第3話 真、用意する

 我が家に貧乏神と福の神が来てから三日。彼女らの居場所がないことが目下の悩みの種だ。

 寂しさまぎれで飼っている猫がいるのだが、彼女らを玩具と勘違いしている節があるようで、彼女らは私の肩に逃げてくるのだ。

「あの猫は、妖怪なのー」

「あの妖気は只者ではございませんことよ」

 その猫は、娘が大学へ行ってから拾った野良猫だ。虎猫だからトラと安易に名づけたくらいは雑種で平民な猫だ。

 毎度毎度肩に乗られても、困る。

 ミニチュアサイズのこの子たちがいられる空間となると、ドールハウスだろうか。

 妻が好きだったもので、娘が高校の時に買ったものが、屋根裏にあるはずだ。

 久しく開けていない屋根裏への階段を上る。思ったように膝があがらない。

「足もとしっかりー」

「あら、よそ見はいけませんことよ」

 反論できないのが悔しい。

 娘が小さい時に、同じようなことを言われたなと思い出した。

 あれは娘が幼稚園の頃だったろうか。自我が出てきたんだな、と感慨深く思った出来ごとだった。

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