五十二話 選抜試験11

「一万連弾!」



牛喜は突進してくるサーベルに

向けてではなく、地面に向けて 

マシンガンをぶっ放した。




ダダダダダダダダダダダダッ!!! 



凄まじい銃音が試験会場に

鳴り響く。




地面に向けて撃ち続けるマシンガンは

その反対の上空に、牛喜を乗せて

ロケットのように打ち上がっていく。




そして、突進をかわした牛喜は、

下で有り得ないものでも見たかの

ように、自分を見上げてくる

サーベルに一万もの銃弾を

撃ち終わったマシンガンを向けて

言った。




「変形! ラヴィッチ バースト!!」



牛喜の変形の言葉どおり、

マシンガンがガチャガチャと

長いスナイパーライフルに

変形し、

そのスナイパーライフルから

光の光線、いわゆるビームが

撃たれた。





「風流壁!!!」



サーベルは風を使って

自分の前に風の盾を造ったが、

牛喜のビームによって

それは無残に破壊され、

撃ち抜かれた。






「勝負あり! 勝者、牛喜!」



見事。まさにその言葉が

相応しい程、完璧な彼の勝利だった。











「どうやら、牛喜の

勝利のようなのだよ。」



「くっ……くそがぁ………!!」



「そう落ち込むな。

サーベルというあの男もなかなか

強かったのだよ。」




「……そうだけどよ! くっそぉ……

なんでか知らんがめちゃくちゃ

悔しいっ……!」




「……カクバ……うるさい……眠れない。」



「眠ってんじゃねぇよ!

ホーズキ!」











「やったぞ、みんな。」



決闘に勝った牛喜さんが

俺達の元に戻ってくる。



「やったじゃないですか!」



俺はさっきの予想以上の

決闘に興奮が収まらず、つい

声を大きくしてしまった。



「素晴らしい試合でした。」




「ありがとう、二人共。

ところで隼人、すまぬが我輩、

少し怪我をしてしまった上、

直してもらってもよいか?」




苦戦を強いられた彼の

体にはグラップラーに

殴られたあざや傷ができていて、

俺はヒールを使ってそれを

直してやった。




「うむ、すっかり治ったぞ!」



彼はははっと笑って言ってくれた。




「それでは、次は私の番ですね。」




現在、バッチは三個。

四人全員合格するには

あと一勝する必要がある。



アルナさんはよいしょと腰を上げた。




「待たんかい!」



すると、いつから戻ってきたのか

鼠とかいう奴が、

彼女を止める。




「なんです?」




「これ以上戦うのは止めろ。」




「はい? それはどういう

意味ですか?」



「周りを見てみいや。」



彼女は鼠の言うとおり、周りを

見渡す。




「もうすでに、バッチを

四つ手に入れた班が二班ある。

そしてまだバッチ一つ以上かつ

四つに満たない班はうちと 

もう一班だけや。

この意味がわかるか?」



七つの班にバッチが二つ、

合計するとバッチの数は十四個ある

ことになる。

そして既にバッチを四つ獲得して

いるのは二班。ということは

残るバッチは6個。

加えて、俺達は三個所持していて

まだバッチを持っている班が

一班のみだということは、

互いに三つのバッチを持っている

ということだ。



「もし、お前が負ければバッチを

一個失い、もう決闘することは

できず、試験は終わるんや。」



「何が言いたいんですか?」



アルナさんは鼠の

言いたいことを理解している上で

彼に侮蔑的な目を向けて尋ねる。




「今の状態で

試験終了まで待つんや。」



「それでは誰か一人落ちなければ

いけませんよ?」



「それなら、ほれこいつや。

この役に立ちそうのない

回復魔法士を落とせばいい。」

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