TYT-274 氷結の舞姫

【妖異通称】

 氷結の舞姫(ひょうけつのまいひめ)


【対応状況】

 監視中


【危険等級】丙級

 遭遇した場合は対象に気付かれないよう最大限の注意を払いつつ退避してください。物品や事象の場合、直ちにその場から離れます。非常に危険な対象です。もし貴方の存在が相手に認識された場合、生命に関わる危機的状況に陥っていると考えるべきです。


【映像情報】

 TYT-274は人間の女性の姿をしています。身長は約2メートル。冷気が常に実体の周囲を覆っています。長い銀髪に美しい少女の顔を持ちます。瞳は青白く光り、瞳孔はありません。雪と氷のドレスをまとい、透けるような氷の手足を持っています。舞を踊るように動きながら、周囲の気温を急激に下げ全てを凍らせます。


画像

https://kakuyomu.jp/users/teikokuyouitaisakukyoku/news/16818093092350328367


【確認地域】

 日本、東北地方、奥羽山脈の山間部


【関連事件】

 以下の事件においてTYT-274との関連があるものと考えられています。

- 2012年冬:東北地方の小さな村が一夜で全て凍結し、住民10名が凍死。

- 2020年1月:スキー客5名が行方不明。その周辺は異常なまでの積雪と氷結が確認。


【詳細】

 TYT-274は冬になると奥羽山脈に出現する妖異です。その発生原因は不明ですが、伝承によれば「雪国の姫」が山神に捧げられた悲劇の伝説が関連しているとされます。通常、舞姫は人間を避けて行動しますが、TYT-274を視界にとらえた人間に対して攻撃的な行動をとることがあります。


補遺:「雪国の姫」と山神に捧げられた悲劇の伝説


 ある山奥の地に「雪国の姫」と呼ばれる美しい娘がいました。彼女はその地を統べる領主の娘であり、その美貌と優しさから村人たちに慕われていました。あるとき村は終わりのない厳冬に見舞われ、寒さによって農作物が育たず、人々の暮らしは困窮を極めました。


 村の長老たちは、これは山神の怒りによるものだと考え、山神を鎮めるためには尊い生け贄を捧げることにしました。彼らは領主の娘を「山神の妻」として捧げることで、村の安寧を願ったのです。


 村のために生け贄になることを受け入れた姫は、満月の夜に雪深い山中の祠へと連れて行かれました。儀式が終わると、彼女は山の霧に飲み込まれるように姿を消したと言われています。その後、不思議なことに厳冬は和らぎ、村には春が訪れました。


 それから何年もの後、村人たちは夜中に祠から聞こえる女性の哀しそうな声や、祠の周囲を強い冷気が覆うことに気づきました。それらは姫の怨みによるものだと噂されるようになり、やがて村の者たちは恐れて祠に近づかなくなりました。そしてある年の冬、村に大規模な雪崩が発生し、村は呑み込まれて消えてしまいました。



補遺2: 氷結の舞姫と遭遇した青年のインタビュー


Hachi(以下H):

 本日はお越しいただきありがとうございます。まず、あなたが氷結の舞姫と遭遇した経緯について教えていただけますか?


青年(以下Y):

 はい。僕は冬の山をよく訪れるんですが、昨年の12月、奥羽山脈の登山ルートを一人で歩いていたときのことです。吹雪に巻き込まれて身動きが取れなくなり、気付けば奇妙な静けさに包まれた雪原に立っていました。そのとき目の前に、まるで氷でできた人形のような女性が現れたんです。


H:

 それが氷結の舞姫だったのですね。彼女はどのような様子でしたか?


Y:

 最初はすごく怖かったです。彼女の周りだけ空気が凍るようで、息を吸うのも辛いほどでした。彼女は僕に興味を持ったようで話しかけてきたんです。声は冷たい響きなのに、どこか寂しげな感じでした。


H:

 彼女は何を話してきたのですか?


Y:

 最初は「人間がなぜこんな深い山奥に来るのか」と尋ねてきました。僕が「美しい景色が好きだから」と答えると、彼女は「私を恐れないのか」と訊いてきました。僕は咄嗟に「あなたのような美しい人を恐れる必要があるのか?」と言ったんです。


H:

 それに対して彼女はどう反応しましたか?


Y:

 しばらく黙った後、また彼女は「私が怖くない?」と聞いてきました。僕は「僕はむしろアニメ映画のヒロインみたいでキレイです」と言ったんです。それで『アナと雪の女王』の話をしたら、彼女が急に興味津々になって。


H:

『アナと雪の女王』ですか? 彼女の反応が気になります。


Y:

 ええ。特にエルサのことを面白がっていました。なんとかスマホのアンテナが立ってたので、映画のPVを彼女に見せてあげました。すると彼女の氷の着物が、ドレスに変化し始めました。まるでエルサのドレスを思わせる洋風の姿に変わっていったんです。それで彼女が「これなら、少しは恐れられなくなるかもしれない」と。


H:

 信じられない光景ですね。その後、彼女とはどうなりましたか?


Y:

 彼女は僕に「この場所を去りなさい」と言い、軽く手を振ると周囲の吹雪が収まりました。気づけば僕は安全な登山道に戻っていて、彼女の姿は消えていました。


H:

 まるで童話のようなエピソードです。


Y:

 ええ。信じられない経験でした。


H:

 貴重なお話をありがとうございました。


Y:

 こちらこそ、ありがとうございました。


補遺3:

 このインタビューから三カ月後。Y氏は再び冬の奥羽山脈に入山し、そのまま行方不明となっています。



【対応】

 帝国妖異対策局では、TYT-274の行動予測範囲のマップを公開し、地域住民及び入山者に対し注意勧告を行っています。実体への接触の試みは難航しており、専門部隊による研究と対応策が進行中です。


【懸賞金】

 懸賞金は設定されていません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る