百三十三話 誓い3

「好きなもの? 花かな......」



「花......ですか?」




私はそう答えたけど、実は花

なんて見たこともない。

ただ聞いたことがあるだけ。

なんでも陸上に生えているとても

綺麗な植物らしい。

その花について母上がとても楽しそうに

話していたから、私も少し

興味があった。

興味があっても、私は陸上に

行くことは禁止されてるし、

一生見ることもないんだろうけど。

他に好きなものなんてないしね。



「......わかりました。今度

持ってきます!」



「花を見たことがあるの?」



「た、多分......あれだと......」












そしてまた、彼は来てくれた。

両手にいっぱいあるものを持って。



「それは?」



「花です。ファラリオっていう......」



そう言うと彼は秘密の場所の海にそれを

浸した。




「わぁ!」



すると、それは青い光を放ち出した。



「綺麗......」



私がそれに見とれていると、

彼は嬉しそうに笑ってくれていた。




あとでそのことをばーやに尋ねて

みたら、そのファラリオというものは、

花ではなく、ジュラ島近辺で

育つ海藻の一種らしい。

でも、彼が私の為に持ってきてくれた

のだから、そんなのどうでもよかった。



「その花、まだたくさんあるの?」



「はい、僕の村にたくさん。」



「じゃあさ、今度もまた来るときに

持ってきてよ。そのファラリオで

この小さな海を綺麗にしよ。」



「......はい!」



彼は元気よく返事をした。



そういえば、聞いてなかったこと

があった。



「ねぇ、名前は?」



「? ファラリオです。」



「違う違う。貴方の名前。」



「僕の名前ですか?」



彼はどうしてそんなの聞くんだろうと

訝しげな表情を浮かべる。



「ナギです。」



「ナギ............ナギ、また来てね?」



「はい!」

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