、ドッペは

私と来い。」



「は、はい!」



「了解しました。」



「え、ぼ、僕は......」



「ビルメはまだ戦闘可能なアサシンや

戦士をかき集めて、私たちと合流

してくれ。」



「はい!」



「では、行くぞ。」



タチアナはドッペとアルナを

連れて海の方へ走る。



「タチアナ様。失礼ですが、

魚人達と戦うのであれば、

一度ビルメが他の者を連れて

くるまで待てばよろしいのでは?

大勢で行った方が戦況も有利に

なるかと。」



ドッペはタチアナにそう尋ねる。



「いや、私がしたいのは

魚人達との戦闘ではない。」



「では、一体なんです?」



「時間稼ぎさ。彼らが任務を

遂行するまでのな。」



「彼ら......?」

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