七十六話 ジュラ島2

「うおーー! すごいすごい! 本当に

浮いてる!」



俺の横でテイルが騒ぎはじめる。



まあ、無理もない。なんせ今、

俺たちが乗っている船が上空へと

高く浮き上がっているのだから。


周りの職業者達もテイルのように

はしゃいだり、怖がって地に伏せていたり

していた。



「制限時間は4時間よ。それまでに

戻って来れなかった者は

この島に置いていっちゃうから。」



そう言って魔法使いの彼女は

杖にまたがり、上からつまらなそうに

俺たちを見下ろす。



「了解した。ヨーテル、

頼んだぞ。」



「ふんっ。」



あのタチアナぱいせんにもこの態度で

だった。












長老と呼ばれるこの世界で最高レベルの

職業者が占った結果、判明した

幹部の姿は



空飛ぶ鋼鉄の獣



らしい。



彼の結果を受け、隊長達はこの

討伐に参加する者と待機する

者の二つに分けた。



参加者は俺、牛喜さん、

隊長からは長老と魔法使いの

彼女を除いた者達と、

俺が知らない何人かの職業者達。



待機組は隊長から二人とテイルと

アルナさん。あとは知らない人だった。



ちなみに天使ことアルナさんは

この討伐から外され悔しそうにして

いたが、俺と目が合うと必ず微笑んで

手を振ってくれる。




あぁ~やっぱ天使なんだな~




という訳で、俺はこの討伐に難なく

参加できるということで安心した。












「あれ何々! でっかい生き物が

いるよ!! 捕まえたいな~私も

行きたいよ~。」



......よくサッちゃんさんはテイルを

合格させたなとつくづく思う。




「間もなくジュラ島に上陸する。

参加するものは

直ちに整列せよ!」



そんなことを思っていると

タチアナの号令がかかった。







「これで降りるのか......我輩、

少々──」



「何をしている! 早く行け!」




「は、はい!」



船から島へ垂らされた一本の

ロープで下に降りるという、

まるで軍隊のような

方法にあの牛喜さんでさえ、

顔を強張らせていたが、

彼女の言葉に犬のように

降りていった。




「君もだ。」



すると今度はギロッとこちらの

方を見る。



「あ、はい。」



俺も従順な犬となって

ジュラ島に上陸するのだった。

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