妻を亡くした私が貧乏神と福の神を拾ってから

凍った鍋敷き

第1話 真、貧乏神を拾う

 昨日、貧乏神を拾った。なんとなく買った自販機の缶コーヒーにしがみついていた。

「おめでとうございまーす!」

 そういいつつ缶コーヒーの上で踊っているのは、テレビでよく見かけた、集団アイドルのような恰好の若い娘だ。

 老眼がひどくって顔がよくわからないけど、たぶん、可愛いの部類に入るのだろう。

 歳は取りたくないものだと、目元を揉んだ。

「ひとりやもめで寂しいあなたの元にやってきた、貧乏神のビーちゃんでーす」

 彼女が言うとおり、私は現在独り身だ。10年前に、妻をガンで失い、3年前に娘が東京の大学へいってから、独りだ。

 どこでそんな個人情報をつかんだのか知らないけど、自己紹介ができるなんて、うちの課の新人に比べれば、よくできた子ではないか。

 だが、そこで踊っていられると、コーヒーを飲めないのだ。

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